サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology 訳】アイドルメーカー:⑦プロデューサー・tKAA代表 / チェジェヒョク

【idology 訳】アイドルメーカー:⑦プロデューサー・tKAA代表 / チェジェヒョク

 

『ビハインド・アーティストたちも所属会社の保護を受けなければならないと思いました』

 

byバクヒアon 2017/02/20

http://idology.kr/8497

 

(訳注:文中の太字部分はウェブ公開されてない部分から一部抜粋しています。部分抜粋ですので、全文が気になる方は「아이돌메이커」本誌をご参照ください)

 

華やかに輝くアイドル、その背後には自らの分野でこまめに働いてきたもう一人の主人公たちがいる。 彼らは、K-POPの熱風が吹いていた時期でもあった「韓流」という言葉が固有名詞として使われるずっと前から同じ場所にいた。 そして「アイドルメーカー」はもう少し詳しく違う見方や温度で、アイドル産業に入っている「人」の話を入れて見ようと企画された本だ。 7回にわたって本の内容の一部を抜粋して掲載する。 インタビューの全文は「アイドルメーカー」を通じて確認することができる。


#サウンドエンジニア

 

『エンジニアを始めたのは、プロデューサーになりたかったからです』

 

バクヒア:学校ではサウンドエンジニアリングを専攻されたと聞いています。特にその専攻を選んだ理由はありましたか?直で作曲の道に行くこともできたにではないかと思います。


チェジェヒョク:私がエンジニアを始めたのは、最終的にプロデューサーになりたかったからです。率直に言って当時はエンジニアという職業がどういうものであるかもよく知らなかった。ずっと夢が歌手だったからそちらの方面については知らなかったんです。そしてその時私は大学を中退する事に決めた状態でした。

 

バクヒア:専門的に音楽を勉強したかったんですね。

 

チェジェヒョク:実際カリフォルニア州立大学に志願して、奇跡的に合格通知書を受けました。両親はとても喜びましたよ。でも自分には無条件に音楽をしなければならないという気持ちがあって、最初からそちらには返事をしませんでした。その日から半年ほど、父とは顔を合わせずに暮らしました。しかしプロデューサーになりたいという思いがますます切実になり、ちょうどその頃録音室や機械を扱うことができれば役立つという話を聞いたんです。それがMI(Musicians Institute=米国LAにある実用音楽大学)に入学することになったきっかけでした。


BoAとソンダムビ

 

『PLEDISのハンソンス代表に仕事を学ばなくちゃいけないと思うようになったんです』

 

バクヒア:最初にPLEDISエンターテインメント(以下、プレディス)で働かれましたよね。 今のプレディスの形ではなく、完全な初期の時です。

 

チェジェヒョク:当時も、他の企画会社からはオファーがあったんですよ。 ところが自分には英雄心理があって、大きい会社に来いと言われても耳を傾けませんでした。 会社と自分が一緒に努力して成功したかったんです。 ちょうどソンダムビがデビューアルバムを出した時でしたが、その頃に一緒にするようになったんです。

 

バクヒア:いくら小さな会社といっても成長の可能性とか、いいオーナーがいたりとかそれなりの選択基準があったようですが。

 

チェジェヒョク:そうですね。 ある日家でTVを見ていたら、ダムビのミュージックビデオが流れていたんです。見るやいなや「これはきっと大ヒットする。本物だ」と思いました。 私はソテジ以後に出たアイドル歌手の中では特に好きだったアーティストがなかったんです。 ところが唯一、BoAが好きでした。 実際はBoAさんが好きというよりは全体的な企画とプロダクションを好きだったんですが、ソンダムビのミュージックビデオを見たときに「ああ、これもうまくつくったな」と思ったんですね。 ところが不思議な事に、2週間後にPLEDISファミリーがアメリカに来たんです。

 

バクヒア:それではハンソンス代表と一緒に仕事をしたいと思ったきっかけは何でしょう。

 

チェジェヒョク:私の知り合いがちょっと手伝ってほしいというので、その時私の家を宿舎としてPLEDISの全職員が泊まりました。 ハハ。一ヶ月ぐらいいましたが、ダムビがそこから振付を学びに通ったりもしていました。 ところで私の家に「History Of BoA」と、BoAさんのDVDが一枚あったんです。 ハン代表が私の家でそれを見て「これは僕が作ったんだよ」とおっしゃったんです。 その話を聞いて「ああ、ダムビとBoAを見てプロダクションがいいと感じた理由はこれなのか?」と思いました。 同じ方の手を経たためにそんな感じを受けたようでした。 当然、ハン代表に仕事を学ばなくちゃいけないと言う考えをするようになったんです。


