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韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【韓国日報訳】日本では10年ぶりに最多観客・韓国では公演をボイコット···K-POPのジレンマ

【韓国日報訳】日本では10年ぶりに最多観客・韓国では公演をボイコット···K-POPのジレンマ

入力 2024.03.04 07:00 修整2024.03.04 10:04

昨年上半期275万人…···

海外アーティストの公演を見た日本人の6割がK-POPチケットを購入

①多様化したファン層

②「反ジャニーズ」の反作用

国内ではファンダムの「冷遇論議

公演回数20%水準、デビュー日の公演も日本で

大型公演場がない・SEVENTEENはソウルで公演できない

「脱韓国」? 国内公演企画で離脱を阻止


昨年上半期、KPOPが日本において過去10年で最も多くの観客を動員したことが分かった。 00年代初め、BoA東方神起(日本韓流第1世代)がKPOPの人気に火をつけた後、少女時代とKARA(第2世代)、そしてBTS・TWICE(第3世代)に続きNewJeans・IVE(第4世代)などが相次いで注目され、ファンダムを広げた結果だ。

 

日本に公演が集中し、陰も落ちた。 昨年上半期、日本ではKPOPの公演が312回も開かれた。 1日1回度以上の様相だ。 しかし、日本で規模を拡大したKPOPが最近韓国のファンには不満を買っている。 公演回数が日本の20%程度の水準に大きく落ち、デビュー記念日のイベントまで日本で開かれ「公演不買」運動まで起きた。 日本で規模を拡大したKPOP公演市場が国内では憎しみに塗れてジレンマに直面している様子だ。


○過去5年間のKPOP日本公演の観客動員数

(単位: 万人 上半期1/1〜6/30)

日本コンサートプロモーター協会資料

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表=パク・クウォン記者

 

エンデミック(パンデミック終了)後、日本で観客数が253倍増加

日本の公演業界団体であるコンサートプロモータース協会(ACPC)が最近ホームページに公開した「2023上半期 公演市場報告書」によれば、昨年1月1日から6月30日までの間に日本でKPOPの公演を見た観客は275万人だ。 過去10年間で最多記録だった2014年の242万人より、約12%増加した。

 

ACPCはこの報告書で、KPOPの公演観客急増を主要イシューとして扱い、「顕著な大型公演の増加」を背景に挙げた。 ホールやライブハウスなど小さな公演場の公演は3年前と比べて半分になったが、1万人以上の観客を動員できるアリーナとドーム競技場の公演回数は2倍以上に増えた。 KPOP公演のチケット売上は352億円(約3132億ウォン)と集計された。 同期間中の日本の公演市場全体の売上(2,389億円)の14.8%に当たる。

 

KPOPアーティストの観客動員力は強力だった。 日本で海外アーティストの公演を見た総観客数は454万人で、KPOPの割合が60%を占めた。 日本で海外アーティスト公演を見た10人のうち6人がKPOPの公演を見に行ったという意味だ。 北米(100万人)と欧州(57万人)のポップスター公演の観客数は、KPOPの半分を下回った。 今年は日本の大衆音楽が韓国内に開放されてから20年になる年だ。 JPOPの空襲で国内音楽市場が蚕食されるという憂慮とは異なり、20年余りが流れてそれとは正反対に日本で逆にKPOPが勢いに乗っているのだ。


1月から放送中の日本のフジテレビドラマ「婚活1000本ノック」には、KPOP「オタ活」(好きなものに突進する行為)にハマった日本人のキャラクターが登場する。 小説家のヒロインの友人である桶家(橋本マナミ)がITZYの5人のメンバーをかたどったグッズを食卓に載せて写真を撮っている。


「公演ビザ発給緩和」の特殊性が高まる見通し

日本の公演市場でのKPOPの飛躍は、①中年層から10、20代にファンダムを広げた点②創業者が練習生たちを性搾取した日本の有名芸能企画会社ジャニーズ(現スマイルアップ)事態に対する反作用などによるものと分析される。 キム・サンファ音楽評論家は「昨年、日本最大の年末音楽ショーであるNHK紅白歌合戦』に歴代最も多いKPOP関連グループ(6組)が出演した」とし、「日本では地上波が韓国でデビュー2ヶ月にもならない新人グループのツアーに関するドキュメンタリープログラムを編成するなど、韓日関係改善で日本放送の敷居も低くなった」と分析した。 昨年下半期に新人歌手対象の公演ビザ発給基準が緩和されたことを考慮すれば、日本でのKPOP公演特需はさらに大きくなるだろうというのが業界関係者たちの展望だ。 規模を拡大した日本公演の売上げを足がかりに、韓国内のKPOP企画会社である「HYBE」は、国内エンターテインメントの企画会社の中で初めて、昨年の年間売上げ2兆ウォン(連結基準)を突破した。

 

デビュー日に日本で? 劣悪なインフラ「観覧環境悪化」

しかし、韓国市場ではKPOP消費者の冷遇論難がふくらんだ。 最近、SNSサービスのX(旧ツイッター)には「SEVENTEENアンコン(アンコールコンサート)不買」がリアルタイムトレンド検索語として浮上した。SEVENTEENは「FOLLOW AGAIN」アンコール公演を今月30・31日に仁川アジアドメインスタジアムで、5月18・19日と25・26日には日本の日産スタジアムなどで行う。 日本公演日の5月26日はSEVENTEENのデビュー記念日だ。 昨年、SEVENTEENは日本で12回公演したが、韓国では2回のみの公演だ。韓国公演の回数が著しく少ない状況で、企画会社がデビュー記念日の公演まで日本で行うと国内ファンダムの不満が爆発したのだ。


問題は、このような雑音がKPOP国内公演市場全般にわたって頻繁になる可能性が高いということにある。 日本は世界で 2 番目に大きな音楽市場だ。公演観客層が厚いうえに、大型公演場のインフラが良く、大部分のKPOP企画会社が日本公演に攻撃的に乗り出す傾向だ。 KPOP大型企画会社のある関係者は「日本で公演すれば両親と子供が一緒に公演場を訪れる」として、「観客動員力、大型公演場のレンタル問題などを勘案すれば韓国より安定的に事業を進めることができ、日本公演に気を遣わざるを得ない」と話した。


国内の劣悪な公演インフラ問題まで重なり、KPOP公演の国内観覧環境はますます悪化している。SEVENTEENはソウルで適切な公演場を確保できず、仁川で公演する。 蚕室オリンピックメインスタジアムが2026年12月までリモデリング工事中であり、ソウルで5万人以上を集めることができる公演場が事実上ないためだ。 キム・ドホン大衆音楽評論家は「KPOPの公演だけでなく関連授賞式も最近『脱韓国』をする雰囲気」として「企画会社は国内だけで見られる公演企画で国内消費者の離脱に長期的に対応する必要がある」と意見を出した。


ヤン・スンジュン記者

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実際日本の現場に長年(...)いる体感からすると、個人的には分析①も②もドンピシャではなくて、まあそれもあるかもだけど...くらいの印象です。

