[K-POP:不思議の国のアイドル] BTSグラミー賞の不発原因をKPOPから探す
LAエンタの関係者ら、「アイドル育成システム」の現地化の可能性に懐疑的···「奴隷訓練」批判、過度な側面も存在
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HYBEの「赤字」事業とされるHYBEアメリカ。 HYBEが1兆ウォンをかけて買収したが、これまで特別な成果を出すことができなかった。 そんなHYBEアメリカが出した野心作が現地ガールズグループのKATSEYEだ。 昨年、HYBEはオーディション番組「ザ・デビュー:ドリームアカデミー」を通じてグループを結成し、6月28日にデビューさせた。 現地業界関係者A氏は「HYBEがKATSEYE製作に莫大なお金を注ぎ込み、広報ラインナップを全て新しく構築したほど死活をかけたという話が広がっている」と話した。
HYBEの初の現地化ガールグループであるだけに、キャッツアイの成功可否によって「アイドル育成システム」輸出の未来がかかっていると言っても過言ではない。 米ロサンゼルス現地の業界関係者らは、現状をどのように評価しているのだろうか。
#現地マネジメント「KPOPは金になる」
JYPエンターテインメントは米アルバム会社のリパブリックレコードと、HYBEはゲフィンレコードと協業し、現地ガールズグループを作った。 米国現地のレコード会社はなぜ韓国のエンタメ会社と協業するのか。 LAで韓国アーティストを代理する匿名の現地エージェンシーの関係者Bさんは「KPOPはお金になる。 米国のレコード会社もこれをよく知っている」と話す。
彼は、KPOPの育成システムとファンダムが持つ長所を米国のレコード会社が認知していると話す。 B氏は「米レコード社はトレーニングシステムは備えていない。 才能のある人を偶然発見し、デビューさせる方式だ。 才能が十分ならば「私たちが助けてあげる」と言って導いてくれる役割だけをする。 彼らに演技と歌を教えたりはしない」と説明した。
このようにして発掘されたアーティストは、自分の音楽スタイルを自ら作っていく。
「米国のアーティストたちは作られることが好きではない。 彼らは自分の歌を作ることに集中する。 それで生じる問題もある。 マネジメントがアルバム発売のためにダンス動画をTikTokに上げろと言ったりすればアーティストは「やりたくない」と言いだろう。彼らはこのような部分に自尊心があり、このために多くのアーティストが自分のマネジメントと葛藤がある状態だ」
一方、韓国のKPOPは違う。 KPOPは巨大な「ファンダム」があり、アルバムを積極的に消費する」 「韓国のファンダムはとても大きく、ファンは結果物があまり良くなくても消費する傾向がある。 西洋アーティストのファンは、歌が良くなければ無理に再生数を上げたり、ビルボード1位を作ろうとはしない。 一方、KPOPファンは曲が出る前に全て予約注文をする」
B氏はこの視点が西洋のアーティストとは違ってKPOPがお金を稼ぐことができる理由だと話す。 「このような構造によってKPOPファンダムで莫大な収益が出てくる。 そのため、西洋のアーティストもますますこのようなマーケティングを真似している。 フォトカードを買い、グッズを買うことは、Z世代の文化になっている。 応援棒、ブレスレットを作る西洋のアーティストもできた」
アーティストを育成する韓国エンターテインメントと、マーケティングだけを行う米国マネジメントは、収益分配方式も異なるしかない。 B氏は、「米国のレコード会社がアーティストにお金をより少なく与える方法を見つけた」とも話す。 「米国のアーティストはもっと高いお金をもらうしかない。 米国はアルバムを購入しなくても曲を購入する場合が多く、ツアーやブランド広告を通じてお金を稼ぐ。 このように上げた収益はマネジメントに行く仕組みではない。 マネジメントやエージェントは、アーティスト収益の10〜15%程度の手数料だけを受け取る。 アーティストが中心で、お金を直接受け取る。 エージェントは、アーティストに仕事を探してきた時だけ、お金を受け取ることができる」
アーティストが所属事務所に従属している韓国は、収益構造が正反対だ。
