サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】インタビュー:CY8ER「アイドルはやり甲斐が全然違う」

【idology訳】インタビュー:CY8ER「アイドルはやり甲斐が全然違う」

ミミョウ

by on 2018/09/26

http://idology.kr/11316

 

今年9月16日、弘大ステイラウンジで日本のアイドルCY8ERが初の来韓単独ライブを行った。 CY8ERはBiS、アキシブprojectなどを経てきた苺りなはむを中心に小犬丸ぽち・まひろなどをメインとしている。現在、りなはむが代表を務める"いちごスタイル(Icigo Style)"所属。 2015年に前身のBPM15Qから始まり、future drum'n'baseを中心に強烈なEDMサウンドと夢想的で未来的なビジュアルを披露している。

 


16日の単独公演で、CY8ERはコメントもほとんどせず90分をひた走った。 緊張感を高めるビートと手ごわい感性の「ばいばい。」と「手と手」が最ものんびりとした時間だったといえるほど、絶え間なく猛烈なライブを続けてきた。 「CY8ERのステージ」の特徴といえば、ドロップに当たる部分はEDM的なグルーヴを誘導し、ボーカルパートではメンバーが観客に非常に近づいたりする点だった。 目と目をあわせる、手を握るなどの"ファンサービス"というより、観客を扇動して導くロッカーの態度に近かった。 長身のダイナミックさを生かすアンナ(藤城アンナ)と激情的な動作のやみい(病夢やみい)が最後に合流したメンバーという点も、CY8ERが演出しようとする舞台がどういうものかという意図をうかがわせる部分だった。


CY8ERは「世界を騒がすガチマジアイドル」というキャッチフレーズのように、驚くべき事件を起こす独特な存在だ。 ファンとの"ハグ会"に放射能防護服を着用し、大きな話題を呼んだこともある。 それが単なるノイズマーケティングとは思えないのは、彼らがチーム結成から全ての意思決定までメンバーの夢と意志で成り立っている一種の"インディーズアイドル"だからだ。


りなはむはこれを「人の言う通りにやる人が一人もいないグループ」と表現する。 「アイドル好きしか知らない感覚」を追いかけてアイドルをしているが、「大人の敷いたレールを走るアイドル」にはなりたくないというCY8ER横浜アリーナに立つという夢に向かい、全てのメンバーとスタッフが一緒に作ってきているという。 暗い面もあるアイドルの世界で自分たちの野望で動いているCY8ERに、16日のライブ直前に少しだけ会うことができた。 このユニークなグループが生きていく方法とアイドルの可能性について聞いてみた。


ミミョウ:昨日"チァンホラン(家の中の虎)祭り(イタフェス)"の合同ライブで初めて韓国のステージに立ちました。感想が気になります。


ましろ:すごく楽しかった。 熱かったです。


ぽち:韓国では初めてライブをしましたが、初めてとは思えないほど韓国の方々と日本のファンが一緒に楽しむ雰囲気だったのでよかった。

 

ましろ:近いところで香港や台湾からもたくさん訪ねてきてくれました。


ミミョウ:最近、プロデューサーの中田ヤスタカ氏とコラボしたりしましたが。


りなはむ:私のソロ活動で中田さんの作品にフィーチャリングしました。1番好きなトラックメーカーの1人とコラボ出来てすごく嬉しかった。 最近一緒にイベントに出演したりすることがあるのでとても楽しいです。多くの国のファンが知ってくださった点も嬉しい。


ミミョウ:りなはむ氏が所属事務所の代表をしていて、様々な決定を直接下すと聞いている。 所属事務所が別にある他のアイドルに比べて大変だったり特別に楽しいことがありますか?


りなはむ:最初は何もない状態でやっていくのは大変でしたが、「こういうことはやっちゃダメ」という制約がないので、メンバー5人で集まって悩んだり、面白い事をしてだんだん発展していけるのがとても楽しいです。


ミミョウ:「手と手」「はくちゅーむ」などを見ると、曲もよくコンセプトやビジュアルも独特です。こういう部分は全部代表が決めるんでしょうか。


りなはむ:歌詞は私が書いたんですが、白昼夢という夢を見た内容だった。 夢で韓国へ行ったので韓国に行ってみたいと思ったら実現しました。台湾は前回行ったから今度はシンガポールへ行きたい(笑)

[*注:「はくちゅーむ」には台湾・韓国・シンガポールを訪れるという内容が盛り込まれている。]


ミミョウ:他にも決定するべき事は多いですが、衣装は?


りなはむ:今回の衣装はBalmungというブランドで作られていますが、各自の好きな部分やリクエストを受けて個々人の意見を込めてそれぞれ違う姿で制作しました。


ミミョウ:Yunomiというプロデューサーとずっと一緒に仕事をされていますが、きっかけはなんでしょうか。


りなはむCY8ERの前身であるBPM15Qというユニット時代に一緒に活動したメンバーが、以前から音楽作業を行っていたプロデューサーでした。BPM15Qを私たちで作ろうとしたときに一緒にやろうと言って(今まで続いてきた)。


「ただヤバい事をやってやろう」


ミミョウ:聞いてもいいかどうか分からないんですが、武道館で大変なことがあったと聞きました。どこからそんな発想をしたんでしょう?


*注:様々なアイドルが出演する〈武道館アイドル博 2017〉イベントでCY8ERは「ハグ会」を開催した。 この時、CY8ERは綿をいっぱいに詰めた放射能防護服と防毒マスクを着用して登場した。


アンナ:「大変なこと」と言うとものすごく聞こえるね(笑)


りなはむ:思いつきが全てです。武道館でライブをするんだと思ってたんですけど、(ライブとは)違うというので、「どうしよう?」ってなって、何か面白いことをしようと思った。 以前から防護服ハグ会をしてみたいと話していた事があって、「これ本当にやれるんじゃない?」って。


ましろ:どうせ特典会しかできないんなら、びっくりするような特典会の方が楽しいだろうと思って。実際(ファンたちの)反応としては何度も来てくれました(笑)武道館を一周するほど並んで何回も...


りなはむ:熱気がすごかった。


ミミョウ:もしかして、武道館でライブが出来ると思っていたのができなかったから腹が立ってそうなったとか?(笑)

 

アンナ:怒ってはいないです(笑)


りなはむ:ただ「ヤバい事をやってやろう」っていう。


ましろ:お祭りみたいに面白いことをしようとしてみたんです。


ミミョウ:人を驚かせてハプニングを起こすことに興味がありますか。


ましろ:あります。渋谷の街中で何かをするとか、ゲリラ的なことが好きですね。


りなはむ:ファンたちも(私たちがが)何か騒ぎを起こして、それを一緒に楽しむことができることを期待していると思います。それでいつも何をやれば皆で楽しめるかな、CY8ERを知ってもらえるかなと(思って)。


ミミョウ:ファンとの相性が良いようですね。そんな感じがキャッチフレーズにも込められているようですが、「世界を騒がす」の次の「サイバーテロアイドル」という表現が、最近「ガチマジアイドル」に変わりましたね。変えた理由がありますか?


ましろ:「サイバーテロ」を私たちはかなり明るい意味でつけたつもりですが、メディアなどに出るときは語感が悪い方に受け取られる事がありました。そういう意図ではなく「世の中を騒がせる」「世界を揺さぶる」といった楽しい感じで使おうとしたんですが。だから変えようということになりました。


ミミョウ:もしかしてK-POPにも興味ありますか?好きなアーティストとか。


ましろ:好きです。BTSとかBLACKPINKとか。


アンナ:私はREDVELVETが好きです。あと「新少年(セソニョン)」というバンドも好きです。KPOPではないけど(笑)もともとロックが好きで日本で日本のバンドを見に行ったんですけど、(セソニョンが)出ていたのでファンになりました。


CY8ERに入って良かったと思うことばかりです」


ミミョウ:りなはむ氏の過去のインタビューで「大人に敷かれたレールを走るアイドルになりたくない」という言葉を見た。 もう少し具体的にどのような意味なのか気になります。


りなはむ:「自分たちでやりたいことをやるグループをやろう」というか。 人の言いなりになる人が一人もいないグループだし、普通はオーディションを受けに来たメンバー達が初めて会ってグループに入るケースが多いけど、CY8ERはすべてのメンバーが互いに縁があって一緒にやりたいメンバーたちと始めたんです。ちょっとバンドみたいな?