単純にKPOPグループも長寿になっていて、かつて人気の頂点を極めたベテラングループも解散しなければ日本ではアリーナ以上の公演が可能であり、そういうグループの数自体が増えてるからではないかと思います。実際東方神起SHINeeは今でもドーム公演やってますし。

日本のKPOPファン層自体も「中年層から10・20代に広がった」んではなくて、元々KPOPブーム初期にはまった10・20代が卒業せずそのまま中年層になって、更にその上に新しい10・20代が入って来てるというサイクルが出来上がって来た、いう方が近いように思います。KPOPブーム初期の頃すでに中年だった層はそのまま老年層になって残っている人も珍しくないですし。(もはや親子2代どころか3代で公演に来ることも珍しくない)

過去にKPOPが観客動員最多だったという2014年ごろというのもいわゆる「KPOPブーム」の時期ではありませんし、その次のBTSからのブームが2018でそこがピークじゃなかったことを考えると、この動員の数はその場その場のブームの結果ってわけではない、積み重ねってことでしょう。


②に関してはカケモもいますし、音楽チャートを見ると「日本のアーティスト」の割合は減ってなくて、いわゆる洋楽アーティストの割合がかなり減ってるんですよね。

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日本経済新聞Webサイトより

つまり、KPOPは邦楽よりは洋楽にとって代わっている可能性の方が高い。その点に全然触れられてないのがちょっと惜しい記事でした。

ちなみに日経のコンサート規模ランキングでも2023は10位以内に旧ジャニーズのグループが3組入ってましたが、2022・2021も3〜4組のランクインだったので規模が減ってはいても現状そこまで大きな変化あるかなあという感じでしたし。KPOPのグループではSEVENTEENが2位・StrayKidsが10位でしたが、元々過去10年でトップ10にKPOPアーティストが複数入るケースは珍しくはなかったと思います。

日本の場合、元々ジャニーズ以外にもLDH等のボーイズグループやバンド、二次元関連等でもツアー規模が大きいアーティストはアイドル以外でも沢山いますし、女子のグループも坂道系など動員が大きいグループはおり、更にアイドル間のみでの移動や掛け持ちとも限らないですね。

 

日本公演が多くて国内が少ないっていうのも10年前から常態化していて、昔からファン同士では気を使ってきたイシューなので(それこそ昔はデビュー日は韓国でが当然の空気ではあったので、スケジュールについて日本のファンもなんとなく色々気を使った)正直今更なんですよね...

公演規模の差についても、ここですら「ソウルの話」に終始してますが、日本の場合は東京以外の近郊都市(千葉・埼玉・神奈川)やそれ以外のエリアの中心都市も含めて、日本全域の広いエリアで大型公演が可能というのは大きいと思います。文中に出て来たSEVENTEENの12公演というのも埼玉、東京、愛知、大阪、福岡5都市のトータルで12公演ですし、スタジアムも東京と大阪で2公演づつですから、ソウルのみの韓国が2公演というのは都市ごとの公演比率的には大差ないはずです。単純な公演場の数だけでなく、地方公演に考えすらが及びにくい都市の一極化っていう根本的な社会問題がベースにある気はします。AKMUは韓国内ツアーで地方公演もたくさん回っていますが、これはメジャーアーティストとしては本当にレアケースみたいですし。

【質問箱お返事】音楽がアニメ経由で海外に広がることについて

【お題箱からのご質問】

泡沫ニムはKPOPとはまた別に、二次元と楽曲の関係性とかJPOPのアニメ経由の海外への広がりの注目されてるように思うんですが、最近アニメ経由で広がったからと言ってそれは所詮海外のアニメ好きというごく限られた属性の人たちの間のものに過ぎず、世界的な広がりとは限界があるという言説を見ました。
それはそうだろうと思うんですが、アニメを馬鹿にしてる感じがしてモヤモヤしております。私が二次元も好きというのもあるんですが...YOASOBIの88risingのフェスでの盛り上がりを見ると全然そんな事ないのでは?とかアニメ経由だって全然よいじゃんとも思いますし、泡沫ニムはどう思われてますか...?

2023/10/02 01:05:50

https://odaibako.net/detail/request/d9da306c-cae6-46ab-9c09-a56005283524

 

 「アニメ経由で世界で知られても知られる範囲に限界がある」というのは元々OSTでもあるのでそうだろうと思いますけど、その「範囲」はここ数年で結構広がってるんじゃないかとも思ってます。

そもそも近年は本当に世界中で属性関係なく知られてる曲自体が年々減っていて、それぞれの色んな属性の人たちの中でのヒットっていうのが増えてる印象ですから、「特定層に向けて届ける」というのは世界的な音楽の潮流を見ても間違ってないんじゃないかと思いますね。そして元の「アニメ」自体のポピュラリティーが近年世界的に急激に広がっており、特にコロナ禍以降それが顕著でオタクやアニメ好きだけのものでも年々なくなってきてると思います。オタクの数自体も増えてそうではありますが。特に若年層ではそういうバイアスは減ってきてると思いますし、最新のLuminate(billboardにデータを提供している会社です)の調べではアジア圏は勿論、「アメリカのZ世代の18%はアニメから音楽を知って聴く」というデータも出てきています。

 

 18%って多くはないですけど、5〜6人に1人と考えると決して侮れる割合ではないのでは。2023年現在、真の若年層と言っても良いアルファ世代がハイティーンになる頃にはもっと増えているかもしれません。北米のアニメ専門配信会社Chrunchrollの有料登録者数は現在500万人超えでアメリカの人口比率的にはマジョリティとは言えませんが、無料登録会員は5000万人を超えていますし(NETFLIXの日本での登録数が約600万人)、純粋な人数としては今アニメを見ている人口が最も多いのはアメリカとも言われています。

だからその「限界」でさえも十分に強大なので目指して損することはないでしょうし、HITCでのYOASOBIステージの盛り上がりを見ればそれは説得力がありますよね。

「限界が〜」の言説って、過去の国内でのアニメタイアップの歴史を顧みると、むか〜しの日本でもこういうことを言われてたのかな?と思います。昔は「アニメなんか」の主題歌をアニメ専門歌手以外がやることはなかったようですし、80〜90年代から一般のヒット歌手もタイアップで楽曲提供するようになり、それがヒットすることで音楽の世界でのアニメとアニソンとアニソン以外のポピュラー音楽の垣根も薄くなっていき、今では「一般人」や「音楽好き」に人気のアーティストがアニメのストーリーに合わせたオーダーメイドの楽曲提供をすることは珍しくなくなってますよね。こういう意識の変化が今後日本以外でも起こっていく可能性はあると思います。既に海外の音楽カルチャーの世界でも、Nujabesのようにアニメがきっかけで世界に知られて、結果的にLo-Fiヒップホップブームのきっかけになったというような例もありますしね。