「一方、韓国ではアーティストたちがマネジメント会社の社員として働き、会社がお金を受け取った後、そのお金をメンバーたちに一部分けてくれる。 それで一人で仕事をする時よりお金をはるかに少なく受け取ることになる構造だ」
昨年8月、「ザ·デビュー:ドリームアカデミー」の記者懇談会に登場したプロジェクト関係者たち。 左からトム・マーチ(President)、イン・ジョンヒョン(Head of Creative Production)、ウンベルト・リオン(Creative Director)、ミトラ・ダラブ(President)、ソン・ソンドク(Executive Creator)、司会者。
#米国人は果たして「韓国式訓練」に耐えられるのか
B氏はKATSEYEなどグローバルガールグループの課題は「KPOPというラベルを取ること」と話す。 「アメリカ人はアジア人ならみんな同じカテゴリーに入れる傾向がある。 米国人はすべてをKPOPの中に入れて、発展を防ごうとする。 KPOPの範疇の中にいると、さらに成長しにくい。 BTSがグラミー賞を受賞できなかった理由でもある。 むしろ障壁になるのだ。KATSEYEが単純に西洋バージョンのKPOPになってはならない理由だ。 もちろん憂慮もある。 東洋に比べて西洋人はグループとして活動せず、本人のアイデンティティを探したがっている傾向がより強いと思う。 そのような部分でグループの未来が心配ではある」
KPOPアイドルについてはどう思うだろうか。 彼は幼い子供たちが活動することには否定的だ。 「あまりにも幼い年齢で始まるアイドルを見るのは明らかに気まずい。14歳くらいでデビューする未成年者が多く、彼らのファンは主に年配の男性たちだ。 本当におかしい。 経験を持って感情を込めて曲を書く方法を学ばなければならない時期にブランド広報活動をしている」
ただ、アイドル育成システムに対する米国の批判は行き過ぎだと言う。
「欧米ではアイドル育成システムを『奴隷制度』と批判しているが、実は欧米でもスポーツ選手に同じことをさせている。 この二つが根本的にどのような点が違うのかは分からない。 ただ、音楽家たちにこのようなシステムを適用しなかっただけだ。 むしろ、米国人は生まれてから歌が上手でなければスターになる方法がない。 このような側面では『専門的に学んで作られることの何が悪いのか?』いう質問ができる。 むしろ学ぶ機会があるという点で韓国のシステムは良いと思う。 ただ、アイドルが自ら曲を書き、歴史を学び、本人のスタイルを見つけられる教育が必要だと思う」
一方、KPOPアイドルが好きで韓国文化に関心が高い米ドキュメンタリー作家のヘザー・コックス氏は、「KPOPの育成システムを米国で運用するのは難しいだろう」と話す。 ヘザー氏は「韓国系アメリカ人なら分からないが、アメリカ人は身体的要求に応じる準備ができていない。 アメリカ人は権威に立ち向かうことに慣れていて、そのような訓練に耐える忍耐力がないと思っている。 お金が保障されるとしてもだ」と話す。
ヘザー氏は、韓国では身体と精神健康に関する問題を過度に見過ごされていると言う。
「昨年KCON LAを見に行ったが、アイドルが思ったよりはるかに痩せていて小さかった。 年齢も若すぎて栄養状態が心配だった。 KPOPアイドルは1日に16時間ずつトレーニングしたり、ひどいダイエットをしている」
幼い年でデビューする文化にも批判的だ。
「18歳未満の子供たちが露出のある服を着て、大衆は彼らを性的対象と見ている。 KPOPは幼い年でも性的な歌詞を歌い、(ここに)多くの米国人は不便を感じるだろう。 韓国のシステムは多少強圧的で、アメリカ人はそのような部分において声を上げる場合が多いため、ここで運用するのは難しいと思う」と話した。
#学者が見るKPOP現地化の未来
イ・ヘジン教授はUSC(サザン·カリフォルニア大学、University of Southern California)で米国で初めて「K-POP」を正式科目として開設した韓国人学者だ。 USCのイ・ヘジン教授は、米国の音楽産業はこれ以上「新人開発」をしないと話す。
