サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】海外(英語圏)のKPOPファンについて

またもやご質問も答えも長いシリーズのご質問が来ましたのでここで回答しました。

 

Kポ界隈の英語圏ペン達がアジア人が好きなのにもかかわらず英語圏の価値観・英語至上主義のように見えるのが気になります。


最近、マスターが英語圏ペンにホワイトウォッシングと言われて怒っているのをよく見かけます。

そのことについては泡沫さんも以前書いてらっしゃった気がするのですが、写真はきれいに加工しようと思うとどうしても明度が上がってしまったり、それ以前に撮る際にホワイトバランスの調整を失敗したりだとか照明のあたり具合で普段の肌の色とは全く違った色になってしまうことは多々あると思うんです。


私自身、色黒のアイドルが好きなので韓国の美白至上主義にムカつくことは多々あります。色黒のアイドルが白くされてしまうのはいい事とは思えません。

ですがフォトショップも触ったことがなさそうな英語圏ペンが言ってることは、脊髄反射で"ホワイトウォッシング"と言う言葉を出している、状況を考慮せず自分たちの文化圏で生まれた判断基準・価値観を無理やり当てはめているように見えるんです。


それ以外にも英語にないニュアンスの韓国語を無理やり英語に当てはめて訳した文章だけを見てメンバーを非難したり(他の国の言葉には英語にない表現もあるというのがすっぽり抜けているように見えます)

日本や中国やタイやベトナムなどのアジア圏ペンは自力で翻訳したりしてるのに、英語圏ペンは公式にも他言語圏ペンにも当然の権利だと言わんばかりにeng plzと要求したりということをよく見かけます。

英語圏が世界の基準なのだという価値観が染み付いているように見えるんです。

どうしてこういう事が起こるんでしょうか?やはり世界では英語を喋る人の割合が多いからこんなふうになるんですかね?

アジアの文化を好きになっておきながら西洋的価値観でジャッジするのをおかしく思うことはないんかい、と考えてしまいます。

答えというより泡沫さんの意見が聞きたいです…よろしくお願いします。


https://odaibako.net/detail/request/2415ee0608e9411b91871db08eadb1fb

 


英語圏といっても欧米圏だけではなくアジアも中南米も含まれるでしょうし、ひとくくりにはできないんじゃないかとは思います。欧米圏でもKPOPのファンは有色系の人種が多いようですが、人種も様々でしょう。美の価値観が似ているように見える日本と韓国と中国ですら実際は結構違うように思いますし。

 

ホワイトウォッシングについては過去に関連記事を訳した時に結構色々書きました。

個人的にはアジア人はアジア系の肌の事を「黄色い」と表現する事は少ないように思う(日中韓に限って言えば象牙色というかアイボリーとかベージュに近いイメージでは)ので、肌の色、しかもアジア人以外から見たyellowという基準にアジア人のアイデンティティを求める事自体に違和感があります。三原色白黒しかないくらい単純に世界を分けますねという。そもそもアジアも広いので、肌の色にもかなりバリエーションがありますし...他の人種もそうだと思いますが。アフリカ系や他のマイノリティと同様にあえて西洋の文化圏のアジア人が主張の手段として標榜するのはわかりますが、KPOPというそもそもアジアが主体の文化でもそれこそそういう「白人的な」価値観を持ち込む事自体が文化侵略なんでは...的な事は思います。芸能人の写真を権利者以外の他人が勝手にいいように修正してしまう事についての是非は、また別の問題じゃないかと思うので。


今はネットで世界中の情報が手に入る時代にはなりましたが、表層的に触れる事は簡単になった分逆に異文化というものがどういうものなのか、自分たちと歴史や文化的に大きな違いがある人間が同じ地球にいて当然だということを知らないし、考えた事もないという人たちもインターネット上にはたくさんいるんじゃないですかね。日本もそうかもしれませんが、海外に全くいったこともない人がインターネット上のみで好きになってファンを名乗れるというのがKPOPの特徴のひとつでもあると思います。ウェブ上に無料のコンテンツが溢れているので、全く現場に行かなくても課金もしなくてもファンの気分が味わえちゃいますよね。


それはさておき、日本にも「KPOPは好きだけど韓国には興味がない」とか「特定のグループは好きだけどKPOP自体には興味がない」という人がいるように、海外でも「自分が好きなアイドルが好きなのであって、その他の事は知らないしどうでもいい」という層もいるというだけではないでしょうか。そういう人たちは好きになったアイドルがたまたまアジア人だったけど、別にアジアに興味があるわけじゃないんだと思います。だから、その国の人たちがどういう意味でそういう言動や行動をとったのかという事を自国の価値観でしか測れないのでは。他の価値観を知らないし、そういうものがあるということ自体想像もした事がないんじゃないでしょうか。「なんでそうなるのか」の後に「行動原理が知りたい→調べてみよう」とはならずに「おかしい!直すべき!」という思考回路になってしまうのかな?