私は10代の頃から、この渡辺信一郎監督作品などを経由して海外アーティストも含む色々な音楽ジャンルに食指を広げていったタイプなので、まさにアニメによって若い時代に音楽体験が豊かになっていった経験があるんですよね。だから、私と同じ経験をしている人たちは世界中にいるんじゃないかという確信があり、それがメジャーでもそうでなくても音楽カルチャーにポジティブな影響をもたらすこと、文化の世界的な広がりの屋台骨の一部になっていくこともあるんじゃないかと思ってます。

今世界で最もメジャーな音楽ジャンルはヒップホップになったそうですが、RZAやLil Uzi Vert、Megan Thee Stallionのようにアニメ好きを公言しているアーティストも少なくありませんし、人気のヒップホップアーティストの曲の中にはアニメ作品をリファレンスしているものが珍しくなく、むしろアニメを知っている人と知らない人の間で曲の解釈度が変わるということ、カルチャーへの理解深度に影響が出ることもあるかも。The WeekndもFateを曲中にサンプリングする時代...(これは流石になんでなのか本当に教えてほしい)

 

 まあ、そもそもが「アニメ」っていうのもエンタメの中の表現方法のひとつに過ぎず、「アニメ」で括るのも今時は「映画」「小説」「ドラマ」みたいなもので、OST的な立ち位置ということなら「映画のOST経由で注目されても映画を見る人にしか広がらない限界がある」っていうような言い方はあまりしない気がします。
(もしそうであっても何か問題が?と昨年のWe Don’t Talk About Brunoの大ヒットを経た後では思いますが)
それがこと「アニメ」となると出てきてしまうというのは、シンプルにそのカルチャーに対する蔑視があるってことなのかもしれないですね。アニオタしか見ない作品もあればもっとユニバーサルにリーチするような作品もあって、そこにアニメ作品としての貴賤はないですが、もしもリスナーを「選別」したいのであれば提供する作品を選べばよくて、「アニメ」ということ自体に限界を見て切り捨てるようなことはアニメ全体に対する偏見がないと今時はしないような気がしますよね。ビジネス的にもカルチャー的にも。

【質問箱お返事】韓国でのJPOPについての記事におけるコメントについて

韓国で最近JPOPが流行っていて背景に現大統領の日韓歩み寄りの動きも関係してると書かれていて違和感があります。

韓国でユン大統領は若い世代から全然人気ないですし、ユンが歩み寄ってもこっちは姿勢を崩さない、反発するという感情を持つ人は多いです。いまだに日本製品避けている人もいます。

遠慮なく日本好きを発信できるって、隠れキリシタンか?バカにされている気持ちだし、誤解を招く表現と思います。

もちろん政治も関係はあると思います。ムードとして。でも日本も政治にかかわらずオタクにささえられてK-POPが伸びてきたように、韓国内でもJ-POPのオタクがずっと一定数いて、人気焼肉屋のオーナーがキリンジ好きでカリンジって名前のカレー屋出したり、シティポップブーム、シブヤ系音楽の再熱、アニメや映画の主題歌、サブスク解禁、Y2k復古、最近のSLAMDUNKブーム、コロナでの旅行欲アップからの旅行解禁ムード、いろんな要因があって全部つながっていて、不買運動が盛んだった期間も含めて少しずつリスナーが拡大してきたように感じています。

J-POPの渡韓も、上の世代は韓国は金にならないと来韓公演無視してきたけどずっと韓国に来てくれていたバンドやアーティストいますし、坂本龍一もそうですし、そういう人たちの地道な努力は語らず、韓国内の政治のせいのようにとれる発言を日本人がするのが気になります。

最近のimase
とか日本の若いアーティストは韓国カルチャーに興味あるから韓国公演が実現しやすくなったっていう日本側の事情もあると思うんですが、泡沫さんはどう思いますか?

イライラして勝手に長く意見をぶつける内容になってしまってすみません。聞いてもらいたかっただけなのかもしれません。長い文章失礼しました。
 
2023/05/08 10:45:05

https://odaibako.net/detail/request/0c0e2df3-6d38-4403-87b8-dffdad96d765?card

 

これは私が訳したハンギョレの記事のコメントに関してですよね。でも、「韓国で最近JPOPが流行っていて背景に現大統領の日韓歩み寄りの動きも関係してる」とは書いてないですね。

 

「政権が変わった影響があるのでは」というコメントは、訳した記事のような内容が報道されるようになったという「報道のされ方」についてであって、実際の韓国内での日本のカルチャーの受容にされ方や浸透度などについてのことではないです。「韓国の政権交代以降、特に若年層の間で「日本ブーム」とも呼ばれるような日本のカルチャー消費が表立ってきており」であって、あくまで「表立っている=公に目につくようになってきている」事に対してです。
再度確認してみてください。
【ハンギョレ記事訳】お、これってヒップだね? TikTok世代が魅了されたJPOPが来る - サンダーエイジ

 

勿論、政権に関わらず昔からずっと日本の音楽やカルチャーが好きという人たちが一定数いるのは元々二次オタなのもあり体感していますし、韓国内の雰囲気がどうであれ(ノージャパンの時期でも)個人的にはそういう事柄を好んで取り上げてきたと思います。ある程度の期間ツイッターとか見てくれている方なら知ってくれていると思います。多分。

 

ただ、この記事に関しては投稿内容に書かれているような「文化の話」というより、「トレンドの話」についてだと思います。やはり日本からというか、日本に暮している私個人から見るとやはり韓国は日本よりも、「トレンド(流行)」に関しては政治的な雰囲気が結構影響しているように見えます。特定のカルチャーが好きな人たちの「好き」の気持ちが政治的な雰囲気で変わる事はないんじゃないかと思いますし、そういう層は社会政治状況に関わらず文化的な活動はしてきたと思いますが、実際はカルチャーをトレンドとしてしか消費しない人たちの方が圧倒的に多く、そういう人たちが「大多数の社会的な雰囲気」を形成しているのも現実ですよね。それは韓国も日本も同じだろうと思います。

そして、政治的な社会の雰囲気に関しては韓国の人たちの方が遥かに敏感なように見えます。それは政治を気にしているということなのでいい面でもあると思いますが、一方で多分政治的に無関心な人が韓国よりは多そうな日本の方が「政治を気にしないで消費する人が多い」という点では、ある意味で政治に対するカルチャーの強度があると言える部分もあるのではないかと思います。それもいい面良くない面あると思いますが。
日韓の時期が微妙だった時期でも日本では5万人近い東京ドームクラスの公演をしていた韓国のアーティストは何組もいましたし、ノージャパンが知られて日本で一部反発ムードがあった時期でも新大久保は賑わい、BTSは若年から老年層まで知られる存在になりました。韓国でのノージャパンの時に実際にユニクロや日本のビールメーカーが売り上げが下がったというような事は、日本でははっきりとはなかったと思います。メジャーなTV番組の露出では影響があった時期もあるかもしれませんが、日本は色んな分野で「オタク」が多いですし、特定の国のものを拒否や不買するというような動きはトレンド面でもカルチャーでも大々的には起きにくいと思います。一年中そういうことを言っている特定の思想の人たちはいますが。
でも、韓国は政治的な雰囲気は実際数字に出るくらいの消費行動への影響が今でもあって、決して過去の話ではないんだと直近のノージャパン運動の時に実感しました。私の韓国人の知人友人は殆どが日本のカルチャーが好きな人たちですが、そういう人たちの口からは一時期まさに「隠れキリシタン」というワードは出てました。昔のように(といってもそれほど昔でもないですが)制度的に禁止される事はなくても、なんとなく積極的だったりおおっぴらには言いづらいよね、というレベルの話ではありますが。そしてマスコミ報道については言わずもがなだと思います。