ましろ:確かにバンドみたいなところはあるね。


アンナ:大人がお金を出すから、それに従わなくちゃいけないというのがあるんですよね。(反面自分たちは)りなはむが最初から自分でやって来たから、私たちだけでやっていける。 日本にはそういう事で悪事を働く人たちもいます。幼い女の子をだまして変なことするとか。 そんなことは絶対に駄目だって事です。


ミミョウ:ちょっと重なるのは、最初にアイドルになりたかったのはミニモニ。に憧れたからだと聞きました。今考えると、ミニモニ。も「大人の敷いたレールの上のアイドル」とはかなり違っているようだ。 どうやって違うところを作って行きたいんでしょうか。


りなはむ:幼稚園のときの夢でしたね。「ミニモニになりたい!」大きくなってその夢は忘れたりしましたが、もう一度アイドルになろうとしたときはBiSに入ることになりました。 その後いろいろなアイドルを経ながら、気がついたらこんな感じのアイドルになってて(笑)他にはアイドル自身も、なんて言うか、何か... 何ていうのかな?難しいな(笑)ダンスが上手だったり歌が上手だったりすることも大切だけど、そういう事じゃなくて、なんていうか... アイドルを好きな人にしかわからない感覚というのかな? そういうところがアイドルの一番好きな部分で。言葉では説明しにくいんだけど、CY8ERではそれをきちんと表現したいと思ってます。


ミミョウCY8ERに入る前は他のアイドルグループにいたメンバーが多いですよね。CY8ERに入ってよかったと感じた最も満足できる点は?


ましろ:逆に、CY8ERに来てよかったという点ばかりですね。普通のアイドルはとはまず、スタッフとアイドルの関係から違います。私たちの場合はスタッフも「一つのグループ」で、「皆がメンバー」というか。 何と言ったらいいかな?


りなはむ:チームみたいな感じ。


ましろ:本当に皆が一緒に考えて一緒に作っていく。 仕事の仕方が全く違うんです。これまでなら、たとえばセンターになるために握手をたくさんしたりチェキ(注:ファンと一緒に撮ったりするポラロイド写真)を多く撮ると「この子をセンターにしましょう」みたいな感じが多かった。歌のパート分けもそうだし、マイクをもらうのかどうかも最初から決まってます。(CY8ERは)そういう感じではなく、りなはむと歌詞の配分を考える時も「この子はここが似合うから」という風に決めます。よりうまくいくためにも普通はメンバーの間で競争をさせたりするんですが。私たちは...


りなはむ:あまり競争したくはない。


ましろ:そうなんです。力を合わせて相乗効果を作っていこうというのが私たちだと思う。 圧倒的な団結力というか、絆が本当に違うと思う。


りなはむ:みんな、夢が一つしかないです。横浜アリーナでライブをするという夢です。「それ一つだけ!」と言って一緒に頑張るようになります。


ミミョウ:昨年5月に合流したアンナさんとやみいさんは後からの合流に負担を感じなかったですか。


アンナ:負担というより、元々のメンバーたちは外見や声が可愛い方だとしたら私は「かっこいい」系じゃないかと思ってました。それで一つのグループとしてイメージが描けるのか不安だった。 でも、一回ライブをしてみたらきっと大丈夫だと思って。(不安より)楽しさの方がずっと大きくて、自分の居場所を見つけたという気がしました。


やみい:不安はいっぱいでした(笑)アイドルグループに所属するのは初めてなので、ダンスも最初から始めなきゃならなかったし。足を引っ張らないように絶えず合わせて努力するのが大変だった。 個人練習もかなりやりました。


ミミョウ:りなはむ氏とぽち氏はDJとしても活動していると伺ってます。CY8ER以外にもDJとして韓国のパーティーに来たりする意向はないでしょうか。


ぽち:行きたいですね。韓国はBLACKPINKみたいに素敵な曲が多くて、踊ったり音楽が好きな人もとても多いみたいなので。私のDJ−ingもダンスミュージックが中心で、普通にクラブでも使える方なので挑戦してみたい。


ミミョウ:日本国内でもDJとして遠征する事はよくあるんでしょうか。


ぽち:日本内ではあります。名古屋・北海道・大阪とか色んな所に行ったことがあります。


ミミョウ:もっと聞きたいことは多いんですが、時間の関係で仕上げをしなければならない。 最後に韓国のファンに一言伝えるとしたら?


全員:...


アンナ:「一言」というのは難しいですね。伝えたいことが多くて(笑)


りなはむ:今日のライブもとても楽しみですけど、多分今日は仕事で来られなかったりする方たちもいそうですよね。だからって日本に遠征に来るのも簡単ではなさそうですし。でも、CY8ER横浜アリーナの夢が実現する日にはぜひ来てほしいです(笑)


アンナ:そうだね。


インタビュー:ミミョウ


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韓国のアイドルメディアidologyによる日本の独立系アイドルCY8ERのインタビュー記事でした。

普段は韓国のアイドルメインに評論やレビューをされているメディアなので珍しいと思い、前から訳そうと思っていた記事ですが、色々タイミング的な事もあり今訳してみました。日本のアイドルの多分日本語でのインタビューが韓国語に訳されたものを、また日本語に訳すという笑


りなはむさんの言う「アイドル好きな人にしかわからない感覚」という表現がなんだかわかるなあと思いました。

【お知らせ】Real SoundでKPOPと海外アーティスト・事務所ごえコラボなどについての記事を書きました

Real SoundさんでKPOPとコラボレーションについての記事を色々書きました。

欧米圏でのコラボ・それ以外の文化圏でのコラボ・事務所ごえコラボとSM STATIONについての記事です。

 

 

 

 

防弾少年団のファンドムについてのコメント取材を受けた記事もありました。

 

 

こちらは記事を自分で書いたわけではなく、特にギャラも出なムニャムニャですが、よかったらご参照ください。

(追記:前はギャラ出なかったんですが、今回からコメントでも出るようになりました)

 

【brunch訳】宮脇咲良、人格の到着

【brunch訳】宮脇咲良、人格の到着

brunch × BIG ISSUE

by MC ワナビー

2018.10.08

https://brunch.co.kr/@mcwannabe/189

 

KPOPが日本のアイドル産業から思ったより多くのものを借りてきていたことに気がついた。 アジアの音楽界の大勢はKPOPであり、JPOPはガラパゴスになり、日本のアイドルの実力もそうであるという評判にもかかわらず、だ。

 

◆TWICE時代以後のKPOPアイドル産業の特徴は、ファンドム市場の強化とファンドムとの擬似的人格的疎通、アイドルのキャラクター商品化だ。 この全ての傾向は、日本のアイドル産業で一足早くお目見えした。 AKBグループを代表する総選挙システムはオタクたちの火力で勝負し、AKBのスローガン「会えるアイドル」は、ファンとの対面での疎通を意味する。 ファンに向けられたモバイル放送SHOWROOM」は韓国の「Vlive」、ファンと歓談する「握手会」は「ファンサイン会」に相当する。アルバムの購入者をファンサイン会に当選させる韓国企画会社の販促システム自体が、アルバム購買がそのまま握手会チケット購買になるAKBシステムと同じだ。 一昨年リリースされKPOPのトレンドとなった<プロデュース>シリーズも、10年前に始まったAKB総選挙をベンチマーキングしたものだ。このような事実を改めて思い、思ったよりも放送を興味深く見守った。 韓国のアイドルと日本のアイドルは同じアイドルだが、職種が異なる。 韓国のアイドルがステージに特化したパフォーマーなら、日本のアイドルはファンドムとのコミュニケーションを専門とするエンターテイナーだ。 KPOP産業は過去に構築されたトレーニングシステムに加えて、ファンドムの役割が増大する状況へと転じている。 こうした意味で日本のアイドルが抱く文化的特性は興味深く、彼らだけのメリットがあると認められる。 なかでも断然印象的なのは宮脇咲良だ。

 

咲良はAKBグループのエースで<プロデュース48>のテーマ曲「ネッコヤ」でセンターに選ばれ、内政論争を呼んだ。 この点だけでも話題の中心になったが、そのような外的要素より目を引くのは実に豊かな魅力だ。 宮脇咲良の魅力は「ギャップ萌え」、意外性と言われる。 咲良は、日本列島の市街地に咲いた桜の花のようなルックスで登場したが、放送が進むにつれておっちょこちょいな素顔が露出してきた。 高慢に見えるが気さくな行動、意欲には溢れているが粗い実力、服装に無関心な性格、顔をむやみに動かす表情が新鮮さと親近感を引き出した。 このようにイメージとイメージの間のギャップは「咲良の魅力」だが、これだけでは十分な説明ではない。 咲良は単に意外性のあるキャラクターではない。 意外な要素が非常に多様で、それらが循環し続け、キャラクター性が交代し続ける。 高慢そうな美女だと思っていたのに意外とひょうきんで、そうかと思えばいつの間にか雰囲気のあるビジュアルでカメラを見ていて、そこに気を取られているとまたおふざけに戻ったりする。 それに、そのルックスもじっと見れば美しいという形容を突き抜けた余白がある。イメージの対称点(ファンの表現としては「宮脇さん」と「クラ」)を行き来しながら、新鮮さと馴染みある姿を何度も繰り返して与えるのが咲良の真価であり、咲良は自分の魅力ある要素を意識して本能的な印象を与える。

 

