サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】日韓アイドルのポリコレ的態度と社会の関係性について

【質問箱より】

KPOPアイドルを応援していて思うのが「日本のアイドルより倫理観がしっかりしている」ということなのですが、練習生の時にそういう教育がされているのでしょうか。それとも韓国の方が日本より差別意識が薄かったり多様性を尊重した社会なのでしょうか。私は何となく後者じゃないかなと思っていますが泡沫さんの意見が聞きたいです。
私は前まで日本のアイドルを追っていて女性であったりマイノリティの人々を軽視した言動があまりにも多く正直うんざりしていたのですが最近KPOPを好きになり「あらゆる差別に反対する」というようなしっかりした考えのアイドルが多く感動しています。日本のアイドルがなかなか世界進出できていない理由はそういうところにあるんじゃないかと思いました。日本のアイドルも彼らを見習ってほしいのですが難しいんですかね…
2020年8月13日6:25

https://odaibako.net/detail/request/1cce694a-e32b-4a93-b378-2eee22f8c9cc

 

KPOPを好きになって割と日が浅い方からよく頂くトピックなので、今後はリンクで処理するためにブログにまとめる事にしました。

まずはこちらをご参照ください。

https://twitter.com/djutakata/status/1287682916156284928?s=21

 

私の考えとしては、事務所の教育とファンや社会からの圧力の強さが大きいと思います。KPOPを見てきた10年ちょっとの間でも様々な事件がありました。ほんの一部ではありますが、こちらの記事訳などをご参照頂ければと思います。

「あらゆる差別に反対する」というような事を言い出したというか、アピールするようになったり気をつけ始めたのは、海外のファンも増えてきて問題が指摘される事も多くなってきた本当にここ数年の事だと思います。今はそういうイメージのアイドルでも数年前までは繰り返し差別的言動や態度をバッシングされたりという実例もありますし、そのような過去が知られている韓国内でのイメージと知られていないその他の国でのイメージが正反対というケースもあります。韓国ではここ数年でアイドルに対するポリティカル・コレクトネスの要求が急速に高まっており、ファンによる要求やアンチによるバッシングだけではなく社会的目線やアンチからの攻撃の種になる事自体を懸念するファンが是正を強く求め出した事もあって、事務所の方も特に気にしなければならなくなったという流れが正しいと思います。

 

「ファンや社会からの要請で変わってきている」というのは字面にするととても良いことのように見えるのですが、その過程においては「多様性」という言葉からはほど遠い経過を見せるケースも少なくありません。「ポリコレ的な視点が足りなすぎるからこの本を読んで勉強して欲しい」とファンが書籍を贈ったりという事もあるんですが(これも人によって微妙なラインではあるかもしれませんが)「学んで良くなって欲しい」というよりはむしろ、一方的に「(当人やグループのイメージが悪くなるから)とにかく公式に謝罪しろ・しないならやめろ」という極端な圧力の方が圧倒的に多いですし、それで本当にすぐ辞めてしまったり精神的に参ってしまったのではないかというようなケースや、あるいは一生謝罪とボランティア活動をして世間やファンのために奉仕しているという姿を見せるように生きていかなければいけないのかな...というような例も少なくないです。韓国のアイドルの方がネットでの評判やバッシングにはとても敏感ですから、そのような圧力で「矯正」させられてきた部分が大きく、特に気をつけるようになってきたという事だと思います。そういう環境になると結果的に段々と自主的に気にし始めるようにはなってくると思いますし、目に見える部分では問題は減るのでそれはそれで良い事ではあるのですが、現状では「アイドルが自分で考えて学んだ」「アイドル自身の自主的な行動と考え」と‪言うよりも、それ以前にそのような事柄に対しては極力触れない(SNSやコンカなど、アイドルが直接的に投稿する場所では触れない)とか、事務所や仕事の場を通してのみの定型通りの話しかしなくなってきているので、アイドルの自主性という基本的人権の側面から見れば果たしてそれがそのまんま素晴らしくて良いことなのかどうか、私にはわかりません。ファンや社会が韓国のアイドルに対して要求したりこうあるべきと望む態度や内容が、外国人でもある自分から見れば必ずしも人間的だったり「正しい」ことばかりではないと、個人的には感じる部分もあるからです。「どのように強制的だったり表層的なやり方であれ、ポリコレの定型的に問題なく振る舞うようになる事が最も重要だ」と考える人にとっては、それは全て「正しくて素晴らしいこと」なんでしょうか。

