サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】TXTの"Can't You See Me"のMVについて

【質問箱への投稿より】

TXTのCan't You See MeのMVに対して、過剰な少年売り、少年性の性的消費や搾取であるとツイートしている方々を何人か見たのですが、泡沫さんはjこのMVや性的消費についてどう思われますか?
私は最初見た時に好みだな〜と思うくらいでその他に特に感じた事は無かったのですが(考えが浅いのかも知れません)、あとからツイッターで評判を見てみるとこういった事(少年性について)が割と書かれていて、どういう事だろう?と疑問に思ったのでお題箱に入れさせて頂きました。

 

https://odaibako.net/detail/request/7dbac6b775c64258a4dde10bb13da2a0

 

このMVに関していえば「まあそう言われればそうかもしれませんけどもね...」というのが正直な感想です。自分は見終わった後最初にやった事が「スペイン トマト祭り」での検索だったので...
(何か祭りに意味があるのかなと思ったんですが、「開催中止」って出てきました)

MVの中に特にあからさまな露出や性的表現・暗喩があるわけではないと思うのですが、衣装とか表情とか撮り方などの演出やコンセプトの部分でそう感じ取った人たちがいたという事ですかね。しかし、「過剰な少年性」が「性的に消費・搾取されている」事をあの中から感じとれたという事は何だかセクシーというかエッチな感じたという事でもあり、つまり直接的な露出(半ズボンが性的か否かという部分は議論がわかれるところだと思いますけど)や性的表現・暗喩があるというわけではないものから性的なものを読み取れるという「選ばれし者」しか感じ取りにくい表現ではないだろうかと個人的には感じるのです。ですので、ご質問者の方がどういう事だろう?と思ったということはむしろ「健全」なアンテナの持ち主のように私は思います。特に未成年が演者のエンターテインメントにおいては性的な表現には敏感であるべきだとは思うのですが、「少年性の性的搾取」というのがよくわからないというのはこのMVに関してはは「わかる」必要まではないのではないかと思います。成人として少年や少女に性的な魅力を全く感じた事がない人にとっては、少年性や少女性を扱う事の危うさと言われても全くピンとこないと思いますし...ただ、「そういう風な感じ方・捉え方もあるのだ」という事を知るだけでいいのではないでしょうか。

 

少年性を過剰に物語的に演出してストーリーとしてリアルな未成年に大人が演じさせるという構図にグロテスクなものを感じる人もいるだろうとは思うのですが、大人の演出が入っていないアイドルは存在し得ない(韓国ではそうだと思います。日本のインディーズアイドルとかなら別かもですが)し、未成年が「等身大」をコンセプトとする場合は少年性や少女性はある意味で不可欠だと思います。それがどのような表現方法であれパフォーマンス化する事で「消費」されることは大なり小なり避けられないのではないかと自分は考えています。「性的に消費される事」には「性愛の対象としてみなすこと」が含まれると思いますが、「アイドル」という存在に「性愛の対象として魅力的である」という事が配分はどうあれほぼ必ず含まれるのだとすると、「未成年のアイドル」は存在自体が「少年性(少女性)を過剰に演出されて性的搾取されている存在」とも言えると思います。だから「未成年のアイドルは大人として魅力を感じづらい」という文脈ならわかりますが(そもそもどういう意図でそれらの言葉が使われているのかは実際見てないのでわからないまま書いてますが)、未成年アイドル全般についての問題には触れずにこのMVのみピンポイントで批判しているのなら賛同はしかねる感じです。SEVENTEENのADORE Uや防弾の花様年華NCT DREAMのチューインガム等と比べてTXTだけに「少年性売り」を見出すのは理屈が通らないのではないかと思うので。これらが全部アウトと判断なら筋が通っていると思いますが。

 