咲良のキャラクターはキャラクターの概念を超えており、キャラクターという対象化された概念では完全に収束できない異質的要素で構成されている。 美女だが友人のいない「아사(アウトサイダー)」で、アイドルなのに徹夜でゲームをする「オタク」で、モデルのようなセルカを撮るが何千円かの「バックパック」と「サンダル」を擦りきれるまで使う。 これらのひとつひとつはよく定型化されているキャラクターであり、そのように相反する要素が一つになったキャラクターも馴染みがなくはない。「オヤジ女子」「工学部の美女」「美女オタク」がそれだ。 しかし咲良の場合、それらが作られたイメージを超えて身体に染みついている性格だと確信させる状況がキャラクターを突きつけるほどに続出し、キャラクター以上のイメージを与え、類型化されたキャラクター性を脱却する人格的要素が、キャラクターと衝突すると同時に共存する。 時折見える深い考え、社会に関する真剣な発言、決断に身を置く現実に関する省察などだ。    

 

咲良は文章がうまい。 勉強を何故しなければならないのかと尋ねるファンに「学校での勉強は、自ら目標を立てて成し遂げるために努力する過程の練習」と回答し、ゲームに対する偏見には「私たちはあなたが他のことをする時間にゲームをするだけで、それが世界を楽しく生きる方法だ」という。 あるインタビューでは政治の大切さを語り、平和憲法を改正しようとする日本の政治界の動向を心配し、「咲良の女性力はどう?」と尋ねるファンに対し「家事は女性だけじゃなくて人間ならだれもしなければならないことで、人間力の問題だ」と話した。 意外だと感じられるほど正直に心を開いて見せる時もある。 咲良はいつももっと大きなスターになることを願っていて、より大きな機会を得ることを願っている野心家だ。 しかし、AKBの墜落傾向と自分の不透明な将来に自ら恥じ入るとともに涙し、アイドルとしての可能性を抑圧する総選挙システムに幻滅感を表わしたこともある。 これは性的な商品として対象になる事しか考えられないという日本のアイドルに対する通念では理解できない、所信がある自由な発言だ。 むしろ私たちが暮らす社会で、自らが抱く欲望と悲しみを語る韓国のアイドルはなかなか目にする事はできない。

 

咲良のキャラクターはひとりの人間の外面と内面、意識と感情、個人的なレベルと社会的なレベル、そして内装部分と飾られていない部分の集合体であり、その中心には自分を取り巻く現実を主導しようとする主体性がある。 これはひとつの系統で画一化されたキャラクターを超えた「人格」と呼ぶに値する有機体だ。 咲良は美しくてダンスのうまいアイドルではなく、興味深く複雑な人格体として韓国のアイドル市場にやって来た。 きれいだが素朴で、欲が多いが足りておらず、賢く、突拍子もないが真摯で、オタクだが社会性を備えていて、このすべての要素が共存するのが宮脇咲良という人だ。 だから彼女に関心を持つようになった人々が知るほどに魅力を感じ、人間的な好感を持つようになったと告白するのだ。 咲良は韓国の視聴者だけが投票に参加した<プロデュース48>で、最も強力なファンドムを結集させた。

 

これは根本的に韓国と日本のシステムの違いから始まる。 韓国のアイドルが1から10まで企画会社が管理する専門的な人材だとしたら、日本のアイドルはトレーニングもマネージメントも受けられないままそれぞれが躍進する自営業者だ。 日本のアイドル産業は、自国のゲームやコミックス産業のように対象に向けた収集欲求や愛着の感情に浸ったオタクを消費者とするキャラクター産業だ。 木の葉の里、ポケモンワールドのような数百人のメンバーから成るアイドルワールドがあり、そこに投げ出されたアイドル個々人は自分のパーソナリティーをキャラクターにして販促活動を行う。 そのため、企画会社が決めた類型化されたキャラクター(「マッネ(年長なのに末っ子っぽい)」「実勢(真の実力者)」「ガールクラッシュ」等)がすべての韓国アイドルに比べ、はるかに多彩なキャラクターと敍事や関係性を構築する。(職業活動において公私の境界を崩すという点で、パーソナリティーの商品化の危険要素はまた別にある)AKBファンドムの弱小な韓国で制作された放送で、縁故もなく実力もない日本人練習生たちが韓国の練習生をリードする「コアファンドム」を手にした理由だった。 もちろん、彼女達は文化的な違いのために韓国ではなかなかお目にかかれないキャラクターであり、希少価値があり、すでにデビューした芸能人なのでこれまで活動してきた歴史が用意されているという有利さもあった。 咲良はこのような土台の上で、個人の力量によって新しいアイドルの典型を見せた。

 

韓国には「パーソナリティー」を表わして活動するアイドルは少ない。 企画会社のマネージメント体系が緩かった00年代には、そのような事例が見られた。 代表的なのが、官能美のアイコンでありながら私的な恥部もいとわず吐き出すイヒョリだった。 マネージメントシステムが高度化した10年代に入り、アイドルのSNS活動と個人的な発言は厳しく統制されるようになった。 10年代半ば以降はソーシャルメディアを通じた個人放送が本格化し、ファンドムとの接触が増大してアイドル産業の傾向が変わり、一方向に演出されるプライベートなコミュニケーションのファンタジーとキャラクター性を販売している。 一方、女性アイドルの中にはファンミーティングやインタビューでの断片発言やインスタグラムで「いいね」を押すなどの破片的形式ではあるが、自身のアイデンティティや社会問題を迂回的に発言するケースが少しずつ増えている。 咲良はこうした過渡期に韓国に到着した「外来種」だ。 自分の活動を直接企画し活発に自分を表現していた彼女が、しっかりしたマネージメントシステムでどのような冒険をしてどのように進化できるかは、興味深いだけでなくさらに大きな示唆を与えられるポイントだ。     

 

これまで韓国の女性芸能人は、女性向けコンテンツの不足からいくつかの対象化された役割だけしか得ることができなかった。数年前から女性を中心とするコンテンツ、新しい女性像の必要性が唱えられているが、制約された役割から向かい側にある席へと脱走するやり方で実践され(注:おそらくミラーリングの事)役割の幅が逆に限定される可能性があるという落とし穴がある。 咲良はこの点で、韓国の大衆文化界の女性キャラクターに多様性を加えることができる。 好きな趣味に没頭し、予期せぬ人気に浮かれて自慢し、世の中の大きな問題について発言し、自らの欲と悩みを抱えており、下手だから失敗もする。 「女神」でも「妹」でも「強いお姉さん」でも「女戦士」でもなく、何の物差しもなく自ら世の中のことを感じながら生きてきた人格体だ。 女性にとって「ロールモデル」や「ワナビー」にはなれないが、自分より出来ないから可愛く思えたり、自分より良くできるから感心したり、自分と同じように世の中に疲れきっている、仲間のような存在だ。 この点が、咲良が自分と同年代の女性ファンたちからも愛される理由だろう。 もしかしたら韓国文化界に足りなかったのは、このように温厚で豊かな人格としての女性だったのかも知れない。

 

AKB48は購買力を持つ中高年独身男性の遊び場へと転落した。 日本は女性を性商品化する悪習が強い国だけでなく、AKBメンバーたちは年老いた男性たちの需要に合わせて自らを商品化しているのかも知れない。 だが、悪い構造の中にあるからといって、そこで生きていく人々の尊厳まで否定されるわけにはいかない。 構造から離れ、主体として立つ機会のない人々が構造を乗り越えていくために抱く決意はそれ自体で主体性を構成できるし、時には構造の性格に反するポジティブさをもたらすこともある。 たとえば<プロデュース48>で最終合格した本田仁美のように、「今年は勝負の年だ。 私はもっと高いところに行きたいから助けてほしい」とファンに要請するようなレベルの能動性を再現する女性キャラクターを、韓国の文化産業ではあまり見た覚えがない。 同様に、システムの内側にある一方でシステムを内省的に見極め、問題意識を持つこともできる。 構造に対する真の省察は、構造の影響力を認知しながらも個人が抱く可能性を肯定し、構造と個人の間取りを精密に観察することにかかっている。 個人をすなわち構造と同一視する二分法は、むしろ構造の作用に関するそれ以上の事由を放棄する形式的な通念だ。     

 

KPOPとREDVELVETのアイリーンが好きな人。日本のアイドルとして育ってきたが、その中の限界と不条理に煩悶し、人生を変えるために憧れていたKPOPの国にやってきたアイドル。 宮脇咲良が挑戦するアイドル人生の第2幕を、愛情のこもった視線で見なければならない理由だ。

 

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아사=アウトサイダー(아웃 사이더)の略語で「友達がいない人」という意味。

 

brunchというライターズコミュニティで見かけた文章です。日本のアイドルを推す(?)韓国の人の文章としてとても興味深く読みました。悪とされるシステムの中にいながらも内省的にシステムを省みることはできるという話、一部の日本の人たちよりもある意味冷静で適切に見てるんじゃないかと思いました。


