サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【ファーストメディア訳】アイドル話④ アイドルの「リアルタイム」を共有するということ

【ファーストメディア訳】アイドル話④ アイドルの「リアルタイム」を共有するということ

 

2017.4.13 18:04 パクヒア

 

アイドル話
韓国にはすでに数百人にのぼるアイドルがいる。 全体人口数に比べるといくらもない数字だが、社会的に彼らが占める割合は様々な面で少なくない状況だ。そして大多数の人々は気楽に軽い気持ちで彼らを消費するが、見えない裏には気を使っている色々な話が見え隠れしている。 そこでアイドルたちが成功の軌道に進入するためどのような熾烈な努力を傾けていて、その過程でいかなる心理的苦痛を経験しているのか、また、どのような悩みをするのかなど、関係者らの言葉と素朴な経験を借りて何度か記録を残してみようと思う。

 

http://www.thefirstmedia.net/ko/?p=33659


スターリアルタイム個人放送のアプリ販売開始の知らせが伝わった時、いくつかのアイドル所属事務所の関係者が尋ねてきました。

「これで記事を書けそうですか?」

当時、私は会社を辞めて一人で本を企画していたところでした。 この時までに私が気になったのは、この「リアルタイム放送」のアイデンティティだったのです。 アプリを通じて提供されるスターの個人放送が、芸能メディアにとって既存のTVコンテンツと同じ概念で受け入れられるものなのかと思いました。 それで内部に在職中の記者たちに聞いてみました。 下は私と似たようなキャリアの記者たちが交わした対話です。 多分もっとキャリアが長い先輩記者同士は、これと関連してもっと簡潔に話を終えていたかもしれません。

 

A記者:これはすべて記事化するの? 私たちにはまだ話がないけど。


B記者:多分そうだよ、リアルタイムで上がってくること自体が大きいんじゃない。 YGから記事が載りそうだね。

 

すべての芸能メディアが積極的に乗り出して記事を掲載したわけではなかったです。 しばらくは、そのアプリを開発したポータルと記事提携を結んでいるいくつかのメディアを中心にモニタリングが行われました。 そして数ヵ月後、有料コンテンツが発売されました。

 

A記者:有料の部分も記事化するのか。それはすごくお金がかかりそう。

 

B記者:私もモニタリングはちょっとしたいんだ。 どんな内容か気になるでしょ。

 

C記者:幸いなことに、企画会社側でIDとパスワードをくれるって。

 

B記者:ほんと?俺昨日ちょうど買ってみたところだよ。タダでもらえるって知らなかった。

 

対話が行き来していた途中、急に不快な気分が押し寄せて来ました。 新たなプラットフォームが登場したという事実そのものに集中したあまりに、本当に大切な話をカットしてはいないか。 そこでいくつか質問をまとめてみました。 第一に、アイドルグループのメンバーたちにとって「リアルタイム」とは何を意味するのか? 第二に、アイドルの「リアルタイム」をお金を払って買うというのはどんな意味を持つのか?

 

徹底的に作られた状況においては、リアルタイムの生放送舞台とカメラの前に立つということは、数回の検閲と厳しい練習過程を経た作業の産物なんです。 しかし、ライブのアプリを通じて中継される「リアルタイム」をのぞくと、アイドルメンバーが美容院に行ってメイクと髪の手入れを受けたりというスケジュールを消化することの一部が含まれているというよりも、かなり私的な時間内にカメラを踏み入れたような感じがします。

 

例えば部屋でオンラインゲームを楽しむとか、一人で散歩に出かけたり、ホテルの部屋でご飯を食べたり、パックをする姿などが含まれています。 趣味生活を公開して、衣食住を公開して、就寝直前の様子まで詳しく見せてくれるなど、我々が普通に考える「プライバシー」に近接した場面が多様に描かれます。 しきりに浮かれて自分の話を公言するメンバーたちの姿は活気に満ちてかわいいけれど、時々「ここまで見せてもいいのかな?」というような不安感に駆られるのもそのためでしょう。 また、このようなシーンのひとつが無料であるとか、逆に有料であるとも考えられるという点は、どちらにしてもかなり不思議な感傷を醸し出します。

 

上で申し上げたいくつかの疑問を初めて聞いた当時は、リアルタイム放送コンテンツはほとんどが無料でした。 有料コンテンツは、録画や編集を経て作られた企画アイテムたちでした。 しかし、現在はコンテンツの種類に関係なく様々な有料決済が行われています。 また、アイドル以外にも俳優やメーキャップアーティストなど多くの人々がコンテンツを提供していることもありますが、依然として一番人気が高いのは、有料か無料かに関係なくアイドルコンテンツです。

 

#企画会社の悩み

 

ポータル側はリアルタイムの個人放送及び双方向ネットワークが可能なサービスプラットフォームのみを提供するだけで、これを通じて提供されるコンテンツの質的な部分や内容の信頼性、適切性などについてどのような保証もしません。 これにはコンテンツを作って提供する企画会社も、多くの面で慎重になるしかないのです。

 

