サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱お返事】音楽がアニメ経由で海外に広がることについて

【お題箱からのご質問】

泡沫ニムはKPOPとはまた別に、二次元と楽曲の関係性とかJPOPのアニメ経由の海外への広がりの注目されてるように思うんですが、最近アニメ経由で広がったからと言ってそれは所詮海外のアニメ好きというごく限られた属性の人たちの間のものに過ぎず、世界的な広がりとは限界があるという言説を見ました。
それはそうだろうと思うんですが、アニメを馬鹿にしてる感じがしてモヤモヤしております。私が二次元も好きというのもあるんですが...YOASOBIの88risingのフェスでの盛り上がりを見ると全然そんな事ないのでは?とかアニメ経由だって全然よいじゃんとも思いますし、泡沫ニムはどう思われてますか...?

2023/10/02 01:05:50

https://odaibako.net/detail/request/d9da306c-cae6-46ab-9c09-a56005283524

 

 「アニメ経由で世界で知られても知られる範囲に限界がある」というのは元々OSTでもあるのでそうだろうと思いますけど、その「範囲」はここ数年で結構広がってるんじゃないかとも思ってます。

そもそも近年は本当に世界中で属性関係なく知られてる曲自体が年々減っていて、それぞれの色んな属性の人たちの中でのヒットっていうのが増えてる印象ですから、「特定層に向けて届ける」というのは世界的な音楽の潮流を見ても間違ってないんじゃないかと思いますね。そして元の「アニメ」自体のポピュラリティーが近年世界的に急激に広がっており、特にコロナ禍以降それが顕著でオタクやアニメ好きだけのものでも年々なくなってきてると思います。オタクの数自体も増えてそうではありますが。特に若年層ではそういうバイアスは減ってきてると思いますし、最新のLuminate(billboardにデータを提供している会社です)の調べではアジア圏は勿論、「アメリカのZ世代の18%はアニメから音楽を知って聴く」というデータも出てきています。

 

 18%って多くはないですけど、5〜6人に1人と考えると決して侮れる割合ではないのでは。2023年現在、真の若年層と言っても良いアルファ世代がハイティーンになる頃にはもっと増えているかもしれません。北米のアニメ専門配信会社Chrunchrollの有料登録者数は現在500万人超えでアメリカの人口比率的にはマジョリティとは言えませんが、無料登録会員は5000万人を超えていますし(NETFLIXの日本での登録数が約600万人)、純粋な人数としては今アニメを見ている人口が最も多いのはアメリカとも言われています。

だからその「限界」でさえも十分に強大なので目指して損することはないでしょうし、HITCでのYOASOBIステージの盛り上がりを見ればそれは説得力がありますよね。

「限界が〜」の言説って、過去の国内でのアニメタイアップの歴史を顧みると、むか〜しの日本でもこういうことを言われてたのかな?と思います。昔は「アニメなんか」の主題歌をアニメ専門歌手以外がやることはなかったようですし、80〜90年代から一般のヒット歌手もタイアップで楽曲提供するようになり、それがヒットすることで音楽の世界でのアニメとアニソンとアニソン以外のポピュラー音楽の垣根も薄くなっていき、今では「一般人」や「音楽好き」に人気のアーティストがアニメのストーリーに合わせたオーダーメイドの楽曲提供をすることは珍しくなくなってますよね。こういう意識の変化が今後日本以外でも起こっていく可能性はあると思います。既に海外の音楽カルチャーの世界でも、Nujabesのようにアニメがきっかけで世界に知られて、結果的にLo-Fiヒップホップブームのきっかけになったというような例もありますしね。


私は10代の頃から、この渡辺信一郎監督作品などを経由して海外アーティストも含む色々な音楽ジャンルに食指を広げていったタイプなので、まさにアニメによって若い時代に音楽体験が豊かになっていった経験があるんですよね。だから、私と同じ経験をしている人たちは世界中にいるんじゃないかという確信があり、それがメジャーでもそうでなくても音楽カルチャーにポジティブな影響をもたらすこと、文化の世界的な広がりの屋台骨の一部になっていくこともあるんじゃないかと思ってます。

今世界で最もメジャーな音楽ジャンルはヒップホップになったそうですが、RZAやLil Uzi Vert、Megan Thee Stallionのようにアニメ好きを公言しているアーティストも少なくありませんし、人気のヒップホップアーティストの曲の中にはアニメ作品をリファレンスしているものが珍しくなく、むしろアニメを知っている人と知らない人の間で曲の解釈度が変わるということ、カルチャーへの理解深度に影響が出ることもあるかも。The WeekndもFateを曲中にサンプリングする時代...(これは流石になんでなのか本当に教えてほしい)

 

 まあ、そもそもが「アニメ」っていうのもエンタメの中の表現方法のひとつに過ぎず、「アニメ」で括るのも今時は「映画」「小説」「ドラマ」みたいなもので、OST的な立ち位置ということなら「映画のOST経由で注目されても映画を見る人にしか広がらない限界がある」っていうような言い方はあまりしない気がします。
(もしそうであっても何か問題が?と昨年のWe Don’t Talk About Brunoの大ヒットを経た後では思いますが)
それがこと「アニメ」となると出てきてしまうというのは、シンプルにそのカルチャーに対する蔑視があるってことなのかもしれないですね。アニオタしか見ない作品もあればもっとユニバーサルにリーチするような作品もあって、そこにアニメ作品としての貴賤はないですが、もしもリスナーを「選別」したいのであれば提供する作品を選べばよくて、「アニメ」ということ自体に限界を見て切り捨てるようなことはアニメ全体に対する偏見がないと今時はしないような気がしますよね。ビジネス的にもカルチャー的にも。