サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【ize訳】WANNA ONE、叙事の光と影

【ize訳】WANNA ONE、叙事の光と影

 

2018.03.26
http://m.ize.co.kr/view.html?no=2018032604577272960


叙事の力は強い。 世の中に起承転結がきちんと整った没入度の高い物語に勝てるものはほとんどない。 ここでは、私たちが足で立っているこの現実が更に一重に塗り替えられる。すでに限界を超えた状況やストーリーをとても愛し、ニュースにも芸能にも全て挿入してしまう韓国の特性まで加わる。 これは取り返しがつかない事だ。

 

ボーイズグループWANNA ONEは、そのような意味で見るとすでに始めから膨大なアドバンテージを背負って出発した。 彼らを誕生させたMnet「プロデュース101はアイドル練習生のデビューに向けた切々とした切実さ、彼らをめぐる惻隠の情を動力にしたプログラムであり、これは生ける叙事の終末の王そのものだった。 何より「リアル」というのが有効だった。 先立って数多くのアイドルグループが、様々な企画を通じて自分だけの叙事詩を積もうと努力したが、失敗するしかなかったのは、それがほとんど放送局や製作者によって「作られたもの」だということがすぐにバレたからだった。 しかし、WANNA ONEの叙事は違った。 彼らの流した涙たちと喜怒哀楽は、サバイバルという番組の形式を通じて徹底的にそのまま大衆に渡されたり、伝わるように巧みに演出された。

 

このように、あきれるほど成功した敍事から生まれたグループが、自分自身をアルバムに溶け込ませないことは職務遺棄の罪だろう。 何でもない自分があなたの選択によって初めて意味を持つことができた。その自分は0であり、そのおかげで初めて生まれた自分、そしてひとつになった私たちを1として生まれた各種の方程式は、そのままアルバムタイトルになった。 1x1=1、1-1=0、0+1=1。この数字の根底に何が敷かれているかわからなければ、皆目見当もつかないこの修飾が持つ意味は、そのままWANNA ONEのアルバムが持つ最大の価値になった。 そしてWANNA ONEのアルバムが抱える限界も、全てそこから始まる。

WANNA ONEの3枚目のアルバム「0+1=1(I PROMISE YOU)」は人生の頂点を称する「ゴールデン・エイジ(Golden Age)」をまず掲げる。今、私たちの生涯で最も輝く時期。間違った言葉ではない。 生まれつきの話題性はもちろん、アルバム販売量、音源チャートなどWANNA ONEは指標と数字で表すことができる歌謡界全ての記録においてデビューしたばかりのグループとしては信じられない数値を記録し、出世してきた。唯一従えられないものはたった一つ、彼らの音楽だ。

 

新しい歌「Boonerang」はデビュー当時、タイトル曲として選択されなかった「Burn it up」を称えるために用意された、一種の恨を晴らすようなものに感じられる。 最近の1、2年間のポップシーンで最も頻繁に接することができるトラップサウンドを基盤としたEDMトラック系列であり、何よりもパフォーマンスを支えるのに最適化された曲だ。 しかし、それ以外の大きな特徴はない。 導入部のエレクトリックギターサウンドをポイントとしてさわやかに抜き出したダンスポップ「GOLD」も、アルバム発売前に先行公開されて大きな注目を受けた「約束します(I.P.U.)」も、かすかな感傷を盛り込んだポップスバラードナンバー「君の名前を」も、シングルとして特別だったり魅力的な部分を快くあげにくい。 まるで「ポップ・サンプラーA to Z」で適当に分別したサンプルを一つの曲として拡張させたような歌は、とても悪くはないがとても良くもない。 一言で言えば「WANNA ONEだから」今注目される事が可能だった曲だ。

 

WANNA ONEだから出来る」という言葉は「WANNA ONEでなければいけない」という意味を同時に抱く。 二度繰り返すこともなく明確なのは、このグループの出自とアルバムに書かれた基礎的な飾りだけであり、その中に盛り込まれた音楽は、それ自体のみではWANNA ONEというグループについて何も説明してみせる事はできない。 せいぜい「ソンポッキ(訳注:ダンスの基礎練習の一種)」」しか分からなかったひよこの練習生であったがデビュー組として瞬く間に身分が変わったメンバーたちの目に見える成長や、プログラムを通じて2番目のデビューを立派に成し遂げたメンバーたちの高い能力値など、すでに準備されている強みを強調させるにとどまって、限りなく怠惰なだけだ。この世に2つとないチャンスをつかんで人々よりずっと先の地点で始めることができたが、その開始点を除いては(今のところ)まだ何も残っていない叙事。この話の最後に、何が待っているのだろう。 ただ甘いだけのハッピーエンドだけではなさそうだ。

 

文 キムユンハ(大衆音楽評論家)

 

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叙事=実際にあった出来事をそのまま記述する事。
韓国の記事ではよく使われる言葉であり表現ですが、ドキュメンタリー+ポエムのような感じ?日本語の文章ではそれほど頻繁にこのような使い方はされないように思いますので、訳では「ストーリー」とか「物語」と置き換えたりみたりていますが、この文章ではまさに「叙事」が主役なのでそのまま訳しました。
要するにフィクションではなく、ノンフィクションの出来事を文学的に表すものとしてよく使われる様です。