既存のアイドルコンテンツ市場では、各企画会社がコンテンツの流れに制約をかけることができました。 それに対する反応も受け入れるかどうか自由に選択することができたのです。簡潔に言って、ここ最近2~3年の間にリアルタイム放送、アプリやいくつかのコンテンツ・プラットフォームが登場しましたが、その前までは放送バラエティ番組がないならば、企画会社側で作った公式動画チャンネル、SNSなどを通じてのみアイドルメンバーの姿が映された映像を見ることができました。 反応もオフラインやしばしば開かれるオンラインチャットなどを除けば、掲示板に書き込まれたコメントやその他の検索チャンネルで確認できる内容がほとんど全てでした。

 

しかし、ライブのアプリを通じて行われる放送(録画放送を除いて)は同時多発的な双方コミュニケーションが可能なうえ、演出の一種とされる企画会社「検収(訳注:内容確認)」の過程がありません。 したがって、関係者たちもこうした点を念頭に置いてさらに慎重にリアルタイム放送に取り組んでいます。

 

「録画コンテンツであれば大丈夫でしょう。しかしリアルタイム放送が多く、コンテンツを提供しなければならない私達の立場としては、ひょっとして放送中に問題になるほどの部分が生じないよう引き続き注意を払う必要があります。何よりも言葉に気をつけるように毎回話さなくてはいけません。編集せずにその場ですぐ放送するコンテンツだと、メンバーがそこで失言をすればあっという間に広がってしまうのが困ります」
(関係者A)

 

ポータルの規模と関連して、心理的な負担を感じている会社もあります。 このような特徴は小規模事務所か、まだファンドムが中小規模に属するアイドルグループであればあるほど目立っています。

 

「大きなポータルで管理されているので、その中にライブアプリ担当者の方がいらっしゃるんです。 どうやら私達の会社の子たちが放送を頻繁にすればその方たちが顔をよく見るようになるので、そうなるとちょっと今までより気を使ってくれるようです。 だから、最大限回数を多くしようと努力するしかありません」
(関係者B)

 

多くの関係者たちは、共通で「コンセプト」に関する困難を訴えました。 リアルタイム放送であれ録画放送であれ、各グループごとに特定のテーマとコンセプトがなければならないですが、毎回違う内容を考えなければいけないのが負担だという意見が多かったです。 そして企画した内容に他のグループと重なる部分がないかも、きめ細かくチェックすべきだと強調しました。ファンドム間の争いに広がりかねないためです。 加えて、ある関係者は、アメリカやヨーロッパのように遠方から通信をしようとする場合に切断される状況が多いという点も悩みの種だと言いました。

 

関係者たちはビュー(view)の数字と「いいね」に該当するハート数も、所属するグループの人気度をチェックできる重要な指標として活用していました。 もちろん、ここでも人気が多いグループと未だに相対的にファンドムが小さいグループの間に感じる負担感が違ったのです。 ファンドムが大きなグループは、突然リアルタイム放送を開始しても視聴者数がある程度保障されているために、大きな負担を感じないということでした。 しかし、反対にリアルタイム視聴者数を維持するためにSNSを通じてきちんと予告メッセージを伝えているグループもいました。

 

「わざわざSNSで知らせます。 予告なしにリアルタイムで放送を行えば、見逃すファンが多くて...そういう部分がView数にも影響を及ぼすからです。 ハート数もそうですし」
(関係者B)

 

#「○○オッパは? 今呼んでください!」

 

それなら、アイドルグループのメンバー達はどうでしょうか。 リアルタイム放送をしながら負担を感じていないか知りたかったのです。 アプリのリリース開始当初はカムバック前後に放送を試みるメンバーたちが最も多かったですが、開始3年目の現在は非活動期にも徐々に姿現す人々が多くなりました。 1〜2週間に1回づつ特別な企画性コンテンツを作って見せたり、ゲリラライブ放送を試みたりもしています。

 

「個人的な時間を絶えず見せなければならないという雰囲気のために、ストレスを受けするメンバーもいます。 しかし、意外と多くのメンバーたちが負担を感じなくて幸いでした。 言葉そのままに「ただやりたいから」するメンバーたちが結構いるんですよ。 会社で強制したこともないですし」
(関係者C)

 

「ライブ放送以外にも企画して作らなければならないコーナーもかなりあるじゃないですか。 バラエティのために別に時間を使わなければならないんですよね。そういう事はメンバーたちも「自分達に役に立つ」という考えを持っています。 実際にこのアプリで利益を受けたこともありますし。 それをわかっているので受け止めているんです」
(関係者D)

 

しかし、リアルタイムのレスポンスを見ながらも傷つくメンバーがいます。 メンバーたちの人気度に応じて映像のクリック件数に差が出るのは仕方のないことですが、相対的に人気度が低いメンバーが放送を進行する度に、他のメンバーを出演させてほしいという内容のコメントが反復的に掲載されてファンの間でも批判の声が出たりしました。

 

「本当にたくさん見かける書き込みに『◯◯オッパ呼んでください!』というのがあるじゃないですか。 メンバーたちもそのコメントを見て見ぬふりで通します。 でもそれはどれだけ悲しくて気分が悪い事でしょうか。 毎日の放送というわけでもなくたまにする事なのに、毎回そういうニュアンスの文が表示されたとしたら腹が立って当然です」
(関係者D)

