サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】ガールクラッシュコンセプトと日韓の女性アイドルについて

【質問箱への投稿より】

泡沫さんこんにちは
前々から思っていたのですが、自ら発信するbit○hはエンパワメント ですが、プルピン含むガールズグループはプロデュースされたアイドルであって、アイドルの言うことって自分で言ってるわけじゃなくて、結局は運営や社長(男性)に言わされてるわけじゃないですか。
それって本質的にエンパワメントと言えるのだろうか…というのをガルクラ系のkpopグループを見ていつも思っていました。
私は日本のアイドルのオタクなのですが、よく日本のアイドルがkpopと比較して男に媚びてるとか幼く振る舞わされてると言われますが、まあそれはそうなんだけど、kpopだってそれは可愛く着飾ったお人形かカッコよく着飾ったお人形かくらいの違いしかないんじゃないかなあと思っていました。
むしろ、日本のアイドルはそこまで運営に管理されていない(ほっとかれているとも言う)ので、よっぽど好き勝手自立してやってる気がします。
アイドル本人達にもガールズエンパワメントの意思は絶対あると思うんですが、とはいえやっぱり作られたコンセプトに作られたイメージの中で管理されて生きている女性達なわけで、多分清楚系コンセプトを与えられていたとしたらそれを上手にこなす人達だろうなあと思うし、ガルクラというコンセプト自体に大きな矛盾を感じています。
あと、私はbishにも同じ感覚を抱いています。
あそこはかなり社長一強の事務所なので…

泡沫さんはアイドルのガルクラコンセプトについてどのようにお考えでしょうか?
長文書いてしまってすみません。お手隙の時にでもお返事いただけたら幸いです。
2020年7月6日4:26

https://odaibako.net/detail/request/bbd42744836348a483cecc535c6858f1

 

なんか長くなったのでこちらで失礼しますね。

(テンプレ)

「ガールクラッシュコンセプト」については、ブログで過去に訳した記事につけてるコメントにも色々書いてるのでそちらもご参照頂ければと思います。

 

ご質問者の方の言う「ガールクラッシュも清純コンセプトも、必ずしも自分たちの意志で自主的にやってるわけではないという点では同じ」という点については、その通りだと思います。これはボーイズグループも同じだし、日本のような完全にインディーズでメンバーが全てやっているグループはほぼ存在しないいわゆるKPOP=アイドルに関しては、全員例外なく事務所の意向が入らない事はありえないですよね。「自作」や「セルフプロデュース」してるグループだって必ず事務所のチェックを通らなければ世に出す事はできませんし、世に出す演出の仕方は事務所が決めますし。ただし、パフォーマンスをする主体はアイドルですから、そこに本人の意思があってもなくても表現そのものだけでもある程度の意思表示やエンパワメントにはなるんじゃないかと思います。BACKSTREET BOYSのドキュメンタリーでメンバーが自分たちのことを「ピノキオみたいに、最初は作られた存在でも続けていくうちに命が宿るんだ」というような事を言っていたのですが、そういう存在と考えれば逆に「言わされてる」「やらされてる」が100%ではないんじゃないかとも思いますし。女性が世間を挑発するような強い表現を体現する事も、逆に世間からなんと言われようとワシらはこれで行くんじゃいと清楚系や可愛い系のコンセプトを貫き通すことも、両方とも女子へのエンパワメントになりうるんじゃないかと個人的には思っています。要は何を目的にやってるのか、どこに何を見出すかにすぎないんじゃないのかという。

 