 

カルチャーメディアではなくマスコミの記事はまさに「社会的な空気」や「トレンド」を取り上げる事が多いものなので、ニュース記事であるあの記事出た事に対する「こういう日本文化関連の記事を出しやすかったり話しやすい雰囲気が以前よりあるのでは」という話であって、「保守政権になってから親日っぽいから日本の音楽も流行ってるっぽいよ☆」とかいう話ではないですし、そんなことは言ってないです。似た論調の韓国語のツイートや記事は主にSLAM DUNK関連で見かけましたし、それに対する反論も見ましたので、元々日本の音楽やカルチャー好きな韓国の方がそういう指摘にイライラするのはわかる気がします。私も「日本でのKPOPブーム」についての質問や記事を受ける事がありますが、そういう時は「すでにサブカルチャーとしてある程度日本に根づいている」というカルチャー的な話からは切り離してもっと大衆的なトレンドについての話をしています。でも、韓国は左派政権の時は反日ムードが政治的に利用されやすいみたいだから、日本のものを表立って消費しづらくなる時はあったりするのかな?という印象は個人的には正直あります。そういう雰囲気をぶち破るようなトレンドがカルチャーから生まれる事もあるというのも、政権交代直前の時期に起こったポケモンパンブームを見て思いましたし。

 

「最近のimase とか日本の若いアーティストは韓国カルチャーに興味あるから韓国公演が実現しやすくなったっていう日本側の事情もあると思うんですが」
という部分ですが、そういう部分も勿論あると思いますが、メジャー所属の日本のアーティストが海外で公演をするには、アーティスト側がただ行きたいという気持ちだけでは実現するものではなく、(実際、韓国カルチャー好きを公言していて来韓公演をしたがってるけど出来てないアーティストはいるんじゃないかと思います)それこそ韓国内でのチャートインや受賞、映画のヒットなど、ビジネス的にも表立った好意的な反応があったからこそ実現したのではないでしょうか。それと日本ではレコード会社の力が強いので、韓国支社もあるレコード会社所属かどうかなど、そういう会社間の関係性もあるのではないかと思います。記事に出てきた単独来韓公演をした(する)アーティスト達は全員ユニバーサルの所属で、いずれも韓国に支社がありますよね。

(そういえば坂本氏もユニバーサルです)

 

【質問箱お返事】「タイトル曲」を複数出すことのメリットについて

【お題箱からのご質問】

アルバムの曲をダブルタイトルやトリプルタイトルにすることの利点って何があるのでしょうか?もしわかりましたら教えてください。
 2023/06/19 23:45:16

https://odaibako.net/detail/request/04780d76-bfa0-47e3-b74f-4e1c1600db93?card

 

Twitter上で答えても良いかもというようなシンプルなご質問なんですが、「タイトル曲」というのがほぼ韓国にしかない概念みたいなので、この機会に一度ブログに記録としてまとめておいたらいいかもと思ってこちらで回答します。

 

韓国で「タイトル曲」という概念ができたのは韓国の音楽ビジネスでは「シングルリリース」という慣習が定着しなかったという歴史が大きいようです。

日本やアメリカでは先にシングルカットの曲が出て、それを集めてアルバムにするというやり方が昔からの定番のやり方ですが、韓国ではレコードがSP盤からLP盤に移行した時に、1・2曲の為に盤(テープ・CDなども)を作るのはもったいないという傾向から、歌手が新曲を出す際には基本的に「アルバム」が普通になったため、アルバムのプロモーションでTV番組やイベントなどで歌う時に「その中でメインで推したい曲はこれです」というのを明らかにするために「タイトル曲」という概念が出来たようです。

後にアイドル業界ではフルアルバム未満のEP=ミニアルバムという物が出てきましたが(これはYGがはしりのようです)、単曲リリースの場合はデジタルが多いですね。f(x)の「Chu〜♡」とかWINNERのようにシングルで音盤を出す例もありますが、割と珍しいと思います。

 

以上のことを踏まえると、「タイトル曲を複数設定する」と言うのは「シングル曲を複数リリースしたのちフルアルバムを出す」を逆にやってるということですね。

具体的に言えば、プロモーション出来る曲が増えるという事ではないでしょうか。

 

・MVが増える→最近はタイトル曲以外もMV撮影するパターンはありますが、基本的にタイトル曲には必ずMVがあるので。

 

・音楽番組でパフォーマンスできる曲が増える→デビューやカムバステージ以外は、音楽番組でパフォーマンスできる曲やチャート集計対象になる曲は基本的にはタイトル曲だけです。

(例えばタイトル曲以外がバズったりなどのチャート結果次第で途中で変更になる場合もあり)

ただ、カムバック活動に際して複数のパフォーマンスを予め用意しなければいけないので、ゴリゴリに踊るタイプのグループなどの場合は負担が大きいのではないかと思います。

 

・音源配信サイトで「タイトル曲」表示される曲が増える→韓国の主要音源配信サイト(VIBE以外)ではアルバムの曲一覧の中に「タイトル曲」というのが表示されるため、リリースの際にどの曲をタイトル曲にするのか1曲は指定しなければいけないそうです。そして、ファン以外の一般のリスナーがアルバムを聴く際はタイトル曲しか聴かないパターンも少なくないので、タイトル曲を多く設定するとそれだけ大衆的に聴かれやすいというメリットはあると思います。

 

上記の理由から、1枚のアルバムの中で複数の曲をプロモーション出来るため、「音源チャート」での複数曲の上位チャートインやロングランの可能性が上がるというのが最も大きなメリットではないでしょうか。「タイトル曲」はそれだけでプロモーションの露出機会が多いので、特に元々楽曲人気が高く音源チャートでの好成績が期待しやすいグループの場合、そういう効果は得やすいと思います。

逆に、ファンダム中心すぎるアーティストの場合はスミンや投票対象が分散して逆効果になることもあります(その場合は途中からチャート順位が高い方をメインにするようファンダム側も計画変更することが多いと思いますが)ので、特に音源成績が良いアーティストが主に使う戦略だと思います。