「現在、アメリカ市場は新しいアーティストを発掘し、歌を作るよりは、すでにSNSを通じて有名になった人と契約する傾向にある。 ところが、韓国がこのすべてのことをしてくれるのだ。 米国のレコード会社の立場ではお金を少なく使ったのにアーティストが発掘されており、ファンダムまで装着されているわけだ。 このため、米国のレコード会社はKPOPがお金になるという認識がある」
米レコード会社がアイドル育成システムを独自に運営する可能性はないだろうか。
「一つのシステムで完全に定着し、ノウハウができれば独自にすることもできる。 しかし、現在の状況であえて投資をして研究をし、人を雇用する必要はない。 すでにすべてが整っている会社(韓国エンター)とパートナーシップを結んで簡単にやろうとするだろう。リスクの少ない方向だ」
イ・ヘジン教授はLAに韓国のエンター社が集まる原因の一つとして人種を挙げる。 「LAの特性上、韓国系アメリカ人、アジア系アメリカ人、ヒスパニックなどが多く、彼らはKPOPに多くの関心を持っている。 彼らは自らをKPOPスターに投影させる傾向もある。 人種的な部分も無視できない」と話す。
イ教授は「韓国系やアジア系ではない白人、ヨーロッパ人はKPOPアイドルになれるとは思わないだろう。 人種的な部分も確かにある。 VCHA・KATSEYEなど現地化ガールズグループが出てきたが、まだ実験的だ。 「韓国式練習生」システムが適用された状態だと見ることは難しい。 生半可な状態だ。 特に欧米はアーティストの自律性と創意性を重視する。 育成され加工された人をアーティストと見ることができるかという疑問もあるだろう。 そのため、このシステムをすべて適用することはできないだろう」と指摘した。
KPOP育成システムを米国に定着させるために直面する課題は何か。 イ教授は、法的な問題とビジネスモデルの限界を語る。
「米国で法的に練習生制度を作るのは難しいだろう。 おそらく、今は練習生という名称なしにアーティストとして契約したのではないかと予想する。 米国は特に未成年者と関連する部分が厳しい」
米国でKPOPは確かに人気があるが、「大衆的」なのかは疑問だ。
「韓国に対する全般的な認知度が高まったのは事実だ。 KPOPという用語に馴染みがなかったり、KPOPが何なのかを説明する必要はない。 ただ、米国でも「主流」という概念が消えつつある。 昔はメロンで1位になれば全国民が歌を知ったが、今は違う。 米国も同じだ。 米国のZ世代の間でKPOPは確かに人気だが、BTSの歌よりPSYの江南スタイルを知っている(アメリカの)大衆の方が多い。 学生自ら「KPOPを卒業する年齢になった」と言うほど消費する年齢帯が限られている」
KPOPのファンダムがこれ以上韓国を基盤としなくなる場合に生じる新しい問題もある。 韓国はアイドルにとって「道徳的基準」が厳しいが、米国は「政治的正しさに対する要求」がある。 「米国のKPOPファンは、自らを特に進歩的だと思っている。 上の世代と違って本人たちはアジア文化のKPOPが好きな米国人だからだ。 KPOPが好きだと公開的に話すことが「カミングアウト」することと似ていると見る米国の人種差別的視線も内在した。 そのため、ファンはより進歩的で、KPOPアイドルにも進歩的な声を求める」
彼は、「韓国芸能事務所のグローバルガールズグループの成功はまだ未知数だ」と話す。 「HYBEの場合、KATSEYEをKPOPグループとは言わない。 グローバルガールズグループと称する。 核心は、KPOPのシステムを利用してグローバルなガールズグループを作るということだ。 Kを外すのが目標だ。 今のところどうなるか速断するのは難しい。 大衆文化を予想することほど難しいことはないからだ。 おそらく関係者たちは、どのようにマーケティングを成功させるか悩んでいるのだろう」
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だいぶ前に訳していたけどアップをサボっていたのですが、タイムリーな内容かと思ってあげました。
韓国アイドルの育成方式は欧米圏ではアスリートのそれ、というのはその通りかもとおもいました。スポーツなら記録や勝敗が結果としてすぐ目に見えるのである程度の期間ストイックに管理するのはアリかもしれませんが、アイドルというエンタメは即結果が出るとも限らず、むしろ売れたら売れるだけ注目度が上がって要求されることが多くなるというのがとても特殊で過酷かも。