 

「大昔にこんなエピソードがあったじゃないですか。 他のメンバーにプレゼントを渡しながら『これ誰々オッパに渡してください』っていう。 それの最新バージョンみたいですね」
(関係者E)

 

他にも素早く通り過ぎていく書き込みの中には、眉をひそめるようなものがたびたび目に付きます。 アイドルに「私がこれをしてくれといったのにどうしてやってくれないの。 私はお金を払って見ているのに」といったように過ぎた要求をしたり、不気味な言葉を盛り込んだコメントが代表的な例です。 この苦々しい場面は「どこでも見なかったスターたちのリアルタイムの魅力」という宣伝文句が意図せず引き起こした裏の面だと思います。 事実このアプリを通じてアイドル自らが自分の自然な姿を中継し、ファンとの境界を壊そうと努力したおかげで、たくさんのファンが喜ぶことになりました。 しかし、「どこでも見られなかった」魅力を見るために金銭的な代価を支払ったファンの中にはアイドルたちに向かって「消費者の権利」を貫こうと乗り出す人たちがいて、これによって開始初期は書き込みを見て凍りつくメンバーたちの姿がかなり目につきました。

 

しかし、いくら金を払ってコンテンツを購入したとしても、これはスマートフォンの画面に映るアイドルと疎通する機会を買ったのに過ぎません。 彼らの人格をお金を払って買ったのではないのです。1:1の対話の雰囲気がする独特なプラットフォーム、主に深夜時間帯に行われる放送という点から、アイドルたちの立場としても、もう少し深い心の内の話を打ち明けたりする場合があります。 しかしながら、この時も彼らが自分の人格をサービスで提供しているわけではありません。 彼らは空間的な制約を越えてファンと挨拶を交わし、TVのバラエティ番組を通じて全く見せることのできなかった自分の音楽家的、エンターテイナー的能力を示すために努力しているだけです。それ職業人としてのアイドルに与えられた役割です。


#「リアルタイム」を共有するということ

 

社会学者のキム・ヒョンギョンは自分の著書「人、場所、歓待(文学と知性社、2015)」でこんな事を言いました。
「名誉は個々の人間の存在に仮想の境界を巡らせ、むやみに近付くことができなくさせる」
そしてErving Goffmanが再引用したGeorge Simmelの言葉を付け加えます。

「この言葉はさまざまな方向に歪んでいて、相手が誰かによって規模が異なるが、個人の人格の価値が破壊されない限りは侵入不可能だ。 個人が持つ『名誉』が彼の周りにこのような種類の境界線を作り出す。 例えばある人の名誉に侮辱が加えられた時に使用される『あまりに近づきすぎだ』という表現は的を射ている。 この言葉における境界線とは、侵犯すればその人の名誉に対する侮辱になる他人との距離を表している」

 

アイドルたちが得る人気を一種の「名誉」と解釈すると、この言葉における境界線とはそのまま「他人」であるファンとの距離だと思います。 そういう次元から見ると、このリアルタイム放送アプリは1:1のアイコンタクトが可能なスマートフォンフレーム、リアルタイムでの書き込みサービスという従来の技術を活用して、アイドルメンバーとファンの間に置かれた境界線の距離をとても小さくする事を可能にしたのでしょう。 しかし、その中にはこの過程をむやみに既成事実化する誰かがいて、彼らは画面の中の相手が人格を持った存在ということを認知しないまま、過度な要求をすることになります。

 

たまに人がコンテンツであるという事実が大きく感じられる時があります。 もしかしたら買う方や売る人も、どこまで売り買いしなければならないかというのが分からないためにこのように困惑した状況に置かれたのではないかと。 いや、それ以前に。恋人の間でもそうであるように、お互いに尊重しあって「リアルタイム」を共有することは、こんなにも難しい事なのです。


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いわゆるNAVERVアプリについての文章でした。
「アイドルのリアルタイムにお金を払う」あるいは「無料で覗き見る」って言われると複雑な気持ちになってきます。大手はがっちりセッティングされた場所から配信する事も多いですが。

 

最近は一般人がリアルタイム配信をするのも特に若者の間では普通のことになっているのでそういう事自体には抵抗がないメンバーも多いのかもしれませんが、リスクがよくわからないままにとりあえず始まってる感じが多少恐ろしくはあります。大抵のアイドルは寮で集団生活をしてるのでまだマシというのもあるかもしれませんが...
(一人暮らしとかだったら色々危ない事も多い気がする)
遠征先からの配信にしても、ホテルの部屋から宿泊先を特定する事も難しくないでしょうし。

 

あと「◯◯の配信が少ないのは◯◯の配信中に××呼んでとか書き込む人たちのせいだ」とかペンドム内で不毛な争いがされてるのも結構見るので(特に動画コンテンツに頼る比重の多い海外ペンの間で)わりとしょうもない事にまで気をつけなきゃいけなくて大変そうだなとも思います。