サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【ize訳】[ women's plane ]少女時代の一蹴り

【ize訳】[ women's plane ]少女時代の一蹴り

 

2017.8.14
http://m.ize.co.kr/view.html?no=2017081323457268759&pDepth1=i2301

 

始まりは「また巡り会えた世界」だった。清純なイメージを打ち出すガールグループであれば誰もが一度リファレンスにした、この澄んで力強い歌は、しかし実は両肩にかなり重い荷物を背負って生まれた曲だった。 3年から7年まで、それぞれ厳しい練習生時代を経た少女時代メンバーたちの汗には、SHINVI(神秘)・ミルク・天上智喜などS.E.S.の後に野心的に準備したガールズグループプロジェクトの全てが期待に満たない結果を出したSMエンターテイメントの未来までが乗っていた。ガールズグループのデビュー曲というにはやや悲壮感のあるイントロ、曲の中心を取るディストーションがかなりかかったギター演奏とそれらを支える激しい振り付け。これは専らデビューの舞台のために1年を準備したメンバーたちの情念であり、今までとは違う新たなガールズグループの地図を描いてみせるという所属事務所の強力な意志表明だった。

 

それにもかかわらず、大衆が最も注目したのは他でもない「蹴る振り付け」だった。ミュージックビデオはダンサー、バレリーナバリスタパイロット、グラフィティアーティストなど少女たちの多彩な明日を描き、歌詞はわくわくしつつも恐れに満ちた未来の前に立った少女たちの叫びを込めていたが、結論は漏斗のようにひとつに集約していった。 短いスカートを穿いた少女たちが画面に向かって団体でキックをする視覚的イメージは、秒単位で切られて一枚の静止画面に、時には「ウムチャル(gif画像)」としてウェブ上に長い間出回った。 最初の歌が伝えようとしたストーリーと文脈とエネルギーは消えても、それらは残る時間だった。

 

少女時代が歩んできた10年はおそらく、その「蹴り」が世間に意図したとおり受け入れられるようにするための説得と懐柔の歴史だったのかもしれない。女性、特に若い女性の言葉や行動の一つ一つに性的なコードを付与したり、時には生まれつき自己決定権が剥奪された人のように扱う世界の偏見が主なターゲットであった。優しくて愛らしい少女のイメージを積極的に借用した「Baby Baby」と「Kissing You」で始まり対象化の頂点を極めた「Oh!」で前半を終えた後、主体的な女性像を前面に出した「Mr. Mr.」や強烈なパフォーマンスが引き立つ「I Got A Boy」、「Catch Me If You Can」で後半を飾った少女時代のキャリアはそれ故に印象的だ。まるで自らが主体性に目覚めた少女の波瀾万丈成長物語のように見えるこの流れは、「『オッパ』の皮肉な笑いを見ただけで泣いてしまいそうに見えた」(「Oh!」)私が、「私に選ばれただけで輝く君」(「Mr. Mr. 」)を認識するまでの成功と失敗をそのまま展示している。

 

そんな彼女たちが10周年を記念して発表した第6集アルバム「Holiday Night」の主人公を自分達で決めたことは、至極当然の帰結である。もう誰の許可も必要ない「ヤング・アンド・リッチ」の人生をありのままに楽しみ始めた彼女たちの前に置かれたキーワードは、他ならぬ「パーティー」と「仲間」だ。 アルバムと関連したインタビューを通じて、長い間変化せずお互いに配慮してくれた仲間に対する感謝の挨拶を一番先に伝えるのはもちろん、「(少女時代は)人生に一度来るか来ないかの名誉であり運命だ」(ティファニー "W"8月号インタビュー)と告白する彼女たちの声からは少しの迷いも感じられない。 10年という時間自分たちが好きなことに最善を尽くし、そのようにして勝ち取った成功がもたらす富と名誉を熾烈に享受する若い女性の姿がこのように変わらず原石のようであるという事実に、改めて驚くばかりだ。

 

だからこそ、再び「また巡り会えた世界」なのだ。この歌が発表されてから9年ぶりに、少女時代が当然のように時代と連帯を代表する歌で見直されたのは単なる偶然ではなかった。一人では恐ろしく難しくてもそばにいる人の手を握るとなんとなく強くなる気がしたという稀な奇跡の間から、韓国ガールズグループ初の10周年を迎えた彼女たちのリアルな成長と連帯のストーリーが入り込んでくる。 「また巡り会えた世界」で最も人気のある歌詞は「君のことを考えただけでも私は強くなれる」だが、個人的に大切な歌詞は別にある。 「特別な奇跡を待たないで」だ。何かを待ち続けてやきもきするのが全てだった少女はもういない。 「30歳でも少女時代か」というあまり笑えない質問に「今は少女時代、これからも少女時代、永遠に少女時代」というクールな蹴りが飛んでいく。これは「また巡り会えた世界」が梨花女子大にもたらした連帯のように、10年選手のプロアイドルである少女時代がプレゼントしてくれた生の軽快さである。


文 キムユンハ(音楽評論家)
校正 キムヨンジン


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izeの女性に関する記事「Women's plane」シリーズのひとつとして書かれた記事でした。

文中に出てくる梨花女子大の件は昨年(2016年)に新設学部をめぐり、在学生と卒業生が学校側と政府に対して起こした抗議行動で「また巡り会えた世界」を合唱したというエピソードの事だと思います。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/28/korea-ehwa-womens-univ_n_11756596.html

(ちなみに少女時代の曲だけではなく、実際はgodとか他の曲も歌われてたみたいです。
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/24798.html)

 

この件自体は朴大統領辞任のきっかけにもなった事件や学生側のエリート意識などの様々な社会的背景も絡んでいたりしますし、手放しでこの歌が歌われた事を単純に感動と言うのは少し考えるべき事かもと個人的には思いますが、「また巡り会えた世界」は今年(2017)7月の大邱クィアカルチャーフェスティバルでも歌われたそうで、壁にぶつかりながらも不確かだけど新しい世界を目指して進んでいこうというような歌詞の内容からか、若者にとっての一種のプロテストソングのような扱いになりつつあるのかもしれません。

http://www.huffingtonpost.jp/2017/07/01/kore-lgbt_n_17353834.html