 

先程リンクを貼った記事にある文で

「ファンドムは自分のアイドルに対する「ロビー活動」と、自分のアイドルのライバルが「女性嫌悪歌手」であることを広く流布する行為を同時に進行したりもする。 この過程でアイドルに政治的な正しさを要求する声は、悪意を帯びた「政治活動」にだまされたりもして、逆に他で議論になるほどの事がなくても特定ファンドムを牽制することに悪用したりもする人もいる。」

というものがあります。純粋に「自分たちのアイドルには(自分たちの考える基準で)『正しく』あって欲しい」という意思だけではなく、そういう動きを利用して気に入らないグループを陥れるためにあえて声高に問題を強調し公論化させようとする、というような動きはKPOPのアイドルファンドム(最近は韓国だけではなく、それに倣う海外ファンも少なくない

ので)には常にあり、そういう意味での「政治的」な側面もあるということです。それほど韓国ではファンドムの声が大きいし、良くも悪くも圧力を持ってあたかも総意のようにダイレクトに届きやすいという部分はあると思います。
(事務所がそのまま要求を受け入れるかどうかはまた別ですが)

韓国の宮脇咲良ファンの方が書いた文章などにも、日本人からは見えにくい韓国のアイドルが置かれた状況が書かれていると思いますので、こちらもよかったらご参照ください。

 

「韓国の方が日本より差別意識が薄かったり多様性を尊重した社会なのか」という点に関しては、以前から言っていますが韓国の方が良い部分もあれば日本の方が良い部分もあると思いますので、当たり前なんですが単純な比較はできないと思います。今現在の韓国のアイドルは先述のような理由から特別に清廉潔白で正しい生き方や人格を「振る舞い方」を超えた範囲で求められていますし、「グローバル」というような側面をも担わされつつある現在では特にそうだろうと思います。実際に欧米圏でも「パフォーマンスでは悪ぶっていたとしても、私生活や振る舞い方は物凄く統制されてクリーン」というイメージはあるので、それが逆に「ファクトリーで作られる、自由がなく言いなりのアイドル」という、あんまり良くない方のステレオタイプイメージの一端にもなってるんじゃないかと思いますが。日本のアイドルの方が良くも悪くも色々な面でナチュラルという比較のされ方は英語圏ではよく見ます。例えばRed Velvetのアイリーンが男性アイドルが読んだと言った時は讃えられた「82年生まれキムジヨン」を読んだと言ったり、APinkのナヨンが「Girls Can Do Anything」というスマホケースを持っていただけで「フェミだと認定されて」ニュースになるくらい酷くバッシングされた事もありました。ティファニーのように、東京滞在時のインスタ投稿に押したスタンプに旭日旗のような柄がふくまれていた(インスタのデフォルトの東京スタンプにたまたまついていた)というだけで強いバッシングを受け、実際に番組を降板させられた例もあります。ソルリが極端な選択をした時、韓国では彼女のアイドルとしては自由と思われがちだった振る舞い方に対する執拗なバッシングを背景として想像する人は少なくなかったと思います。つい最近でも、韓国で活躍しているガーナ出身のタレントがブラックフェイス的扮装をしていた韓国の学生のSNSの写真に意見したところ逆に強いバッシングを受け、謝罪するという事もあったばかりです。アイドルや芸能人がらみだけでもこのような事が現在進行形であるのを知っていればば、「韓国の方が日本より差別意識が薄かったり多様性を尊重した社会なのでは」とは単純に言えるはずがないですし、実際に韓国で抑圧を受けている人々から見ればそれは現実を知らない外国人のあまりに無責任でお気楽な見解と感じられるのではないでしょうか。韓国では兵役という男性への強制性が強い大きな社会制度があり、それによって日本とはまた異なるねじれ方をしたジェンダー的な問題もあると感じます。「アイドルは社会をうつすもの」とは言いますが、等身大よりも理想である事を強く求められて時に強制されるような雰囲気やシステムの中で生み出されているものであれば、それはそのままのリアルという事ではないと思います。そしてアイドルを通してしか韓国社会を見ていないのであれば、見えている部分はその社会を構成する部分ではあるけど、実際はとても狭い範囲であるんだろうという自覚は必要ではないかと思います。

