サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】アイドルコンテンツにおける「王子と姫」コンセプトについて

f:id:djmusmusculus:20220911004627j:image

https://odaibako.net/detail/request/903f0d06-d2c3-40d6-9220-7f7342f32558

 

まず、問題そのもの以上に、この事に付随して起こった二次被害があまりに酷すぎるのでは...という感想を持ちました。こういう流れそのものが、まさに今のマイノリティの人権を取り巻く環境や社会的な状況そのものをそのまま反映しているようにも見えます。

 

男性同士〜の発言についてはシンプルに差別的な表現だったと思います。
王子と姫コンセプトについては個人的にはアイドルジャンルでいちばんどう接していいかわからないノリなので、自分だったら居心地は良くないしもしグループのファンでも場合によっては見ないかもしれないです。特にTREASUREは第4世代のアイドルの中では曲のリスナーに性別や年齢の偏りが少ないというデータもありますし、KPOP業界でも最近はファンダムネームをなるべく性別(ジェンダーセクシャリティ)が限定されないようなものにしたりという風潮はありますので、このご時世にわざわざターゲットを狭めるようなコンセプトをやる意味はあったのかな?とは思いました。特に何周年というような記念の配信はファンなら全員見たいような大切なものだと思うので。

 

とはいえ、普段の自分の個人的な対処法としては「単に自分の趣味に合わない」コンセプトだけなら「趣味じゃない(not for me)から見ない」で済ませられます。でも、このケースの場合は先述の明確に差別的な発言が同じコンテンツの中でされてしまったことで、ただ「趣味ではない」で済ませてはいけないのではないかという意見が出てもおかしくないのではないかとは思いました。

 

過去に歌詞の中の「シンデレラ」などの表現が問題とされたことがありますが、シンデレラに限らず姫や王子というシチュエーションをヘテロノーマティブなもの(恋愛や肉体関係において男女の関係性だけを「普通」とみなす価値観)ととるか、もっとオープンなものとして解釈できるかどうかは、前後の文脈に相当左右されるのではないかと思います。
例えば、某鉄道会社のSEXY ZONE中島健人がCMで主演していた「お客さまはお姫様」キャンペーンでは、男性にも全く同じようにバックハグする演出によって「(女性に限らず)全てのお客さまをお姫様のように扱います」というメッセージが読み取れたと思います。なにわ男子の「初心LOVE」には「2人はめげないロミジュリ」というフレーズが出てきましたが、男子高校生同士の恋愛がテーマだったドラマの主題歌として使われることで、ロミオとジュリエットは性別に限らず「なかなか結ばれない2人」というシチュエーションだけを象徴するものという解釈も可能でした。

 

つまり、「姫と王子コンセプト」も、ただそれだけでは排除的なものとは言えないと思います。男の子だってお姫様になれるってプリキュアで言ってましたし、女の子だって王子様になれるってプリティリズムで言ってましたしね。今となっては状況次第でそういう幅広い解釈が出来るシチュエーションになったと言ってもいいと思うのですが、それゆえにそこに「男同士は変」という価値観が乗っかってしまうと、途端に「若い男性アイドルは王子様的であるべきだし、そのファンはお姫様扱いされたい女性が多いはずだ」というようなヘテロノーマティブな価値観を持ったものに見えてしまいかねないということでもあると思います。

そして、そのような価値観の発言があった場で本来「アイドルとファン」というもっとオープンであるはずの関係性がむしろ狭くなるような限定的なコンセプトで表現されたことを、「排除」と感じるファンもいるだろうと思いました。

 

何より事務所側(韓国事務所には連絡が取れなかったようなのでJAPANの方ではないかと思うのですが。その辺別の組織なので結構重要ではないかと思いましたが、現時点ではわからないまま書いております)も差別的な表現だったと認めたということですので、最初から排除しようと言うような差別的な意図はなかったとしても、結果的にはそういう意図(異性愛的な男女関係のみを想定していた)があったと受けとられても仕方ないコンセプトだったし、それは彼らが表現するにあたっては良くない表現だったとコンテンツを出した側も今現在では認識して受け入れているということだと思います。

 

ですから、「王子と姫というコンセプトで企画をやるのは良くなかった」というより、王子と姫というコンセプトでやった企画の中で、一定の層を排除する差別的なシチュエーションだと取られかねない状況があった、ということを企画した側も認識しており、その時点でそれはすでに当初の意図はどうあれ、『差別的なものになってしまっている』ということだと思います。差別的だったと認めなければセーフということではなく、あくまでこのケースでは差別的であるという指摘が発信側の認識によっても更に補強されているというという意味です。

 

繰り返しになりますが、王子と姫のコンセプトそのものが「悪」とかそういうことではないですが、その場の雰囲気やそこで起こったことによっては差別的なシチュエーションだったり「良くないもの」になってしまうこともある、ということだと私は解釈しました。「王子と姫」という部分だけ切り離して固執しても、問題の本質は見えにくい話なのではないかと思います。

 

※「初心LOVE」の歌詞を間違えていたため修正しました。

※その後この件で声を上げた当事者の方から連絡がありましたが、差別的であると認識していると謝罪してくれたのはYG JAPANの方であるとの事でした。本国の方からはレスポンスなしだそうです。

※その後、意見を出した方への誹謗中傷が続いているようで、誹謗中傷への裁判に踏み切られたとのことです。

かかる金額も含めてかなり具体的にまとめられていますので、SNS経由での誹謗中傷や粘着行為にお悩みの方は参考になるかとおもいます。

(2023.8.15追記)

【X(Twitter)】発信者情報開示請求を行いました - #BitchVogue JAPAN