過去を見てもアイドルの場合、複数の楽曲をタイトル曲にしたことがあるのはIU・少女時代・2NE1・BIGBANG(アルバムの全曲がタイトル曲だったことも)・WINNER・IVEなど、元々音源成績が良いアーティストが多いと思います。今度トリプルタイトルで1集フルアルバムを出すNEW JEANSもそうですね。

 

【ハンギョレ記事訳】「ワンソースマルチユース」出版界にもJ風

「ワンソースマルチユース」出版界にもJ風

https://m.hani.co.kr/arti/culture/book/1095474.html#ace04ou

2023.6.12  ヤン・ソナ記者

 

アニメ興行にマンガの火花

小説・旅行書で実績拡大

 

今年上半期、出版界にもJコンテンツブームが起きた。 「THE FIRST SLAM DUNK」「すずめの戸締まり」のような日本のアニメーションの人気に支えられ、しばらく消えていたJコンテンツの力が再び蘇り、日本の漫画と小説、旅行書の販売に火をつけた。

オンライン書店yes24が今年上半期の販売実績を分析した結果によれば、ベストセラー50位圏内に「SLAM DUNK新装再編版」が計20冊布陣するなど、「SLAM DUNK」漫画の人気が目立つ。 yes24は「30〜40代の読者が思い出を思い浮かべながらSLAM DUNKの漫画を買い集めるかと思えば、アニメーションを楽しく見た20〜30代の女性たちは『スラムダンクポップアップストア』を訪ねたりコミックス全巻読破するなど『バスケットボール遊び』トレンドを作ったりもした」として「1セット当たり12万ウォンを越える「SLAM DUNK新装再編版」は今年第1四半期中に約1万セットが販売されるなど、「SLAM DUNK」は多様な年齢層で愛された」と伝えた。

COVID-19パンデミック発生以前までは「嫌われる勇気」や「武器になる哲学」のような日本の作家が書いた教養書が国内読者に多く愛され、自己啓発書・経済経営書・小説などが人気を集めた。 しかしコロナの時期を経て「これ以上日本で学ぶことがない」という見解が一部生じ、Jコンテンツの人気も冷めた。 そのような状況でアニメーション強国である日本のアニメーション数編が国内上映され興行を集め、アニメーション関連図書が人気を集めたのだ。

 

3月にはアニメ「すずめの戸締まり」が上映され、同名の小説「すずめの戸締まり」が多く愛された。 yes24ベストセラー10位となり、新海誠監督の前作「君の名は。」「天気の子」もの小説も再び注目を集めた。 この他にオンライン動画ストリーミングサービスで日本のアニメーション「推しの子」が興行し、4月12日の初放送以後、1週目に原作の漫画が前週対比の12倍多く販売されるなど、日本漫画は上半期中ずっと出版界の「鍵」として浮上した。 漫画に対する人気は小説や旅行書にも拡大した。 日本の青春恋愛小説「今夜、世界からこの恋が消えるとしても」は上半期yes24「小説・詩・戯曲」分野で5位を、ファンタジー小説「西由比ヶ浜駅の神様」は7位を記録した。 yes24上半期の海外旅行分野の図書全体販売量のうち、日本旅行書の比重は約30%で1位を占めた。


ブックコラムニストのホン・スンチョルは「日本の大型出版社は一つのコンテンツを開発し、それを映画、ゲーム、音楽アルバム、アニメーション、キャラクター事業、出版などに活用して波及効果を狙う『ワンソースマルチユース』戦略に優れている」とし、「生まれた時からスマートフォンを使っている若い世代には、映像に基づいたJコンテンツが魅力的に近づいてきており、これに合わせた出版社の戦略が国内市場にも通じた」と分析した。

【ハンギョレ記事訳】お、これってヒップだね? TikTok世代が魅了されたJPOPが来る

お、これってヒップだね? TikTok世代が魅了されたJPOPが来る

https://m.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1095473.html#ace04ou

2023.6.12  ソ・ジョンミン記者

 

シンガーソングライターimase先頭に

あいみょん・10FEETが国内で人気

人気チャート入り、逆走行のおかげで

ショーケース・コンサート···次々と来韓

 

かつて、日本のポピュラー音楽はタブーの領域だった。 日本大衆文化が禁止された1980〜90年代、少数のマニアたちは陰で知ることで安全地帯、X JAPANなど日本音楽を享有した。 歌謡界が日本の音楽を盗作することも一度や二度ではなかった。 金大中政府になって日本大衆文化が開放されたが、JPOPの風は思ったより強くなかった。 00年代に入って、KPOPが猛威を振るい始めたためだ。 JPOPは依然として少数マニアの音楽だった。 ところが最近、他の動きが目立っている。 若い世代の間でJPOPが「ヒップ」な音楽として浮上しているのだ。 そのフロントランナーは2000年生まれの日本のシンガーソングライターimaseだ。 彼が昨年8月に発売した「Night Dancer」は3月、国内最大音源サイトMelOnの「トップ100」チャートで最高17位まで上がった。 J-POPが音源チャートでこのような成績を出したのはなかなか珍しいことだ。 この歌は9日現在でも53位にランクされている。 このような人気に力づけられ4月に開いた初めての来韓ショーケースには、国内ファン500人余りが集まった。 imaseは韓国のラッパーBig Naughtyとコラボして「ナイトダンサー」リミックスバージョンを発売したかと思えば、HYBEのファンコミュニティプラットフォームWeverseにも入店した。 imase人気の足がかりは、ショートフォーム動画ベースのSNS TikTokだ。 TikTokで「Night Dancer」のダンスチャレンジが流行し、再生回数12億回を越えた。 TikTokから得た関心がそのまま音源チャートにつながっている様だ。 国内グループfifty fiftyの「Cupid」がTikTokで人気を集め、SpotifyBillboardの成績につながったのと同じ歩みだ。 imaseだけではない。 「日本のIU」と呼ばれるあいみょんが2017年に発表した「愛を伝えたいとか」が遅れて国内で逆走行するかと思えば、シンガーソングライターの米津玄師、藤井風などもショートフォーム映像を基盤に大きな人気を得ている。 藤井風は24日、ソウル光云大学東海文化芸術館大劇場で初来韓公演をするが、一瞬で売り切れた。 シンガーソングライターのVaundy、混成デュオのYOASOBIも最近人気のJPOPアーティストだ。 最近になって国内でJPOPが愛されるのには、日本の若い音楽家たちの変化が作用したという分析が出ている。 大衆音楽評論家のキム・ソンファンは「過去の日本はデジタル音源より伝統的なアルバム市場が強勢だった。 内需市場だけでも十分で、あえてグローバル進出に努める必要もなかった」として「しかし最近数年間、日本も音源中心市場に急速に再編されており、特に若い音楽家たちがYouTubeTikTokなどを積極的に活用しながら変化が加速化している」と説明した。 さらに結成して20年近く経ったバンドSEKAI NO OWARIも昨年発表した新曲「Habit」のミュージックビデオにダンスチャレンジを念頭に置いたダンスの振付を入れ、これは実際にダンスチャレンジにつながった。