しかしそのストイックさゆえに熱狂的に支持される部分もあるという、なかなかギルティなビジネスに成長したように思います。
タイトルから本文まで、韓国のこの手の記事で齟齬を感じるのが、韓国ではアイドルを「歌手」と分類するのでアメリカの「歌手」と比較することになるんだと思うんですが、実際はKPOPの「アイドル」は「アーティスト」ではあるけど専門の歌手というよりは「エンターティナー」と「セレブリティ」を掛け合わせた存在であり、それゆえに巨大なファンダムがついて本文にあるような「ビッグビジネス」になれるわけですよね。
アメリカのアーティストでも、元々大きな「ファンダム」がついてていわゆる「アイドル的な人気」があるファンダムタイプのアーティストは同時にセレブ扱いでもあり、「人格・キャラクター・生活」を売り物にしている部分もあります。
「BTSがグラミーを取れないのはKPOPの枠に押し込められているから」というフレーズが出てきますが、これは音楽ジャンルの話ではなく、KPOPアイドルがアイドル的なビジネス=ファンダムに対してメンバー個人を好きになるようにして、それ原動力にしたビジネスをする限りは特殊ジャンルというラベルを剥がすことはできないと思います。
実際、例えば欧米圏で大人気だったボーイバンド=アイドルであるバックストリートボーイズは、グラミー賞にBIG4と言われる本賞部門含めて4回以上ノミネートされていますが、1回も受賞していません。つまり、BTSに限らず「アイドル」のビジネススタイルのアーティストはグラミー賞を受賞しにくいということで、それは韓国だろうがアメリカだろうがイギリスだろうが関係ないんじゃないでしょうか。韓国の「ポップスとKPOPの違い」についての記事ってそこが曖昧なものが多く、「アイドル」の定義が曖昧というか、「アイドル」というものについて音楽ジャンルの程度の考えしか持ってないのが一般的なのかなと思います。
(事務所側はアメリカでもオタクを増やす方向性とってるので流石にその辺りの違いはわかっていると思いますが)
アイドルという存在そのものについてもっと突き詰めて考えないと永遠に正解に辿り着けない気がするし永遠にちょっとズレた話することになる気がする。
KPOPがアイドルで、アイドル商売をメインでやってる限りはグラミー賞のような「アーティストというより作品が業界人によって審査される」種類のアワードでは受賞に至るまではポップスとみなされるた文化的な評価を受けることがまだ難しいんだろうと思います。「売上枚数」のような数字がメインのBBMAやAAAではそのまま評価されていますし。
まああとB氏のコメントとしてある「14歳くらいでデビューする未成年者が多く、彼らのファンは主に年配の男性たちだ。 本当におかしい。」っていうのは事実とは少し異なりますね。これに当てはまるグループって実際は1個くらいしかないので。練習生は低年齢化していて未成年で練習生になるケースは増えていますが、全員未成年みたいなグループは今でも滅多になく、だからこそたまに出ると差別化できているということだと思います。
未成年メンバーがグループにいることは珍しくないですが、「上は成人から10代後半が多く、1〜2人未成年がいる」というのが一般的なパターンだと思います。韓国の場合は若いグループは初期の現場に実際行くようなコアファンダムは未成年者が多いですし。女子グループは大衆的に注目されるケースが多いのでいわううるおじさんもファンを明言しやすい部分はあると思いますが、実際若いメンバーが多いグループ場合は活発にファン活動したり現場に足繁く通う層は中高生からせいぜい大学生くらいがメインでしょう。B氏も業界の人なのに結構イメージで喋ってる感が...アメリカでもファンダム型アーティストのファン同士チャート合戦はつい最近もありましたし。
(ちょっと前に韓国で若いメンバーが多いアイドルファンのサイン会におじさんがきているとネットで叩かれた人も、後ろ姿で批判されてましたが、同じ現場にいた人たちが彼は実際は「おじさん」ではなく若い学生だと言ってました)