 

日本のアイドルにジェンダー観に問題があったりマイノリティ軽視の発言が多いというのは、ある意味でそのまんまの日本の現実(教育にしろ社会にしろ)を反映している面もあるでしょうし、逆に言えばそれが強制的に制限される事がなく自由で同時に野放しという事でもあると思うので、個人の裁量に任されている面が大きい分公の場に出やすいんだと思います。指摘されなければわからない事はあるしそういう間違いをして学習していく面もあるでしょうけど、一度世に出た事は消せない以上はそれで傷つく人を無くすためにも世に出ない方がいいに決まってるとは思います。そういう面に対して事務所側が一括で管理する事で、質問者の方に様にその国そのものに対して単純にポジティブな印象を持つ人も出てくるというのは良い効果だと思いますので、そういう文化面や倫理面での事務所による教育プログラムみたいなものがあったら良いだろうと思います。日本のアイドルが即職業としてアイドルになるパターンも多いのに対して韓国のアイドルは練習生システムが基本なので、10代のうちから一般人の同世代と触れ合う機会も少なくトレーニングに没頭せざるを得ない練習生等への教育的側面も必要になるし、その一環として他文化やポリコレ的な事に対する教育も入れ込みやすいというのはあるかもしれません。日本でも社員向けセクハラパワハラ研修などは今や特別ではないですから、特に大きい事務所などは企業としてそういうものも取り入れた方がいいんじゃないかと思います。

 

KPOPはある意味ファンの側=今の10代・20代の女性の理想を体現させられている面があり、それがすなわち今の社会の理想というわけではないと思いますが、日本のアイドルも少なくともファンの要求が強くなってそれが伝わっていけば、そういう層が望むように振る舞うという事にまで考えが及ぶように変わってくるんじゃないですかね。日本のアイドルはファンの年齢層も幅広い分考え方もバラバラだったり、システム的に「ファンの総意」としてまとめるの難しい部分もあるんではないかと思いますが、日本のアイドルのファンでもそのような部分を問題と考えているファンがいないわけじゃないと思います。ツイッターやブログではよく見ますし。これからは、ファンレターでもなんでも細かくこういう部分は嫌でしたとか問題があると感じるという事を伝えていくという事は重要かもしれません。韓国のようにファンの方から自らの気持ちや意見を表明する事はせずにアイドルに対しては変わる事を望むと言うのも、理不尽という気もします。日本からKPOPを見ているファンで諸々の背景は無視して(見えていなくて)いるひとたちはある意味、あらかじめ韓国のファンや社会に叩かれて平らになったものだけを見て素晴らしく滑らかですね〜と言っているような部分もあると思います。もしも韓国のアイドルのような体面を望むのであれば、日本のアイドルの場合も日本の社会やファンが叩いたり添木をしたり事務所が土壌を変えたりして時代に合わせるように育てていく必要はあるのかもしれないとは思います。

 

日本アイドルくらいにはアイドルの自主性を許しつつ、韓国のアイドルくらいにはポリコレについて気にしたり考えられるようなやり方ができればいいんですけどね。