国内で愛され続けている日本アニメーションの影響で、JPOPが人気を得たりもする。 今年初めに封切りし460万を越える観客を集めた「THE FIRST SLAM DUNK」の主題歌を歌ったバンド10FEETは4月に来韓イベントを開いたのに続き、7月15日ソウル江西区KBSアリーナで初来韓公演を行う。 20~30代の若年層の前売り率が絶対的に高いと公演主催社側は伝えた。 新海誠監督の「君の名は」「天気の子」「すずめの戸締まり」の音楽に参加したバンドRADWINMPSも7月21日、ソウル広津区yes24ライブホールで来韓公演を行う。 オンライン動画サービス(OTT)Netflixなどで公開されたアニメーションシリーズ「推しの子」の主題歌「アイドル」を歌ったYOASOBIの人気も似たような文脈だ。 JPOPアーティストたちの国内音楽フェスティバルへの参加も大幅に増えた。 8月4~6日、仁川松島月光祭り公園で開かれる仁川ペンタポートロックフェスティバルにはELLEGARDEN、KIRINJI、おとぼけビーバー、羊文学など日本のバンドが大挙出演する。 先立って7月15〜16日、京畿道高陽キンテックスで開かれる「HAVE A NICETRIP」フェスティバルにも日本のシティポップバンドAWESOME CITY CLUBが参加する。 コロナパンデミック以後海外ツアーに飢えている日本バンドの積極的な歩みと、負担にならない出演料で一定水準以上のパフォーマンスを出す出演陣を望むフェスティバル主催側の必要性が合致した結果だ。

 

今後、JPOPの人気と影響力はさらに高まるものと見られる。 過去に特定少数の専有物だったJPOPが今はYouTubeTikTokなどSNSに乗って不特定多数に近づいているためだ。 キム・ソンファン評論家は「過去には日本の音楽に接するためには特別な努力を傾けなければならなかったが、今はじっとしていてもアルゴリズムを通じて簡単に接することができる時代になった」として「聞く人の立場でどの国の音楽なのかを問い詰めずに、良ければ良いという認識が広がっており、JPOPの人気が以前より一層幅広くなるだろう」と見通した。

 

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韓国の政権交代以降、特に若年層の間で「日本ブーム」とも呼ばれるような日本のカルチャー消費が表立ってきており、特に韓国の得意分野でもある映画の分野で「THE FIRST SLAM DUNK」「すずめの戸締まり」の4〜500万人動員というビッグヒットが出た影響もあってこういう記事がよく出るようになった印象があります。

実際は好みの変化以上に「社会的な雰囲気」的に、前の政権の時よりは日本のものをおおっぴらに好きと言いやすくなったという点がかなり大きいのではないかと思いますが...。

(特に左派傾向が強いと言われている30〜40代層に根強いファンが多いSLAM DUNKというコンテンツが後押ししたパワーは大きいかもしれない)

しかし日本のメディアではKPOP〜欧米圏事象として報道されることの多かった動画配信サイト経由のヒット(JPOPと欧米圏というのも最近ありますが)が韓国ではJPOPへの影響についてが記事になるのがパラレルワールドみたいで面白い。

 

【スターニュース記事】「児童向け」という烙印を押されたアニメの新たな挑戦 [独立芸術映画公開新作レビュー]「あの夏」

「児童向け」という烙印を押されたアニメの新たな挑戦 [独立芸術映画公開新作レビュー]「あの夏」

https://star.ohmynews.com/NWS_Web/OhmyStar/at_pg_m.aspx?CNTN_CD=A0002934087

2023.06.07

 

初夏に訪れたうれしい客

「あの夏」を見たとたん、いよいよ来るべき時が来たなと思った。 訳もなく大げさに言うのではない。 私たちはアニメーション、すなわち「漫画映画」と言えば依然としてほとんどが「子供が見るもの」として学習された遺伝子で反応したりする。 それで独立短編アニメーションとは正確に対称を成すように、「国産」劇場封切り用長編アニメーションは「全体観覧可」で家族全員が手に手を握り、幼い子供たちと共に週末に外食と結合した形態で観覧するものだと規定されてきたのが事実だ。

もちろん、最近悲鳴を上げる映画館街に日照りの後の恵みの雨のように降ってきた底力のある日本のアニメーションや、ハリウッドブロックバスター級大作アニメーションもまたこの属性から完全に抜け出すことはないが、それでも比較的多様性が確保されている反面、特に国産アニメは「剥製」から抜け出せずにいる。 だからこそ「あの夏」が余計に嬉しい。

 

「あの夏」は「コロンブスの卵」のような存在だ。 全年齢が見ることが全てなら、熱心に商業的に必敗する悲劇的な運命から抜け出す余地が少しでもうかがえるので、アニメーション監督たちは苦労して折衷するケースが多い。 いずれにせよ、相当な予算を投資して収益を上げなければならない制作側は、まるで固く縛られたかのようにさらに狭く新作の素材とレベルに苦心している。 その中で自然に踏襲が行われ、観客は飽きて無視する。 なぜ私たちには日本のアニメの名家ジブリスタジオが出てこないのか、何かを言う前にこのような前後の事情を理解しなければならない。 いざ破格的な冒険を繰り広げようとすれば、制作段階で詰まったり、苦労して完成して披露しても、漫画映画はただ夢と希望を与えなければならないと言い張られるのが常だ。 そんな中、「あの夏」は(もちろん商業的計算がなくはないが)勇猛に新しい分野に挑戦する。 まさにLGBTの主人公たちのラブストーリー、すなわち「クィア」ジャンルだ。

もちろん、本作品も製作許諾がおりるまでは市場開拓の意図が最も絶対的根拠になっただろう。 依然として社会的には苦しい生活を送って偏見と嫌悪に苦しんでいるが、大衆文化では現在最も活力があふれる素材のひとつがまさにクィアジャンルであるためだ。 今ではクィアジャンルを背景にした映画やドラマには不慣れではない状態だ。 独立芸術映画ではむしろ逆転現象に見えるほど、該当分野の創作物が増加の一途をたどっている。 しかし、ついに劇場公開長編アニメでも試みが行われたのはかなり驚くべきことだ。 そのように「あの夏」は興行可否とは別に今後も続く試みの最初のランナーとなった。

 

ある者は反問するだろう。 物語映画であれドキュメンタリーであれ、YouTubeやウェブ配信ドラマでもクィアコードは数多く発見できるのではないか。 もちろん間違った言葉ではない。 しかし、国内での映画ジャンルの中で(隣国日本とは劇的に対照的に)アニメーション分野がどれほどマイナーに属し冷遇されているかを理解する人なら、「あの夏」の登場は衝撃に違いない。

 

2020年代の韓国文学の傾向と触れ合うストーリーの中で

【訳注:以下ストーリーのネタバレが含まれています】

 