個人的には「ガールクラッシュ」っていうコンセプトになってしまった時点で実際は本質からズレてしまってると思ってます。そもそも「ガールクラッシュだから」売れてたり人気があるというよりは、そういうイメージで人気のあるグループがそれぞれの個性を確立していて他にできない事をやっているからなんじゃないかと思うのです。例えば人気の高いガルクラ的なイメージのグループを見てもREDVELVETもMAMAMOOもBLACKPINKもそれぞれ表現している事やイメージは違うし、「ガールクラッシュ」というのはその一部を表す表現にすぎません。それを「ガールクラッシュ」の一言に類型化すること自体がある種の型にはまったイメージを一方的かつ勝手に負わせているというか、いわゆる「対象化」になるのでは。それに、典型的な「ガールクラッシュ」的だと思われていなくてもTWICEやIZ*ONEやOH MY GIRLなど、全体的に見れば女子からも人気があるグループもいくつもいますし。基本的にKPOPの場合、女子グループは男子と違って一部のオタクにのみ人気があるだけでなく大衆性もなければトップ人気にはなれないので、人気の女子グループは男女問わず支持されるグループがほとんどじゃないかと思います。「ガールクラッシュ」という言葉が頻繁に使われるようになった2015〜2016年より以前から「ガールクラッシュ」と表現できるようなグループは2NE1やf(x)などいくつかありましたが、当時はそれぞれの個性をひとつの言葉で括られるような事はなかったはずだと記憶しています。

 

ただ、アイドルはその社会を映すものでもあると思いますから、表層的な表現だけを見て「これがウケる社会」に対しての憂いをアイドルそのものとかそのあり方にぶつけてる人もいるんじゃないかとも思います。私としては因果関係が逆で、社会が変わっていくにつれて自然とアイドルのあり方や表現方法も変わって行くと思いますし、そちらの方がまず先にありきではないかと思っています。そして、特に日本では急激な動きではなくても視野を広く注意深く見てみれば、すでに色々な場所から変化は感じられるんじゃないでしょうか。韓国のアイドルのようにわかりやすくパフォーマンスやビジュアルが「カッコいい」アイドルがトップになる事は日本のアイドルでは現状まだ珍しいけど、韓国には欅坂の平手さんのようなルックスやキャラクターのタイプのメンバーがセンターになってグループを引っ張っていくような事はまだありません。女性アイドルがSNSやサイン会で異性のファンと忌憚なく罵り合ったり直接注意喚起をするような事も、まだ殆どできないんじゃないかと感じています。Perfumeのように、メンバーが30歳を過ぎても1人も欠けずに現役でツアーも含めてきちんとコンスタントに活動を続けている女性のグループもまだ殆どいないと言っていいんじゃないかと思います。女性アイドルのフェスにセクシャルマイノリティのメンバーで構成されたアイドルグループが呼ばれたりという事も、今のところ日本だけじゃないでしょうか。パフォーマンスやコンセプトは進歩的だったり自由に見えても、パフォーマンス意外の部分でのアイドル本人への抑圧があまりに大きいというタイプの社会もあれば、アイドル本人の意思表現についてはそれなりに自由意志で出来るし受容されやすくても、パフォーマンスやコンセプトについては一見抑圧的に見える方がウケるという社会もあります。それぞれの社会や文化のあり方の違いによってエンパワメントの形は違うと思うし、決まったやり方だけが「正しい」わけでもなく、それを型にはめることはまた別の女性達が生きにくい環境を作る要因になるのではないかと思うのです。

 

でも物事が変わっていくのには段階があるので、一時的に似たような方向へ偏らざるを得ない時期というのはあると思いますし、まずは既存の良しとされるものへのカウンターが現れて、それまでの認識を変えない事には始まらないというケースも勿論あるんだろうとは思います。個人的には、そういう偏りの時期を超えてあえて女子アイドルが特別に何かをエンパワメントする事を求められないというか、そういう事をしないという事で責められたり揶揄されたりしなくても受容されるような、色んなグループがあってそれぞれいいじゃんと言えるような環境に社会自体が(日本でも韓国でも)変わっていくといいなと望んでいます。現実社会の問題や抑圧が少なくなってこそ、本当に多様なものがそれぞれもっと気楽に楽しめるようになるんじゃないかとも思っているので。でも、今はまだ少し難しいのかもしれませんね。