日本でも「日本では考えられない」というフレーズ、よく目にする気がしますが、同じではないけどこれに近いものがあるんじゃないかと思います。そういう人が盲目的に何かを好きになった場合(よく知らないけど好きというのはそういう側面もあると思います)何かがあったときに、一気に反転してレイシズム丸出しになったりするのが不思議ですが、最初から根本的な文化の違いを理解していないで勝手なイメージを自分の中で作っていて、しかもそれが自分の勝手なイメージだということすらわかっていなかったりするのが原因なのかもとは思います。

誰でも共感しうるような人間としての素の感情の部分やパフォーマンスだけを見て好きになるというのは素敵な事だと思いますが、個人的にはどのような職業であれ自分の生まれ育った環境の文化の影響を全く受けていない人間というのはいないと思いますから、特に全人格的に消費される事が多いアイドルの場合、生まれ育った場所の文化や慣習などを反映した行動が露出する可能性がいわゆる「アーティスト」よりは多いんじゃないかと思いますけど。

個人的には別に共感や同意をしなくても理解はできると思いますし、理解できなくても魅力があったり好きなものっていうのもあると思います。私自身もKPOPやその周辺文化に対して「は〜?全く理解できないし共感もできないな!でもたまらなく興味深いし面白いな!」と思う事はよくあります。


これと似たようなこと、アジアの文化が他の文化圏のファンと出会ったというケースとしては、多分日本のアニメやゲームと海外の二次元オタクの関係が近いのではないかと自分は思ってます。昔はなんでアニメのキャラクターの絵は金髪や茶髪で目が大きくて西洋的なのか・白人至上主義なのではというような非難と言うかツッコミがあったそうですが、現在ではジャパニーズスタイルのデフォルメが浸透して日本ぽさの特徴のひとつになり、それが西洋的だという人はほとんどいないと思います。髪や肌の色もナチュラルな人間にはありえない色のキャラクター多く出てきますし、キャラクターの人種配分についても以前の方が色々言われていたようですが、今日では「日本は人口の殆どが日本人だし、アジア系以外の人種も多くないのでそもそも他国向けに人種について配慮してキャラクターを作ってない」という事はオタク間ではある程度浸透しているようです。主人公の考え方やストーリー展開にしても欧米の価値観とはかなり違う事がありますが、これもある程度は文化的な差異として理解されてきていると思います。

日本のアニメやゲーム業界の意識が少しづつ変わっているのもあるとは思いますし、基本的には作り物のフィクションという点が大きいのかもしれませんが、そこに至るまでも何十年かかかっているようなので(現在進行形でもあるでしょう)ある程度の規模が出来て10年足らずのKPOPオタの世界でももっと時間が必要なのかもしれません。


言語的な事にしても「今どきどこの国のファンにもわかるように世界的にメジャー言語で供給するべき」というような考え方の人がいるのはどこのジャンルでも同じかもしれませんが、二次元の場合は「日本のコンテンツは基本的には国内向けにしか作ってない」という事は今は海外の二次オタの間ではある程度理解されていますし、だからこそ「こっちが勝手に好きになったので、好きな作品を広めるために」という考え方から海賊版ファンサブ(ファン翻訳)が発達して、やがて今のようにたくさん公式で翻訳版が出るようになったという歴史があるのかも。しかし海外展開を意識している訳ではなかった日本の二次元カルチャーとは違い、今のKPOPが最初から海外に売り出すことを目的としているなら、ファンサブから公式訳という似た流れはあるものの、英語圏向けコンテンツの不足に対して安易に「eng plz」と言い出す英語圏のファンが生まれるのは仕方ない面もあるのかもしれないとも思います。

(そういう思考回路自体は傲慢とは感じますが)


しかし英語はユーザー数が桁違いですし、英語で出た誤訳というかニュアンスの理解不足による誤解は広まるスピードも早い(でも訂正は広まりにくい)上に、英語訳を他の言語に又訳して更に誤解が広まって行きそうなので、そういう点ではノーチェックの事もあるファンサブが多いのは良し悪しかもしれないですね。二次元キャラと違って現実に生きている人間が対象なので。

(お前が言うなというオチ)