時代はミレニアム前後、忠清道のある田舎の学校のグラウンドで18才のイ・ギョンとスイという名前の「少女が少女に出会う」。その運命的な初めての出会いは偶然な事故から始まる。 グラウンドのベンチに座っていたメガネ少女のイ・ギョンは、サッカー選手のスイが蹴ったボールに当たって、うっかりメガネが折れてしまう。 始まりはそんな風に痛かった。 しかし、2人は申し訳なく思っていたスイが、イ・ギョンに渡したイチゴ牛乳のように甘く惹かれあい、いつのまにか毎日出会いを待つことになる。 その時代の初々しい恋愛感情というのは、もともとそんな感じではないだろうか。

 

イ・ギョンは平凡に見えるが、他人には言えなかった苦しみがある。 染めたと誤解されるほど濃い茶色の髪、そして注意深く見れば目立つほど濃い茶色の瞳を持っている。 そのため、イ·ギョンは幼い頃から無念極まりない差別と嫌悪にさらされてきた。 今なら表向きでも口に気をつけるだろうが、その時代にはそんな配慮は存在しなかったから。 2023年の同世代的な視線ならそれこそ、「野蛮の時代」のような2000年のミレニアム前後当時にはイ・ギョンの同世代はもちろん、さらに教師たちまでが平気で当事者に「犬の目」のようだとして見えない矢を平気で飛ばす。 18歳の少女に向かって。それこそ、思わず投げた石にカエルが当たって死んでも気にしなかった時代だ。

 

もはやイ・ギョンとかけがえのない仲になったスイは、そのようなパートナーの瞳を違う目で見てくれる初めての他人だ。 今まで自分の瞳に対して誰よりも長く凝視しながらも、スイは恋人がいつも恐れていたが日常になった反応、すなわち嫌悪を一切出さない。 2人は磁石の異なる極が引き合うように、世の中のすべての初恋が出発するように自然に結合する。 見るだけでもミルクと蜂蜜が流れだしそうな風景が続く。 ああ、甘い愛よ。

 

しかし、2023年現在もクィア当事者たちは現実で想像もできないほどの不利益に苦しんでいる。 まして、ほぼ四半世紀前の人物であるイ・ギョンとスイの周辺状況も、決して侮れない。 初恋の熱病の中でスイは、世の中のすべての恋人がそうであるように1cmでももっと密着したい。しかし、当の相手であるイ・ギョンは集団生活に慣れているからか、世の中の偏見がどれほど恐ろしいかをスイよりは多少よく知っている。そのため、もしかするとふたりのパートナー関係が周辺に明らかになるのではないかと、スイののべつまくなしなスキンシップに困らせられる。 そしてふたりの甘い10代は終わりつつある。 もうスイとイ・ギョンは、登下校の時に自然に一緒にしていたようには同じ道を歩くことができない。

 

太陽の光り輝く「あの夏」に起こった関係の終わり

ふたりの恋人の道は20歳を迎え、はっきりと分かれる。 イ・ギョンはソウルのかなり良い大学に、それも就職がうまくいく学部に合格し、成功的な将来に入ろうとしている。 しかし、体育特技生として大学に進学した後、実業選手になるのが目標だったスイは、高校3年生の夏に十字靭帯の負傷で選手生命が終わってしまった。 韓国の無数のスポーツ特待生志望者がそうであるように他の代案は準備していたはずがなく、イ・ギョンに比べて家庭の事情も良くない。 スイは自立するために自動車整備を学ぶことを決意する。 それぞれ進路はかけ離れているが、20歳になった2人はそれぞれ上京してソウルで暮らすことになる。

 

すでにふたりはぼんやりとお互いの道が大きく変わったことに気づいている。 しかし、まだ愛ですべてを克服できると期待していることもまた真実だ。 むしろ大都市の匿名性のおかげで見る目の多い家と田舎町を離れ、ふたりは顔色を伺わず物理的にはより身近になる。 大学生活と技術学校の実習生で身分は違うが、ふたりは随時会ってスイの考試院とワンルームで一緒に泊まったりする。 見た目は仲の良い親友、実際には同居する恋人になったわけだ。 しかし、悲しい予感は間違いない。 ふたりには些細に見えるが、いくつかの節目が浮かび上がってくる。そのような感情の停車場を経て、初々しかった恋人たちは悲しい予感が間違っていないことに気づき始める。

 

忠清道の田舎ではイ・ギョンとスイは「唯二」、いや「唯一」お互いを共有する存在だった。 2人はすべての違いにもかかわらずひとりと同じで、他の代わりは想像すらできなかった。 しかし、家から離れてソウルという空間、それも名門大学で比較にならない多様な文化的体験機会を持つようになったイ・ギョンは、スイとの関係を続けながらも1990年代から徐々に生まれ始めたクィア当事者たちのアジトを象徴する「ムーンリバークラブ」に出入りし、同じ指向を持つ人々と交わることになる。 一方、お互いに社会的身分が変わったことを意識するスイは、イ・ギョンが一緒にそこに行こうと言っても嫌がる。 あえてイ・ギョン以外の他の人たちと付き合う必要も、理由もないと思うからだ。 あっという間に恋に落ちたように、そんなふうに悲しい予感は突然、しかしふたりが前々から兆候としては気づいていたように、あっという間に染みこんでいく。

 

結局ふたりは別れる。 もちろん、初恋の終わりは私たちが想像して期待していたこととは絶対に程遠い。 一方的な別れの知らせと涙が流れるだけだ。 映画は原作の描写を最大限まで純度高く再現しようと、それこそ全力を尽くしている。


時代的感性と初恋の郷愁を組み合わせた原作の映像化

「あの夏」の原作は「ショウコの微笑」小説集で大きな注目を集めた作家チェ・ウニョンの2作目の小説集に収録された同名の短編だ。 小説の始まりは次のとおりだ。

 

「イ・ギョンとスイは18才の夏に初めて出会った。 始まりは事故だった。」

(チェ·ウニョン小説集「わたしに無害なひと」2018[文学トンネ]「あの夏」

 

それこそ、20〜30代の女性主人公たちの限りなく壊れて傷ついた心をコピーするように再現する、すでに定評のある作家の描写力が極点に達する文章で満たされており、限りなく発揮されている短編小説だ。 優れた原材料の味を生かすために、映像化の際には最小限度脚色に集中する基調が一貫している。 そのような方向性の下でアニメーション変換過程を経た。 そのおかげで、それこそ一編の映像小説に近い結果が完成した。最近、軽いタッチでセクシュアル・マイノリティ問題を扱おうとする映像化素材としてよく脚光を浴びているウェブトゥーンやライトノベル原作とは次元が違う。 短編小説ではあるが、本格文学を基盤に創作が行われた点が非常に異彩だ。 そのような背景から、確かに物語密度の高い展開だ。

 