「アイドル」というものの定義というか、根本の意味を考えると、特に未成年のアイドルの演出のされ方には敏感にならざるを得ないし、それを敏感に感じとれてしまう感性の持ち主は逆にそういう演出のターゲットでもある(匂わせも感じ取られなければ意味がないので)と思いますから、余計に自戒の気持ちは常に必要かもしれません。ただ、これが難しいと思うのが、あからさまな肉体の露出や性的な表現、暗喩などがはっきりあるわけじゃないけど「見る人が見たら色気(性的なもの)を感じる」というものには明確な判断基準がないので、受け取る側のさじ加減次第でどの様にもとれてしまうという危険性はあるのではないかという部分です。「これは大人が考えた少年像を押しつけで表現しているので良くない」「これは本人たちの素のままの姿だろうから良い」「これはいやらしくなく爽やかでピュアだから良い」「これはなんだかイヤらしいから良くない」という風に、ただ個人の感性に基づいて裁く事は私は納得いかない方です。その人が感じるところの「爽やかでピュア」な方により性的なものを感じる人もいるかもしれないし、それが多数派なのかどうかは関係ないと思うので。そもそも未成年というだけで性的魅力を感じる人もいると思います。個人の好き嫌いや嫌悪感という部分ではしかたないと思うのですが、それを主語の大きすぎる話に即転換するのは安易すぎる気がします。


「響けユーフォニアム」という女性の作者が自身の経験をベースに書いた青春吹奏楽部ものの人気ライトノベルがありまして、その作品のアニメ化作品についてこの様な事がありました。(https://m.huffingtonpost.jp/kaoru-kumi/otaku-culture_b_8746632.html)
この筆者の方の書いていることに全て賛同するわけではないのですが、この様に「本質的にはポルノグラフィー的な目的で作られたわけではなくても、ポルノグラフィー的にも読み解けてしまう」という事もいくらでもあると思いますし、だからこそそれも踏まえた表現への覚悟や論理・理由づけが重要という事は理解できます。しかし一方で、「性的消費が目的でないものをあえてポルノグラフィー的に読み解く行為」そのものが逆に、性的加害になりうる可能性も時にはあるんじゃないかと思うのです。

個人的には直接的な露出や性的な絡み・明確な性的暗喩があるわけではないものを「断罪」するには基準が曖昧すぎると思うので、「性的搾取」のような強い言葉で表現するほどではないと思います。ですが、「そのように解釈する人もいるかもしれないけど違うといえば違うかもしれない」というレベルの曖昧で意味深な表現・演出方法は、特にアイドル業界においては対象を魅力的に見せるための仕掛けとして仕込まれている事は多いと言う事は、頭に入れて置いてもいいのかもとは思います。

 

TXTに関してはデビューから一貫して未成年ならではの「少年性」をイメージコンセプトとしていますが、BigHitは防弾少年団の頃から方向性は違えど「少年性」の表現に全力を傾けてきた歴史があるんじゃないかと思いますし、その過程で時には性的な表現も避けてこなかったと思いました。思春期の性について描写したBTSの「ホルモン戦争」は当時かなり物議を醸しましたが、表現方法やアイドルがテーマとしてとして扱うことの是非はともかく、「思春期のリアル」を描くにあたって本来ならば避ける事の方が不自然であるはずの「性」をテーマにした事そのものはエピックだったんじゃないかと思ってます。ただ、その表現方法には割と問題があったというかへたくそというか、「あまりにそのまんますぎでは」という事はあったと思います。例えば「オタクが好きそうなやつ」の一言で伝わる人には伝わるかもしれませんが(わからない方はすみませんが特に説明はしません)、そのような要素を扱う時にも、SMエンターテインメントなどはそのままはわかりづらいように斜め上からひねってくる事が多い(ひねりすぎてよくわからないことになってる場合もありますが)のに対して、BigHitは割と「(オタク目線的には)そのまんまだな?」という出し方が多いように感じています。「適度なオタク的深度はありつつも実はわかりやすい」からこそ、マスにアピール出来てきた部分もあるのかもしれませんが、時にオタクが良く言う「好みな世界のはずだけどあからさますぎて萎えた」ということを詳しく言うとそういう理由だった=あからさますぎて性的なものをダイレクトに感じとりすぎてしまったので、ときめきや萌えよりも罪悪感や嫌悪感の方が勝った、という事もあるかもしれないと思いました。オタクは良くも悪くも1から100を読み取って妄想(連想)を広げられるものだと思うので。