日本の「プロデュース48」関連の記事で日本のアイドルシステムがKPOPに負けるというか、これからはKPOP的価値観が入ってくるのではないかというような記事を見かけて、率直に違和感がありました。何故なら、韓国のアイドル業界は「実力」や「楽曲のクオリティ」という面で要求される事が日本のアイドルよりも高い割に、結局のところ消費されているコアの部分は日本のアイドルと同じであると、10年近くKPOPのファンドムに身を置いて実感してきていたからです。KPOPのトップグループはダンスや歌のクオリティが高い事が大前提なので、逆にそれがバイアスというか隠れ蓑になって「アイドルファンが本当はアイドルをどのような理由で好きになって推すようになるのか」という事が特にアイドルオタではない人から見たら曖昧に見えるのかもしれませんが、韓国では特別にグループ内で歌やダンスの実力のあるメンバーが人気というわけでもなく、結局のところ全人格的に消費されているのは「ファンとのコミュニケーションがメイン」とこの文章で言われている日本のアイドルと変わらないと思います。男女問わず歌やダンスの激しいトレーニングを積んだ上で更に日本のアイドルと同様のファンへの対応やキャラクター消費されることを望まれるわけで、ある意味日本より過酷だと思います。しかもその要求されるキャラクターの幅も社会的な要素(社会的に強く要求されるアイドル像)が加わって来る分日本よりはるかに狭く感じます。


特にプロデュースシリーズはそういう面がわかりやすく露呈したプログラムで、実際過去のシリーズを見ても必ずしも実力順にメンバーが決まったわけではありません。そもそも実力順で決めるなら指導するトレーナーだけで決めればいいことで、国民投票などというシステムは不要なはずです。そして一般のファンがアイドルを推す時は、技能的な実力ももちろん魅力のうちではありますがそれ以外のプラスアルファ部分の方が多分に作用すると思います。そのプラスアルファの部分というのはまさに日本のアイドル(というか特にAKB)が特化して見せようとしている部分であり、プロデュース48は韓国の練習生に比べれば明らかに技能的な面では劣るのがわかる(そもそもトレーニング自体受けていないメンバーもいましたし)日本のアイドルが参戦することによってその事実がよりはっきりしたのではないでしょうか。

最終的な結果を見ても単純な実力通りというわけではなかったと思いますし、実力どおりなら早期に脱落していたであろうメンバーが結構後の方まで残っていたりして、やはりアイドルというのは技能以外にキャラクターや物語や関係性等、様々な複雑な魅力の要素が絡み合った上で成り立っているものだという事がよりよくわかったんじゃないかと思います。韓国の国民プロデューサー達の発言などを見てもそれははっきりしていましたし、結局「アイドルを好きになって応援する」という動機の根本の部分は、日本も韓国も変わらないという事だと思います。

ファンがファン以外の外部へのアピールためにアイドルの持っている技能を「利用」する事はあると思いますが(ダンスや歌が素晴らしいとか作詞作曲ができるとか)、実のところそのアイドルを熱狂的に好きになって応援する理由としては、ファンドムを名乗るファンのレベルなら単純に楽曲やパフォーマンスが好きという以上の個人的な何かが必ずあるはずです。

(そこに自覚的ではないファンの人もいるかもしれませんが)

AKBより歌やダンスの実力があって曲もレベルが高いアイドルがAKBより売れてないとか、KPOP業界でも歌やダンスがトップレベルに上手くて良い曲も書けるのに、トップクラスのアイドルほどは売れないという事実もあると思いますし。逆に技能的に全てが一番ではなくて足りない部分が多くあっても、強大なファンドムを作ることは出来るでしょう。それがアイドルの興味深く面白いところであり、コアの部分ではないかと思うのです。

 

この文章は、そこのところの何故アイドルファンがアイドルを好きになって応援しようと思うのかという事がよく表れている気がして、日本人だけど韓国のアイドルを好きで応援している自分とも表裏一体のように重なるところがある気がしました。筆者の方は韓国のアイドルと日本のアイドルの違いを力説しているけど、それが逆に根本の消費のされ方は同じなのではないかと思わせるというのが面白いというか、色々難しい言葉で理論的に説明しているけど結局、宮脇咲良自身の事がめっちゃ好きなんですねというのが伝わって来るというか。宮脇咲良さんの事ほとんど存じてませんでしたが、この文章を読んでちょっと好きになってきちゃいました。


しかし気になったのは「韓国のアイドルが1から10まで企画会社が管理する専門的な人材だとしたら、日本のアイドルはトレーニングもマネージメントも受けられないままそれぞれが躍進する自営業者だ。」という認識です。AKB以外のメジャーアイドルでは韓国のアイドルとまではいかないかもしれないけど、トレーニングやマネージメントをきちんと受けているアイドルもいるので(AKBも個人の所属事務所次第ではないのかな?)「日本のアイドル」じゃなくてせめて「AKBグループのアイドル」にしておいて欲しいなとおもいました。

 

追記:この文章を書かれたMC wannabeさんはツイッターをやってらっしゃいます。IZONE(というか宮脇さん)についての他に色々アイドルについてもツイートされてます。→@mcwannabee

【質問箱】海外(英語圏)のKPOPファンについて

またもやご質問も答えも長いシリーズのご質問が来ましたのでここで回答しました。

 

Kポ界隈の英語圏ペン達がアジア人が好きなのにもかかわらず英語圏の価値観・英語至上主義のように見えるのが気になります。


最近、マスターが英語圏ペンにホワイトウォッシングと言われて怒っているのをよく見かけます。

そのことについては泡沫さんも以前書いてらっしゃった気がするのですが、写真はきれいに加工しようと思うとどうしても明度が上がってしまったり、それ以前に撮る際にホワイトバランスの調整を失敗したりだとか照明のあたり具合で普段の肌の色とは全く違った色になってしまうことは多々あると思うんです。


私自身、色黒のアイドルが好きなので韓国の美白至上主義にムカつくことは多々あります。色黒のアイドルが白くされてしまうのはいい事とは思えません。

ですがフォトショップも触ったことがなさそうな英語圏ペンが言ってることは、脊髄反射で"ホワイトウォッシング"と言う言葉を出している、状況を考慮せず自分たちの文化圏で生まれた判断基準・価値観を無理やり当てはめているように見えるんです。


それ以外にも英語にないニュアンスの韓国語を無理やり英語に当てはめて訳した文章だけを見てメンバーを非難したり(他の国の言葉には英語にない表現もあるというのがすっぽり抜けているように見えます)

日本や中国やタイやベトナムなどのアジア圏ペンは自力で翻訳したりしてるのに、英語圏ペンは公式にも他言語圏ペンにも当然の権利だと言わんばかりにeng plzと要求したりということをよく見かけます。

英語圏が世界の基準なのだという価値観が染み付いているように見えるんです。

どうしてこういう事が起こるんでしょうか?やはり世界では英語を喋る人の割合が多いからこんなふうになるんですかね?

アジアの文化を好きになっておきながら西洋的価値観でジャッジするのをおかしく思うことはないんかい、と考えてしまいます。

答えというより泡沫さんの意見が聞きたいです…よろしくお願いします。


https://odaibako.net/detail/request/2415ee0608e9411b91871db08eadb1fb

 


英語圏といっても欧米圏だけではなくアジアも中南米も含まれるでしょうし、ひとくくりにはできないんじゃないかとは思います。欧米圏でもKPOPのファンは有色系の人種が多いようですが、人種も様々でしょう。美の価値観が似ているように見える日本と韓国と中国ですら実際は結構違うように思いますし。

 

ホワイトウォッシングについては過去に関連記事を訳した時に結構色々書きました。

個人的にはアジア人はアジア系の肌の事を「黄色い」と表現する事は少ないように思う(日中韓に限って言えば象牙色というかアイボリーとかベージュに近いイメージでは)ので、肌の色、しかもアジア人以外から見たyellowという基準にアジア人のアイデンティティを求める事自体に違和感があります。三原色白黒しかないくらい単純に世界を分けますねという。そもそもアジアも広いので、肌の色にもかなりバリエーションがありますし...他の人種もそうだと思いますが。アフリカ系や他のマイノリティと同様にあえて西洋の文化圏のアジア人が主張の手段として標榜するのはわかりますが、KPOPというそもそもアジアが主体の文化でもそれこそそういう「白人的な」価値観を持ち込む事自体が文化侵略なんでは...的な事は思います。芸能人の写真を権利者以外の他人が勝手にいいように修正してしまう事についての是非は、また別の問題じゃないかと思うので。


今はネットで世界中の情報が手に入る時代にはなりましたが、表層的に触れる事は簡単になった分逆に異文化というものがどういうものなのか、自分たちと歴史や文化的に大きな違いがある人間が同じ地球にいて当然だということを知らないし、考えた事もないという人たちもインターネット上にはたくさんいるんじゃないですかね。日本もそうかもしれませんが、海外に全くいったこともない人がインターネット上のみで好きになってファンを名乗れるというのがKPOPの特徴のひとつでもあると思います。ウェブ上に無料のコンテンツが溢れているので、全く現場に行かなくても課金もしなくてもファンの気分が味わえちゃいますよね。


それはさておき、日本にも「KPOPは好きだけど韓国には興味がない」とか「特定のグループは好きだけどKPOP自体には興味がない」という人がいるように、海外でも「自分が好きなアイドルが好きなのであって、その他の事は知らないしどうでもいい」という層もいるというだけではないでしょうか。そういう人たちは好きになったアイドルがたまたまアジア人だったけど、別にアジアに興味があるわけじゃないんだと思います。だから、その国の人たちがどういう意味でそういう言動や行動をとったのかという事を自国の価値観でしか測れないのでは。他の価値観を知らないし、そういうものがあるということ自体想像もした事がないんじゃないでしょうか。「なんでそうなるのか」の後に「行動原理が知りたい→調べてみよう」とはならずに「おかしい!直すべき!」という思考回路になってしまうのかな?