そこに、最近出版市場で脚光を浴びている若い作家たちの作品傾向のひとつの頂点ともいえる原作が噴き出す非常に繊細な描写が、誰もが一度は経験した初恋のおぼろげさと喪失の感情を、極限の精度で作品を鑑賞することになるひとりひとりの観客に与えてくれる。 このような部類の文章が巨大な叙事を解きほぐすには限界があるというが、「都市の中に原子化された個人」と解説される2020年代の感性には、それこそ密着するようにぴったりの相性に違いない。 映画はそのような原作の強みと属性を徹底的に理解し、その再現に没頭する。 そのおかげで「原作破壊」なしにテキスト中心の文学ジャンルを漏水率は最低限度で映像化するのに成功した結果として完成した。

 

そのため、本作品に対する好き嫌いはほぼ完全に、原作と作家の世界観に関する批判点と同じ範囲内で満たされそうだ。 物語は、限りなく純度の高いガラスが割れてまるで宝石の破片のように散らばった光景を連想させる。 少しでもミスすれば足の裏に刺さるガラス片、あるいはふとめくった瞬間に指が切れた経験のように、文を読ませる極限の感情線が画面いっぱいに広がり、そのような感性は完全に原作に基づいているからだ。 それゆえに「あの夏」は誰かに絶対的な共感で近づくが、他の誰かにとってはただ感情消耗の極致と見なされるはずだからだ。

 

映画は、几帳面に2002年ワールドカップの思い出とイ・ギョンが再生していた携帯用コンパクトディスクプレーヤー、携帯メールだけを送ることができた2Gフューチャーフォン時代の郷愁を再現する。 一部の人々は背景に登場するスラッシュ(フラッペ)や粉食店のメニュー価格を目にし、正確な時代背景を推理するほどだ。そのように心強いストーリーを支える背景の中で、初恋の手に余る序盤と交差する終盤の痛みが、ちょうど1時間を満たす分量で繰り広げられる。 そんな風に隠しておいた思い出の日記帳がキラキラと輝く。 イ・ギョンとスイが密かに故郷で共にしていた時間に思わず発見したホタルのようにだ。 そのような感性は、遠くはファン・スンウォンの「夕立」から思い出の映画「クラシック」や「建築学概論」が伝えてくれた感興を記憶する人たちに合わせた仕事だろう。

 

K−アニメーションの遵守した再跳躍に壮大な未来を祈りつつ

もともと「あの夏」の始まりはアニメーション専門配信チャンネル「LAFTEL」で、7部作オリジナルで2021年9月に独占公開されたオムニバスバージョンだった。 この7部作を(アニメ系列では「総集編」と呼ばれる)劇場用長編アニメーションに再編集して封切りを迎えたわけだ。 韓国映画ジャンルの中で最も収益率が低いという劇場用アニメーション界に新しい市場開拓を狙った果敢な投資であるため、嬉しく思わざるを得ない。

 

かつて才能を認められた新鋭ハン・ジウォン監督とグローバル作業を遂行してきた製作チームレッドドッグカルチャーハウスが結合したおかげで、本作品は私たちがよく韓国アニメーションに対して持つ偏見、主に児童およびファミリー層の観客が見るのに合わせられた水準だろうという先入観を、果敢に破る。 そのような希少性のある挑戦は、当然点を取って入らなければならない。 ただ停滞したまま限られた需要と観客集団に経路依存性が激しかった、国内劇場用アニメ市場に新しい扉を開けようとする本作品の試みが、以後どのような評価で残るのかも興味深い鑑賞ポイントだ。

 

そのように冒険的な試みなので、すべてが満足できるはずはない。 どうせなら原作を脚色したのではなく、オリジナルシナリオの創作に挑戦していたならという残念さ、構成面で(封切りのためにランニングタイムを1時間以上にしなければならない事情のため)感性的な短編を手足をぎゅっと握って無理に引き伸ばしたような構成な問題も指摘することができる。 ウェブドラマと同じ形で配信公開されたバージョンが原作の半分強の分量の脚色にとどまり、人物の後日談をもっと見たかった人たちには残念な気持ちを残したが、特に新しく追加された分量はない。 それでイ・ギョンとスイの別れの触媒になった「ウンジ」のキャラクターが簡単にしか紹介されていない点が残念ではある。

 

それでも「あの夏」の限界は、ひとまず越えてもよさそうだ。 その後、さらに多くの期待値と高まる目線については、後続の作業に渡してもいいのではないかと、なんとなく寛大になる気持ちだ。 それだけKコンテンツブームの中で、十分潜在力のあるアニメーションジャンルがもう少し注目されることを願うためだろう。そのような余韻の中で、念入りに2Dイメージで再現された当時の感興と完全に化学的に結合を成す(ソヌ・ジョンアやMeaningful Stoneキム・ウィドル、JUNGWOOなど)優れた陣容のインディーズ女性ミュージシャンたちの曲調がますます耳元に漂う。


物語は10代のセクシュアルマイノリティカップルが主人公だが、ラブストーリーの構成は非常にありふれた恋愛物語だ。 ゆえにクィア素材をもう少し濃く盛り込むことを望む人なら多少残念かもしれないが(ウェブドラマの水準で適度に精製された、悪く言えば「ファンシー化」されたかのように)異性愛者でも共感できるかすかな昔の恋の影を、久しぶりにまともに感じることができる。


あの頃、私が好きだった少女は元気に暮らしているだろうか? そんな風に気になるが、どうしても埋めておいた秘密の感性が、それこそ夏の日花火のように爆発する、長く待っていた嬉しいお客さんのような作品だ。

 

<作品情報>

「あの夏 The Summer」

2023年/韓国/成長ロマンス

2023年6月7日公開 :61分┃12歳観覧可

監督:ハン・ジウォン

声の出演:ユン·アヨン(イ・ギョン役)、ソン・アリム(スイ役)、イ・ダスル(ウンジ役)

原作:チェ・ウニョン「あの夏」 (短編集「わたしに無害なひと」収録)

音楽:イ・スビン

企画:LAFTEL

製作:RED DOG CULTURE HOUSE

共同提供:LAFTEL・RED DOG CULTURE HOUSE・ソウル産業振興院(SBA)

配給 パンシネマ(株)

 

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「唯二」...韓国のネット用語で「ただ2人だけ」という意味で使われる。


「あの夏」の原作は「わたしに無害なひと」(亜紀書房)のタイトルで邦訳されているチェ・ウニョンの短編集に収録されており、韓国では第8回若い作家賞を受賞しています。


個人的には、文章を書いた人が「(韓国では)アニメは基本的に子供のものと見られている」」ことを「残念なもの」として書いているのに、なん小説原作の今作が「軽い」ウェブトゥーンやライトノベル原作ものとは次元が違うクィア題材作品であるみたいな言い方をしているのはちょっと気にはなりました。ウェブトゥーンやラノベのような娯楽的なクィア作品があってもいいはずだし、個々の内容によって判断されるべきでジャンルによる「次元の違い」はないはずです。漫画やラノベのようなエンタメ的な表現手法や媒体を「文学・芸術」より下に置くような価値観自体が「アニメ」というエンタメ手法の軽視にも繋がる気はしますので...