#ビハインドアーティスト

 

『舞台裏で活躍するアーティストが明るく輝く事は、簡単というわけではないんです』

 

バクヒア:今はOH MY GIRLの音楽プロデューサーであり、tKAAの代表職を兼ねてらっしゃいますよね。

 

チェジェヒョク:誰か私のことを整理してくれたらいいんですが。自分でもうまく整理が出来てません。

 

バクヒア:それではまずはエージェンシーの話から伺うのがいいですね。アーティストエージェンシーをやろうという考えは、どのような事から来たんでしょうか?プロデューサーの仕事とは違いがとても大きかったと思います。

 

チェジェヒョク:きっかけは...実はビルゲイツの話を聞いた事です。ハハ。ビルゲイツが言った有名な言葉があるでしょう。すぐに全世界で家庭ごとにパソコンを所有することになるだろう、それが1980年代でしたが、当時は超大型コンピュータを使っていた時代でした。人々が信じないような状況でした。ところが最終的には今、現実のものになったでしょう。アーティストエージェンシーの概念もいつかはそんな風に慣れることでしょう。
私はアーティストをオン・ステージ(on-stage)アーティストとビハインド(behind)アーティストと考えています。立っている所だけが違うだけで、すべて同じように価値のあることをする人だと思うんです。だから「すべてのアーティストが所属事務所を持たなければならない」。これが私の望みであり目標です。ところが今の韓国エンターテイメント業界では「これは何ですか?何の話です?」と思われます。あまりにも見慣れない話ですからね。しかし、現実的に見なければならない部分があります。多くのバックステージミュージシャンやアーティストたちが共感している部分であるはずなのに...舞台上のアーティストは輝くけど、舞台裏で活躍するアーティストたちが輝く事は容易ではない。オン・ステージアーティストにだけ自分の才能を惜しみなく注ぐというのもそうです。同じアーティストではなく、オン・ステージのための一つのツール(tool)として扱われる場合があまりにも多いです。

 

バクヒア:使命感を持っているんですね。実際、複数の人の法定代理人になるというのは思った以上に負担でしょう。

 

チェジェヒョク:もちろん状況がこうなったのはシステムの問題であれ、意識の問題であれ、さまざまな理由があると思います。 しかし、とりあえずは所属会社があるかないかの差がとても大きいと思いました。 ビハインド・アーティストたちもオンステージ・アーティストたちのように所属会社の保護を受けなければならないと見ました。 所属事務所があることで不利益を受ける確率自体を減らすんです。


#OH MY GIRLプロデューサー

 

『大衆との一線をよく守らないといけません。とにかく大衆歌手ですからね』

 

バクヒア:OH MY GIRLの場合、音楽評論家や音楽産業関係者たちがとても関心を持って見守っているグループの一つです。 全体的なコンセプトもそうですし、音楽的な志向が他のグループとはちょっと違うと評価されています。 企画から参加したんでしょうか?

 

チェジェヒョク:はい。 ですが、全体的なコンセプトは一応会社から与えられていたので、私はあとから入って行ったんです。 また、この子たちの振付が良い評価を受けたじゃないですか。 その振付を作ったイソルミさんの場合ダムビの振り付け室で初めて会って以来の知り合いでした。 当時WMエンターテインメントはあちこちで振付師を探していたんですが、私が本当にいい知り合いがいるので一度会ってみたらどうでしょうかと提案しました。 OH MY GIRLの振り付け試案を見せたところ、会社が気に入ってくれました。 結果的に大衆からも良い評価を受けて気分が良いです。

 

パクヒア:OH MY GIRLは曲や振り付け、スタイリングなど、全体のプロダクションではアート的な要素を考慮していながらも、大衆に愛されることができるグループの典型的な雰囲気も一緒に持っているグループですよね。

 

チェジェヒョク:大衆との一線をよく守らなければいけないです。 とにかく、大衆歌手ですから。 (中略)
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あまりにも小さな部屋で音楽を作っていると、「世界は私のことを理解できない」そんな考えに陥りがちですよね。でもそのように生きている芸術家が、世界が自分を理解していないと考える理由はないと思います。そんな方で大衆芸術をされる方はいないですからね。

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大衆に認められたいなら事実彼らが望むことをするのが正解です。 ですから、OH MY GIRLは大衆歌手でありながら私的な感覚を守ることができるラインが向いているようです。 人によってそのラインの位置が少し違うでしょうが...