日本でも「日本では考えられない」というフレーズ、よく目にする気がしますが、同じではないけどこれに近いものがあるんじゃないかと思います。そういう人が盲目的に何かを好きになった場合(よく知らないけど好きというのはそういう側面もあると思います)何かがあったときに、一気に反転してレイシズム丸出しになったりするのが不思議ですが、最初から根本的な文化の違いを理解していないで勝手なイメージを自分の中で作っていて、しかもそれが自分の勝手なイメージだということすらわかっていなかったりするのが原因なのかもとは思います。

誰でも共感しうるような人間としての素の感情の部分やパフォーマンスだけを見て好きになるというのは素敵な事だと思いますが、個人的にはどのような職業であれ自分の生まれ育った環境の文化の影響を全く受けていない人間というのはいないと思いますから、特に全人格的に消費される事が多いアイドルの場合、生まれ育った場所の文化や慣習などを反映した行動が露出する可能性がいわゆる「アーティスト」よりは多いんじゃないかと思いますけど。

個人的には別に共感や同意をしなくても理解はできると思いますし、理解できなくても魅力があったり好きなものっていうのもあると思います。私自身もKPOPやその周辺文化に対して「は〜?全く理解できないし共感もできないな!でもたまらなく興味深いし面白いな!」と思う事はよくあります。


これと似たようなこと、アジアの文化が他の文化圏のファンと出会ったというケースとしては、多分日本のアニメやゲームと海外の二次元オタクの関係が近いのではないかと自分は思ってます。昔はなんでアニメのキャラクターの絵は金髪や茶髪で目が大きくて西洋的なのか・白人至上主義なのではというような非難と言うかツッコミがあったそうですが、現在ではジャパニーズスタイルのデフォルメが浸透して日本ぽさの特徴のひとつになり、それが西洋的だという人はほとんどいないと思います。髪や肌の色もナチュラルな人間にはありえない色のキャラクター多く出てきますし、キャラクターの人種配分についても以前の方が色々言われていたようですが、今日では「日本は人口の殆どが日本人だし、アジア系以外の人種も多くないのでそもそも他国向けに人種について配慮してキャラクターを作ってない」という事はオタク間ではある程度浸透しているようです。主人公の考え方やストーリー展開にしても欧米の価値観とはかなり違う事がありますが、これもある程度は文化的な差異として理解されてきていると思います。

日本のアニメやゲーム業界の意識が少しづつ変わっているのもあるとは思いますし、基本的には作り物のフィクションという点が大きいのかもしれませんが、そこに至るまでも何十年かかかっているようなので(現在進行形でもあるでしょう)ある程度の規模が出来て10年足らずのKPOPオタの世界でももっと時間が必要なのかもしれません。


言語的な事にしても「今どきどこの国のファンにもわかるように世界的にメジャー言語で供給するべき」というような考え方の人がいるのはどこのジャンルでも同じかもしれませんが、二次元の場合は「日本のコンテンツは基本的には国内向けにしか作ってない」という事は今は海外の二次オタの間ではある程度理解されていますし、だからこそ「こっちが勝手に好きになったので、好きな作品を広めるために」という考え方から海賊版ファンサブ(ファン翻訳)が発達して、やがて今のようにたくさん公式で翻訳版が出るようになったという歴史があるのかも。しかし海外展開を意識している訳ではなかった日本の二次元カルチャーとは違い、今のKPOPが最初から海外に売り出すことを目的としているなら、ファンサブから公式訳という似た流れはあるものの、英語圏向けコンテンツの不足に対して安易に「eng plz」と言い出す英語圏のファンが生まれるのは仕方ない面もあるのかもしれないとも思います。

(そういう思考回路自体は傲慢とは感じますが)


しかし英語はユーザー数が桁違いですし、英語で出た誤訳というかニュアンスの理解不足による誤解は広まるスピードも早い(でも訂正は広まりにくい)上に、英語訳を他の言語に又訳して更に誤解が広まって行きそうなので、そういう点ではノーチェックの事もあるファンサブが多いのは良し悪しかもしれないですね。二次元キャラと違って現実に生きている人間が対象なので。

(お前が言うなというオチ)

【質問箱】防弾少年団の国内人気規模・韓国内での人気グループ・YouTubeでの再生回数について

長いご質問が来てツイッターでは収まりきらないくらい長い回答になったので、またこちらで回答してみます。

 

泡沫さん初めましてグクペンのarmyです
ずっと疑問に思っていたことがあるので質問させていただきます
BTS の国内人気というものはどの程度なのでしょうか
先日渡韓した際多くの広告を見たものの韓国国内では世界で騒がれているほどでもないのかなと正直思いました
(勿論人気の高いグループであることは重々理解しております)

国内よりも海外人気が高いのかなと感じたという事です
現地の大学生と話す機会もありましたが日本人の学生の方がarmyが多かった気がします
BTS はやはり国内人気というよりも海外人気の高いKドルアーティストなのでしょうか?

韓国国内の人気グループ(個人も含めてくださって大丈夫です)のナムジャグループヨジャグループのトップ3(順位をつけるのはあまりいいことではないかもしれませんが…)を教えていただきたいです

 

私の中の勝手な考察ではペン達(army)の団結力(良くも悪くもな部分ですが)が他グルのペンに比べて高いのが彼らが圧倒的な人気があるように見える原因の1つかなと思ってはいます…
(youtubeの24時間再生回数など)
youtubeの記録を塗り替えましたが(一位だったTaylor SwiftのLook What You Made Me Do)
総合的な再生回数でいうとやはり圧倒的に数字では負けているなと思いました
(単純にIDOLとLWYMMDを比較しているのではなくBTSの今までのPVとTaylor Swiftの今までのPVの再生回数です。勿論動画が公開された日時を考えてもということです)
何となく燃え尽き症候群のような感じの印象を抱きました
このままのペースで再生されてもIDOLのPVはTaylor SwiftのLWYMMDの一年間での再生回数を超えるとは思えないです…
(一年間としたのはわかりやすく比較するための期間の目安として例にあげただけです)


継続して再生されるTaylor SwiftのPVと燃え尽き症候群のような部分があるBTS のPVの違いは何なのでしょうか?
ファンの性格というか特性の違いでしょうか?

私自身armyであり10年来のSwiftiesでもあるので気になり質問させていただきました

 

https://odaibako.net/detail/request/9702b50cf99147db9975e7008a63ecf4

 

 

いくつかのご質問があるようなので、順番に整理させて頂きますね。


まず「韓国内での防弾の人気」なのですが、確実にわかっている事は、GAONチャートでの音盤(CD)販売数に関しては防弾が現状一番多いです。(LYS:結は193万枚超)ただ、GAONの販売数は出荷数から返品数を引いたものなので海外出荷分が含まれていますし、4種のバージョン違いなどもそのまま枚数に含まれていますので、実際の国内のファンの規模自体は今ひとつわかりにくいと思います。

(hanteo登録店での販売枚数がわかるhanteoチャートは現在は会員のみ公開になってしまったようです)

その中でもっともローカルな純粋なファンの数に近いものが反映されるのは音源ポータル、特に年間アワードがあり韓国内最大シェアであるmelonのリスナー数ではないでしょうか。

後からの逆走ヒット以外はほぼ24時間でリスナー数のピークに到達しますので、リリースしてから最初の24時間あたりの人数が一番参考になるかなと思います。

これを見ると防弾の今までの24時間あたりの固有リスナー数(ユニークリスナー数)ピークは69万人(Fake Love)で、男子アイドルグループの中で歴代ベスト20には入るけどベスト10には入らないくらいです。これはストリーミングが主流になってきたここ3〜4年前くらいからの記録なので、現在の指針としても有効だと思います。

 

しかしこれはいわゆるファンドム型(ガチオタ主導型)人気のグループの中では一番多い数ですので、アルバム販売数と音源のユニークリスナー数を合わせて考えると、現在の「ファンドム(ガチオタ)の多いグループ上位3組」は防弾少年団・EXO・WANNA ONEではないかと思います。