 

パクヒア:WMエンターテインメントのイウォンミン代表もOH MY GIRLを作るときにそれを重要と考えていたんでしょうか。

 

チェジェヒョク:そうです。 その部分が重要だったんです。 また、OH MY GIRLというグループが自分のアイデンティティを持つために必ず必要な部分です。

…………………………

あまりにも芸術的に行きすぎず、商業的に行きすぎずその中間地点を探せという事でしょう。
…………………………

 

バクヒア:もちろんOH MY GIRLメンバー全員が各自与えられた役割に最善を尽くしているでしょう。その中でも「この子は本当によくやっているな」というメンバーはいるんでしょうか...

 

チェジェヒョク:メンバーを必ず一人選ばなきゃダメですか?困ったな。ハハ。どうしても自分はOH MY GIRLの音楽と直接関連がある人だから、スンヒを挙げるしかないと思います。グループではスンヒが歌が最も上手です。だからスンヒには、私の期待値が高くならざるをえません。それほど望むことが多いんですね。おかげで初期は私に最もたくさん叱られました。それを考えると申し訳ない気持ちにもなるんですが、上手な子に対しての要求が高くなるのは当然の事なので... 仕方ありませんでした。

 

…………………………

 

#KーPOP

 

バクヒア:欧州の作曲家たちを次々と国内に紹介する役割をされています。
OH MY GIRLのアルバムに入っている曲もこの方たちの作品をたくさん採用されていますね。

 

チェジェヒョク:米国の作曲家の方々に始まり、今では英国の方もいらっしゃいます。その中ではスウェーデンの方がとても多いです。

 

バクヒア:最近の韓国アイドルのアルバムクレジットにはスウェーデンの作曲家の名前が頻繁に目立ちます。元々は日本でとても活躍した方なのに、今は韓国でも影響力を育てていっていますね。

 

チェジェヒョク:すごい国ですよ。アイデアあふれる国ですよね。スウェーデンの作曲家たちは一国でのみ活発に活動しているわけではないです。米国でもそうです。Maroon5ブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)、ケイティ・ペリー(Katy Perry)の曲を書いた有名なマックス・マーティンもスウェーデン人です。国家レベルで専門職の人材を養成することに力を入れている。実力のあるミュージシャンを養成することができるシステムが整っているのが羨ましい部分です。韓国では直接お会いしたりskypeで仕事をする事もありますよ。面白いです。

 

バクヒア:米国で長く生活されて、アンドレアス・オベルグ氏のように韓国のアイドル市場に大きな影響力を持ち始めた欧州の作曲家たちとも仕事を一緒にしていらっしゃいます。だからこの質問を必ずしたいと思っていました。韓国歌謡と一般的なポップスの違いは何だと思いますか?

 

チェジェヒョク:答えるのが簡単ではない質問ですが、できる限りシンプルに考えてみます。とりあえずこの国でポップミュージックといえば「外国の曲」でしょう。ところがポップス=popular musicという語源もそうですが、実際は単純に大衆歌謡のことですよね。だからKPOPは、Korean Pop、韓国大衆歌謡ということでしょう。最近では、KPOPを一つのジャンルのように認識していますよね。しかし、私はむしろジャンル自体が以前のように音楽を分ける重要な基準になりうるんだろうかと思うんです。音源サイトに含まれている曲情報を見ると、慌てる時があるでしょう。ジャンルが「KPOP /ダンス/ヒップホップ」こんな感じの言葉が並んでるんです。さらに最近では何人かの方が私に曲を依頼する時に、このような注文をする時があります。 「希望のジャンルやリファレンスを教えてください」というとこんな答えが来るんです。「エキサイティングなヒップホップのバウンスのバラードで」どうしよう、一体どんな曲なんだろうっていう。ハハ。そちらから必要なリファレンスを送信していただいた時に、自分としては最大限似たような音楽を作って送っても、こういうのじゃないと言われたりします。そうするうちに、後でかなりかけ離れたとんでもない感じの曲を例に挙げられる事もあるんですよ。これはジャンルというのが意味がなくなったという事ではないでしょうか。このようにジャンル的境界が揺れるのを見て、私が個人的に下した結論がこれです。 KPOPというのは、業界でよく言われる「뽕(ポン)メロディ」がある音楽だと思います。これを公式のインタビューで使うにはきまり悪い単語と思うのかみんなあまり使いたがりませんけど、業界ではよく使う言葉ですよね。とにかくはっきり言って私の立場からすると「뽕メロディ」があればKPOPです。

 

バクヒア:「뽕メロディ」というと、一般的に考えられている演歌=トロットメロディだとおっしゃるのですか?