ただし、「人気がある」と一口で言っても色々な種類の人気がありますよね。上記の「ファンドム規模が大きいベスト3」がそのままイコールで「アイドルオタク以外の層からも認知度が高く一般的に人気がある」という事にはならないと思います。

というのも、ファンドム=ガチオタが買う音盤の販売量はこの3組よりも少ないけど、一般人も聴くであろう音源がこの3組よりも遥かに売れているボーイズグループがあって、それがBIGBANG・iKON・WINNERです。

(Block.bもファンドム規模より音源の方が売れるグループなのですが、ZICOの一般人気がとても高く彼のソロの方がグループよりも売れているという特殊例なので、ちょっと置いておきます)


BIGBANGはユニークリスナー数がピークで126万人でほぼ100万人以上、少ない時でも90万を超えていてボーイズグループの中では桁違いに一般リスナーに聴かれているようです。iKONもピークで84万人以上(my type)、今年リリースされたLove Scenarioはリリース時の24hユニークリスナーこそ62万人でしたが、その後ロングランヒットを記録して累積ユニークリスナー数は150万人を超えています。WINNERは昨年のReally Reallyがやはりロングヒットになり、最初の24hリスナーは63万人程度でしたが、ボーイズグループとしては初のストリーミング1億回越え・初の累積ユニークリスナー数200万人越えという記録を作りました。今年出たEVERYDAYの24hユニークリスナー数も77万人を超えていました。

つまり、ひとくちに「人気がある」と言ってもこの3組と前述の3組の「人気のタイプ」は全く違うと言う事です。前者は「グループにガチペンが沢山ついている」と言うことで後者は「純粋に楽曲がファン以外にも売れる・一般層に知られている」という事ではないでしょうか。

 

TV番組出身のWANNA ONEに関してはこの2つのハイブリッド的な部分があり、特定の楽曲や個人メンバーの知名度に関しては防弾やEXOよりも高いかもしれません。

ファン以外の幅広い層にアピールする必要がある広告などは一般層への認知度が高いグループの方が仕事が多い傾向があり、それは例えばソウルの街中で見かける頻度(ファンが出す広告は除く)などとは関係があるかもしれませんね。

ちなみに海外ファンドムも含めた世界的なファンドム規模としては、音盤売り上げから判断すると現在は防弾少年団が一番大きいのではないでしょうか。後で触れますが、YouTubeの視聴回数韓国内と全世界で差を見てもそうかなと思います。

 

女性グループに関しては、元々男性グループよりも音盤は売れない代わりに音源は男性グループよりも売れるし、ユニークリスナー数も多いです。楽曲がピンポイントで大ヒットするケースも出やすいため男性グループと同じ基準では比較できませんが、音源の売れ方と音盤の売れ方の両方を合わせると、2018年現在はTWICE・BLACKPINK・RED VELVETという事になるのではないかと思います。

 

音源だけを見るとBLACKPINKの「DDU−DU DDU−DU」は24hユニークリスナー数が女性アイドルグループでは初めて100万人を超え101万人を記録しまして、間違いなくこの3組の中では現在1曲あたりの音源が最も売れているグループではないかと思います。RED VELVETも「Power Up」のユニークリスナー数が98万人越えで、特にREDコンセプトの時はかなりの音源人気です。TWICEはユニークリスナー数はピークで89万人程度なのですが、とにかく女子グループの中ではダントツで音盤(CD)が売れています。海外も含めてですが30万枚以上売れるのは現状TWICEだけではないかと思います。ちなみにBLACKPINKは20万枚、RED VELVETは15万枚程度です。

(いずれもピーク枚数)

 

総合すると2018年9月現在、音源順位だと

BLACKPINK>RED VELVET>TWICE

(今現在の各音源ポータルでの楽曲の順位もほぼこの通り)

音盤だと

TWICE>BLACKPINK>RED VELVET

という事になるようです。


ここにもうひとつグループを加えるとしたら、おそらくユニークリスナー94万人の記録を持っているMAMAMOOかと思います。MOMOLANDの「BOOMBOOM」も楽曲単位だと今年かなりヒットなのですが、メンバー個々の知名度や楽曲の売り上げの安定感から見るとMAMAMOOの方かなと。

これはいずれも私個人が分かる範囲での数字を見た限りでの考えですので、ご参考までにという感じです。


次に、YouTubeでのMV再生回数についてですね。

 

IDOLが記録したのはYouTubeでのリリース時から24時間以内の再生数と1億回到達した速度でしたっけ?あとmelonでもリリース直後1時間のユニークリスナー数も記録を作っていたと思います。

これらの記録が表す事は、やはり防弾少年団はファンドム型の人気であり、なおかつ特に熱心で献身的なファンが多いという事ではないかと思います。何故なら曲のリリース直後に集中して聴くのは一般リスナーよりも「新曲を待ち構えて聴くファン」の方が多いだろうからです。


ほぼファンドム規模のみの争いとなっている音盤売り上げとは違い、ガチペン以外の一般リスナーの介入がある音源やYouTubeの視聴回数に関しては、公開から時間が経てば経つほど一般人気のある曲の方が有利になっていくのではないかと思います。それを踏まえると、一般人やゆるオタの視聴数がまだ少ないであろうリリース直後が最もファンドムが介入しやすい時間帯・期間という事ではないでしょうか。この時間帯に集中的に視聴する事で、少なくとも「リリース直後から限定された時間内」での視聴回数の記録に関してはファンドムの力である程度の記録は獲得できやすいのではないかと思います。ファンの意志で作りやすいが故に、防弾のファンもそこの部分を狙ってストリーミングを計画的に仕掛けている部分はあると思います。

(限定された期間の記録であっても、見出しでは「ユニークリスナー数新記録」とか「YouTube視聴回数新記録」とか書かれますし)

ストリーミング回数をラン競技に例えると、ファンドムが多いアーティストは短距離走に強いが一般リスナーが多いアーティストは長距離走に強いという事だと思います。


テイラー・スウィフトもswiftiesという名前がつくくらい熱心なファンがついていると思いますが、全体的な視聴回数を見ると純粋に楽曲のみを聴く一般リスナーもファン以外にも多くいるという事ではないでしょうか。防弾少年団のファンドムはスタートダッシュの速度的にテイラー・スウィフトのガチファンよりも勢いがあったという事だと思いますが、世界的に防弾にガチペン以外の一般リスナーがどの程度いるのか、他のKPOPグループと比べてどうなのかという事は現時点ではよくわからないと思います。

(スミンされすぎててそこがよくわからなくなってる感じですが、逆に他のアイドルより飛び抜けてスミンされていることが見てわかるレベルになってしまっているという)


というのも、テイラー・スウィフトの記録以前にIDOLの前にリリースされたFAKE LOVEの視聴者数を見ると、FAKE LOVEより1ヶ月後にリリースされたBLACKPINKのDDU−DU〜に視聴回数を越されているからです。3億回にはDDU−DU〜方が先に到達しており、今現在の回数も3.8億回と3.3億回なのでおそらく4億回に到達するのもBLACKPINKの方が早いのではないかと思います。この事があるので、防弾のファンドム自体もBLACKPINKに記録的に勝つ(?)見込みが薄いFAKE LOVEよりも、今のところ直近に強いライバル曲のリリースがないIDOLの視聴回数をメインにストリーミングを仕掛けている部分もあるのではないかと思います。BLACKPINKも人気グループではありますが、女子グループという事もあり音盤売り上げから見てもスミンを必死で頑張るようなファンドム規模は防弾ほどは大きくないでしょう。でも逆にガチペン以外も見るでしょうし、なんなら防弾のファンも見てるのではないかと思います。女性アイドルの曲の方がガチガチのファンドムがつきにくい分、逆に国や年齢層やジェンダー問わず視聴されやすい傾向は世界的にあるようです。


FAKE LOVEの方がDDU−DU〜よりも曲が長いから視聴回数に差があるという理屈を言ってくる人がいたのですが、まさにこれこそが「特定の期間に何回回せるか」というスミン(海外ではzombie streamingという名前がついたようです)を前提としている人の考え方で、そういうもののターゲットになっている時点ですでにYouTubeの視聴回数が「どのくらい多くの人に見られているか」という指針には厳密にはなり得ない事がよく分かると思います。melonと違って固有の視聴者数は出ませんし、アカウント自体もいくらでも作れますから言い方は悪いですがスミンし放題です。YouTube側もそれ故に過去には度々カウントの方法を変えたりもしていましたが...

(melonはアカウント作成に国民番号等のIDが必要になったため、複数アカウントを作る事は現在は簡単ではないようです)

YouTubeもmelonも同時に何人でも視聴可能ですから、「同じ人がずっと繰り返し何回も見る」という本来の目的から外れた前提がなければ単純に24時間をMVの分数で割った回数しか見られないという事ではありませんし、「どれだけ多くの人が視聴するのか」という観点から見れば曲の長さは視聴回数にはそこまで大きな影響はないはずではないかと思います。FAKE LOVEの方が1ヶ月も早くリリースされていますしね。

ご質問者の方が燃え尽き症候群のように感じたのも、「色んな人が見たいから見る」というよりも「ファンドムが視聴回数をあげる事を目的に回している」という方が現状では強いからではないでしょうか。

ファンドム主導型の人気でここまでの回数見られている事自体が凄いですが、逆に言えば結局はその限界もファンドム規模にそのまま依存するという事ではないかと思います。そして、例えリリース直後24時間の視聴数で競ったとしても、根本的にテイラー・スウィフトとは「MVの見られ方」そのものが異なっているという事だと思います。

 

ちなみに昨年一年間YouTubeで見られたMVランキング見ると、韓国内と全世界ではかなり違うのがわかると思います。

 

【2017韓国内 YouTube人気MV TOP10】

http://www.youtube.com/playlist?list=PLvaeCFvGpjsPSGqohBM3kz08kjgF-Z05a


1.TWICE「KNOCK KNOCK」(2月)

2.TWICE「SIGNAL」(5月)

3.IU「Palette(feat.G-Dragon)(4月)

4.PSY「I LUV IT」(5月)

5.PSY「NEW FACE」(5月)

6.REDVELVET「Red Flavor」(7月)

7.Ed Sheelan「Shape Of You」(1月)

8.BLACKPINK「最後のように」(6月)

9.IU「夜の手紙」(3月)

10.AKMU「Last Goodbye」(1月)

 


【2017 全世界YouTube人気KPOPMV TOP10】

http://m.newsinside.kr/news/articleView.html?idxno=480933#04yr


1.BLACKPINK「最後のように」(6月)

2.防弾少年団「DNA」(9月)

3.防弾少年団「NOT TODAY」(2月)

4.TWICE「KNOCK KNOCK」(2月)

5.防弾少年団「春の日」(2月)

6.TWICE「SIGNAL」(5月)

7.BIGBANG「FXXK IT」(16.12月)

8.チャニョル&PUNCH「Stay With Me」(16.12月)

9.EXO「Ko Ko Bop」(9月)

10.PSY「NEW FACE」(5月)


両方でトップ10に入ってるのはTWICEとBLACKPINKとPSYのみですね。これを見ると防弾少年団は国内よりも更に海外のファンの方が多そうです。

【お知らせ】Real SoundでTWICE・少女時代 Oh!GGについての記事を書きました

Real SoundさんでTWICEの日本アルバム「BDZ」のレビューと少女時代のユニットOh!GGについての記事を書きました。

 

 

9月はなぜか記事の依頼が今までのペースより多く、普段は普通のフルタイム社会人をやっているのでちょっとだけ大変でした。

実は更にもう一本別の記事が公開予定です。今月は何故か女性グループに関する記事が多かったです。

【週間東亜訳】KPOPではない、BTSポップだ!

【週間東亜訳】KPOPではない、BTSポップだ!


2018.09.16

https://m.news.naver.com/read.nhn?mode=LSD&sid1=103&oid=020&aid=0003169922


相次ぐビルボード席巻後、防弾少年団とARMYの次の「高地」は?

米国の大衆音楽産業の最も権威のある指標、ビルボード。今年防弾少年団(BTS)が二回連続で「ビルボード200」チャートのトップに上がった。 ビルボード200は米国内のアルバム販売量を集計するチャートで、非英語圏アーティストが自国語で2回1位になったのは例のない成果だ。 特に韓国伝統音楽要素を借用した最近のヒット曲「IDOL」はまるで「アジア人がここまで来られないと思ったか?」と威張っているようであるにもかかわらずだ。

 

防弾少年団ビルボードの次の目標にグラミー受賞を挙げる人が多い中、グラミー側でも彼らに関心のジェスチャーを送った。 9月12日、グラミーミュージアムが、防弾少年団を招待して特別イベント「防弾少年団との対話(A Conversation With BTS)」を開催したのだ。 

グラミーは白人男性に焦点を置く保守的な性向の授賞式とされているが、最近は変化の姿が感知される。 グラミーは2016年、ドナルド・トランプ行政部の人種主義的性向に批判の声を出している。 それからわずか数日後、マイノリティ連帯のメッセージを盛り込んだ「Not Today」ミュージックビデオを発表した防弾少年団は米音楽産業が探していたアーティストだった。 

同年ビルボードミュージック・アワード受賞を皮切りに、防弾少年団は気が遠くなるほどその都度記録を更新し、米国市場を破竹の勢いで攻略した。 最近、「クレイジーリッチアジアン」「サーチ」など米国内のアジア人の人生を描いた映画がヒットし、アジア人の人種的な可視性が米国内で大きな流れになっている。 このような傾向は、米国の主流市場に防弾少年団を紹介することにも肯定的な気流として作用している。 

国内メディアも防弾少年団の異例的な成就を連日特筆大書している。 その中心には「K-pop)アーティストがここまで世界で成功するとは思わなかった」という驚異がある。 東アジア大衆音楽が北米市場で説得力を持つためには、女性アーティストが有利というのが2000年代まで通念だった。 すでに2000年前後にアジア地域と欧州の一部地域で韓流が発生し、男性アーティストたちが成功していたが、北米は全く違う「高地」だった。 これは大体において英米圏の「正統」に第3世界が追いつくことができないためだと解釈された。 どうせ米国人と本質的な部分で競うことができなければ、西欧人にとっては東洋男性よりもずっと魅力的とされる東洋女性がより勝算があるという認識が一般的だった。 実際に韓国と日本の女性歌手たちが北米市場進出を意欲的に試みた事例が少なくない。


「米国のポップスとは別のもの」

このような通念に亀裂が入ったのは、2000年代後半からだ。 海外でKPOPをリアルタイムで楽しめるYouTubeという「高速道路」が開通し、海外ファンドムが多く広がってみると、本当に人気があるのは、ボーイズグループだった。 少女時代、Wonder Girlsや2NE1などのガールズグループも人気がなくはなかったが、これらは魅力的な「友達」というイメージが強かった。 海外ファンドムの主流が集中した対象はBIGBANG、B.A.P、EXO、2PMなどだった。 これは結局、KPOPが米国のポップスと「競う」必要がないことを見せてくれたことでもあった。 移民家庭の女性子供とセクシャルマイノリティが中心となった彼らの関心は、米国のポップスを凌駕することがなく、「米国のポップスとは別のもの」にあるためだ。 

防弾少年団はそこからさらに一歩進んで、現地化戦略のあらゆる詳細事項を廃棄した。 現地語に上手く橋渡しの役割をする外国出身メンバー、現地語の歌の参加、現地人が理解しやすいコンテンツと、はなはだしきは発音しやすい名前など、防弾少年団はすべてが反対だった。 メンバー全員が国内出身で、韓国語で歌い、それぞれ出身地域の色を強調したり、教育システム又は住居環境など韓国内の特殊な文脈も歌詞に入れた。 過去の現地化戦略が天動説なら、防弾少年団の戦略は地動説と感じられるほどだ。 海外ファンにとっても有効なアピールは全く異なるものだった。

 

BTSだけが好き」

その一つがコンテンツの叙事性だ。 連作アルバムというフォーマット、自然と人である各メンバーのライフサイクルを基にしたテーマ選定とこれによるコンセプトアルバム、ビルボードミュージックアワードの受賞演説のように現実に起きた事件を再び敍事の中に引き入れたりするなど、すべて動員されている。 今、彼らがセールスするのは、レコードやツアーというよりも寧ろ防弾少年団という長編ドラマに近い。 叙事性の強いコンテンツが海外ファンにアピールするというのは、海外でより大きな反応を得ている近年のDREAMCATHERやLOOΠAからもうかがうことができる点だ。 新曲が出るたびに新たなエピソードを受け取り伏線を解釈していく面白さは、韓国メディアに対する接近性が低い海外のファンたちも全く疎外されない消費方式だ。 

国内のファンにとっては放送と芸能ニュースの支配力が高い。 KPOPアイドルは新曲発表、音楽放送とテレビ番組の出演、芸能ニュース報道、その他のイベントなど、多様なルーツでのファンと出会う。 彼らに比べて海外ファンたちにはツイッターYouTube、V LIVEなどのニューメディアがより重要だ。 また、このようなニューメディアは防弾少年団という豊かなコンテンツをもっと明快に提示してくれる役割もする。 公式音源やプロモーションビデオで鑑賞が集中され、これをソーシャルネットワークサービス(SNS)の活動で補完する。 コンテンツはほとんど所属会社とメンバーらが直接関与する公式的なものとして統制力が強く、鑑賞者としては集中度が高い。 特に物理的に遠距離にある海外のファンたちには、このような方式がより有効であったのだ。 