 

チェジェヒョク:はい、そうです。考えてみてください。芸能人が「この歌をトロットバージョンで歌ってみましょう」と言って笑う姿を見た事がありますよね?とても甘美なバラードでも、唱法をちょっと変えてトロットように歌えば本当のトロットそのものです。ペンタトニックスケール(pentatonic scale)という言葉があります。そこからいくつかの音を除けば、今話しているいわゆる「뽕メロディ」になるんですよ。外国の曲でもこのメロディーで書かれている場合は、かなり多いです。しかし両方の違いというのは言語的な部分で、個人的な感性も加わるようです。これは実際にあることなんですが、企画の方が海外で完成した曲を初めて聞いた時は「本当に良い曲が来た!」と喜んでるんですよね。海外の作曲家は通常、英語で作詞した歌詞を付けて完成した曲を企画会社側に送り、関係者の方は一旦英語の歌詞がついた曲を聞いて本当に気に入ります。しかし、いざ韓国語で歌詞を付けて子供たちに歌わせると駄目なんですよ。初めて聞いた時は分からなかった「뽕気」が感じられるようになると私は思います。同じ曲でも言語で違いが出てくるんですよ。これはジャンルに関係なく、韓国歌謡が持つ特徴でしょうね。

 

バクヒア:最近では歌い手が韓国アーティストであるだけで、実質的にすべての外国曲を受けて使う会社もありますよね。そのような場合にはKPOPではなく、私たちが思うところの外国の曲、すなわちポップスではないのかと思うんですが。

 

チェジェヒョク:そうですね。外国曲です。それがK-POPと呼ばれる理由は一つですね。アーティストが韓国製という事だけです。

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バクヒア:たくさんの事を色々されてみると、自分が守りたいの価値観というものが揺れる事もあるんじゃないでしょうか。そうならないために、普段常に再確認する言葉はありますか?

 

チェジェヒョク:「I am nobody who know somebody」この言葉です。 「誰かを知っている自分自身は、何でもない人だ」私は、実際に自分自身を特別な存在だとは思っていないんです。ただ「somebody」をつなぐ人だと思っています。多分私が自分自身にさらに集中したかったらエージェンシーを立ちあげたり、プロデュースを引き受ける代わりに自らがプレイヤーになることを願ったでしょう。
私はこうなんです。このようなことを選択したこと自体が、自分の持っている才能が優れていると思っていないからです。私より優れた能力を持っている人たちのためにインフラを用意してあげることが自分が上手にできることだと思う。酒の席で「三国志」の劉備や「指輪物語」のフロドの話をよくするんですよ。私は関羽張飛そして趙雲が必要な人であり、フロドのようにリングを溶岩に落とす任務のために良い友達にたくさん会いたいだけなんです。

 

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ペンタトニックスケール=五音音階の事。1オクターブあたり5つの音階が含まれる。世界的に民謡によく見られる。日本の演歌もそうらしい。

 

뽕기(뽕氣)=ポン気というのは、韓国語のスラングで「ポンチャック(トロット=韓国の演歌の俗称。日本だと李博士が知られてますが)っぽい」という意味の「ポンチャックっ気」を略してポンキというそうです。トロットみがある曲を「あの曲ポンキがあるよね」という風に使うとか。明確な定義はないそうですが、トロットっぽい通俗的なメロディ・こぶしっぽいビブラート・特有の鼻声などをそう感じる人が多いとか。やけに高音を張り上げたがるパートがある曲をポンキっぽいと解釈する人もいるようです。

 

プレディスのハン代表が元々SMのスタッフだったのは有名な話ですが、プレディスのスタッフだった方が今度はプロデューサーになってWMのアイドルのプロデュースをするという、こういう流れが出来ているんだなあと思いました。