一方、防弾少年団の歌が聞かせてくれる率直な自己告白と真正性は、KPOPファンドムがいつも望んでやまない部分だった。 KPOPの完璧な造形美に熱狂しながらも、それが「人工物」または「フェイク」だと考える認識はいつも心にひっかかる部分だった。 国内ファンはこのようなすっきりしない部分を克服することができる。 スターと近くで接し、実在感を経験するためだ。 しかし、海外のファンは事情が違う。 彼らにとって防弾少年団は、造形美と真実性を備えたソリューションに迫るのだ。その結果は、海外ファンドムの構造の変化として如実に表れている。 様々なアーティストを同時に好きなのが一般的だったが、今は防弾少年団だけが好きなファンとその他に再編されている。 KPOPファンドムで防弾少年団という解答を見つけた人であるなら、他のアーティストを好きでいながらも感じるすっきりしないことにもはや耐えることができないからだ。 「防弾少年団はKPOPではなく、BTS-POP」という主張もこれと無縁ではない。 

これまで世界のポップス地図で、韓国は一種の宗主国の役割を果たしていた。 海外でもっと人気のあるアーティストが時折いるが...という程度に限界があった。 海外のファンたちも国内での人気度を意識してきたからだ。 これは国内で人気がないためにキャリアが続かないとか、国内ファンから「気がきかない」というようなアドバイスを受けるなどの経験から始まったものだ。 しかし、海外ファンドムは地道に独自の趣向集団として進化してきた。 最近はDREAMCATHER、LOOΠA、Stray Kids、KARDなど、海外の反応がもっと熱いアーティストが続々と登場している。 このような現象は、防弾少年団以降さらに加速化するしかない。 国内ではそれほど関心が得られなかったキャリア序盤から防弾少年団を圧倒的に支持してきたのは海外ファンドムであり、それが爆発力を得て北米市場で大きな成果を出した後、国内に「逆輸入」されたためだ。これからはKPOPという産業において、韓国市場の数字はその重要性が低くなるのだろう。当面は国内で認知度とは別に、海外でセールスするKPOPアーティストが増えるだりう。究極的には国内市場と無関係ないわば「脱KPOPアーティスト」の登場が期待される。


米音楽界、ARMYの自発的行動力に'驚嘆'

その反面、韓国は依然としてKPOPの文化的ヘゲモニーだ。 防弾少年団とともに最も多く呼ばれている名前、彼らのファンドムARMYがこれを裏付けている。 防弾少年団が一つのドラマであるなら、ARMYは「参加する文化」だ。 ビルボードに到達してから話題となり、海外ではARMYの活動に鋭い関心を示す。 「BTSを100%楽しむためには、ARMYの一員になってダンスと歌を真似してスローガンを叫んでオンライン投票もやってみろ」といういう感じだ。いわば防弾少年団が一種の体験型のコンテンツのように考えられることもある。

このすべては韓国流のファン文化だ。 米国のポップスが経験しなかった文化だ。 英米圏ではあらゆるアーティストのファン集団の名前が大衆によって自然につけられている。 ジャスティン・ビーバーのファンドムである「ビリーバー」、One Directionのファンドム「ディレクショナー」などがそうだ。 一方、KPOPでは所属プロダクションとアーティストによって命名されるのがファンドムだ。 彼らは、同じアーティストを好きで同様の性格を持った集団ではない。 「名づけられた」存在、アーティストと「縁」という感覚を感じる存在だ。 これは英米のポップスと区別されるポップ文化特有の感性でもある。 アーティストの成功を念願して自分を献身するようにする原動力であり、膨大な人員の集団行動へと具体化される。

音楽やミュージックビデオの再生回数、彼らが言及されるすべての投票に乗り出すのは基本だ。 ARMYは多方面で彼らをそれこそ「サポート」する。 PSYの「カンナムスタイル」(2012)と最も差別化される部分でもある。 PSYは一般大衆の間で歌が話題を集めてヒットしたため、運も大きく作用した。 一方、ファンドムの力でチャートを打って値上がりした防弾少年団は人の努力によって果たされた成功であるため、パンシヒョクビッグヒット・エンターテインメント代表が言うように「モデルとしても有効になる」。米音楽産業界がARMYの自発的な行動力に驚嘆して注目する理由でもある。 

ところが、ファンドムに向けられる視線は国内と根本的に違わない。 ファンドムに関する研究論文の多くは、ファンたちがアーティストの広報を遂行することに焦点を置いている。 言い換えれば、所属会社の資源と労働力が入るべき業務をファンが「自発的に」することで発生する経済効果に注目しているのだ。 似たような見方がアメリカの音楽産業界にもある。 軽いものではSNSで何の意味もなくARMYを呼称して関心を誘導する場合があり、それほど意味のない人気投票を作ってARMYのクリック数を受けている。甚だしい場合には、芸能メディアや音楽記者が自分たちが何かの賞候補に上がると、ARMYに投票をお願いするケースさえある。

もちろん、ほとんどの関係者はARMYの力やARMYと防弾少年団の格別な絆に惜しみない尊重を表明する。 しかし、ARMYの経済的価値を利用しようとする彼らの存在は、米音楽産業と韓国のファンドム文化の間をただ純粋に眺めてばかりはないようだ。初めての出会いのピンク色の気流の中でどんな力学が発生するのか、見守る必要がある。 

逆風の恐れもある。 国内でアイドルファンたちは、長い間否定的な視線を受けてきた。 「若い女性の好み」に対する非難は、程度の差はあるものの多くの文化圏で共通的に発見されている。 今はまだ肯定の視線が支配的だが、少女たちの集団行動という現象を目の上のこぶとみなす彼らはいつでも出現することができる。 すでに米国有力紙でも「FAKE LOVE」のステージをレビューし、「堂々とフェイクの愛と歌うが、それでもいいと歓呼するファン」と皮肉られてもいる。防弾少年団は「Love Yourself(自分を愛しなさい)」キャンペーンを展開したり、ファンもこれに応えてARMYの「火力」を慈善募金などの善行に利用することもある。 また、最近では防弾少年団の空港の入国場では、ファンが秩序維持とアーティストの保護に向けて紐で安全線を作るキャンペーンを繰り広げたりもする。 このように、アイドルグループやファンドムについて認識改善が行われ得る事例も積もっている。 しかし、依然として熱いファンドムは熱い逆風を受けやすい。 防弾少年団とARMYがこの気流の中でどのような均衡点を探していくかは慎重に見守るべきことだ。


健康的で楽しいファンドムの文化に向かって

アルバム「Love Yourself結'Answer’」はビルボード200 で1位から8位に、タイトル曲「IDOL」はビルボードHOT100の11位から81位に落ちた。アルバムが曲よりも売れるという点や発売初期に集中することは、典型的な「ファンドム主導型」の成績ともいえる。 防弾少年団の力がファンドムであるならば、その限界もファンドムの大きさであるわけだ。 失望したり馬鹿にすることは全くない。 まだ米国のメジャー市場の一般人を対象に定着することはできなかったという意味であり、これは自然と防弾少年団とARMYが眺めている次の目標であろう。 


国内外のマスコミが見る防弾少年団に対する興味は、やはり成績に焦点が合わさざるを得ない。 彼らが建てた金字塔と成功の原因、経済的価値のようなものだ。 残念だが、それがメディアの摂理だ。 懸念されることは、このような世論がファンドムの目標指向性をさらに刺激しないかという点だ。 特に韓国メディアの無関心に長く苦しめられた韓国のファンらは、補償心理を大きく感じていそうだ。 また、これと同時に国内で活動時間が少ない事についての欠乏感とこれによる疲労を訴える現象も現れている。 成績表と数字の後ろで注目しなければならないもう一つのテーマは、どのように健康で楽しいファンドムの文化を作っていくのかということだ。 努力と献身を要求する韓国式ファンドムの文化を出発点としてこれだけ離れて来た時、防弾少年団がKPOPに輸入した革新をファンドムの文化でも目にすることになるのだろうか。 その答えも防弾少年団とARMYは一緒に作っていくことになるだろう。


ミミョウ(idology編集長)

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「健康で楽しいファンドム文化」って、今現在防弾少年団とARMYから一番遠い言葉では...ここにきて共依存的不健康な関係性しか感じなくなってきてますね。少なくともARMYと防弾少年団が答えを作ることは絶対に無理だよ〜(震)

(個人の感想です)


アイドルの名前で募金するのはどこのファンドムも昔からやってるし、空港で迷惑かけないとか人として最低限の事ができてないのができるようになったところで...と日本のファンとしては思うだけですが。逆風も女子供の趣味だからというより、同じアイドルファン同士でというも多いのでは。

(南米に8万人規模のアンチ防弾団体があるっていう都市伝説みたいな話がもうあるらしい)

しかしこれはある意味究極のファンドム依存型ビジネス成功例と言えるかもしれないと思いました。すごいけど怖いですね。ファンドム内のマジョリティになれないファンは弾き飛ばされそう。