サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】アイドルメーカー:⑥ MV監督 GDWキムソンウク

【idology訳】アイドルメーカー:⑥ MV監督 GDWキムソンウク

 

『静かに強くなればいいんです。 そうすれば理解して変わります』

 

byバクヒアon 2017/02/13 

http://idology.kr/8485

 

(訳注:文中の太字部分はウェブ公開されてない部分から一部抜粋しています。部分抜粋ですので、全文が気になる方は「아이돌메이커」本誌をご参照ください)

 

《華やかに輝くアイドル、その背後には自らの分野でこまめに働いてきたもう一人の主人公たちがいる。 彼らは、K-POPの熱風が吹いていた時期でもあった「韓流」という言葉が固有名詞として使われるずっと前から同じ場所にいた。 そして「アイドルメーカー」はもう少し詳しく違う見方や温度で、アイドル産業に入っている「人」の話を入れて見ようと企画された本だ。 7回にわたって本の内容の一部を抜粋して掲載する。 インタビューの全文は「アイドルメーカー」を通じて確認することができる。》


#スポーツ選手や芸術家

 

「ビデオカメラでスケートボードに乗る姿を撮り始めました」

 

バクヒア:先日のインタビューでも何度か言及しましたが、キムソンウク監督の履歴はとても特異ですね。エクストリームスポーツの選手だったのに映像コンテンツを作り始めたのも不思議ですが、その上感覚的なことで定評があるチームを担当しているのが面白いと思います。また、最近、GDWを含めLumpensやデジタルぺディア(DIGIPEDI)などいくつかのミュージックビデオチームが脚光を浴びているでしょう。その中で唯一「専攻」ではない方でもあり。ナムヒョンオ撮影監督は、キム監督を「恵まれている」とすごく褒めておられました。

 

キムソンウク:まったく関係のない人生だったというわけではないんです。元々父は写真館を運営していて、よく知られている大企業の専属カメラマンとして働いていました。そして母はバスケットボール選手だったんですよ。たくさんの事を受け継いだみたいです。そうするうちにIMF経済危機が起こってうちの家族にも辛い時期が訪れました。その時に(スケート)ボードに出会ったんです。運が良かったと思います。突然家庭環境が悪化してグレる可能性もあったのに、ボードのおかげでそういう隙がなかったんです。その時を振り返ると、ハングリー精神というものがどの程度必要かわかります。自分を磨くことに役立ちます。

 

#ミュージックビデオ撮影

 

「ミュージックビデオは音楽を聴けばそれに合ったテンションが自然に浮かびます」

 

バクヒア:アイドルのミュージックビデオと、他のフィルミングの差は大きかったですか。

 

キムソンウク:アイドル作品を撮ったときは恐ろしいというより、新世界を経験している感じだったと思います。スポーツをしているような瞬間があるんですよ。前方にジャンプ台があると仮定したとき、どういう風に走れば自分が気持ちいいのかはわかります。ところが、実際に走り出すまではワクワクした気分と不安が共存してるんですよね。それと同じ感じ。僕は目の前に置かれた状況を運動経験になぞらえて考えるんです。初めての時は難しいと思っても、「こういう状況はあの大会に出た時みたいなものだ。そうだあの時も自分はよくやったじゃないか!」こんな風に乗り越えました。

 

バクヒア:REDVELVET「Happiness」のミュージックビデオはGDWの歴史の中で欠かすことができないですね。このミュージックビデオでGDWを知った方が多いです。

 

キムソンウク:本当に多いですね。

 

バクヒア:ユニークでかなりファッショナブルな点が目を引きますし、そんな要素が全体的な雰囲気を覆っていたのが魅力だったのではないかと思います。また、SMエンターテイメントの立場としては新しいガールズグループのデビュー曲だったのでより気を使ったでしょうね。 GDWのトレンディーさがSMエンターテイメントの新たな挑戦を完全にサポートしてくれた作品だったと思います。

 

キムソンウク:当時私たちのチームのクリエイティブディレクターだった、チェソヨン室長と一緒にファッション関連画像をたくさん見ました。オフィスの窓をいっぱいに覆いつくすほどたくさん集める作業を3日にわたって続け、ただ写真だけ見ていました。歌も聞き続けながら。会社の立場としては新しくデビューするグループだったので、既存のガールズグループとは完全に差別化を図りたいという気持ちがありました。 SMエンターテイメントのミンヒジン理事が希望されていたのも「Something New」、すなわち、「何か新しいもの」でした。(中略)

 

バクヒア:それでは、ミュージックビデオの依頼が入ってきたときに受けるかかどうかを選択される基準は何ですか? 「これは本当に必ずやりたい」という気持ちになる特別な要素みたいなものです。

 

キムソンウク:最も重要な点は、当社のカラーとよく合う音楽を選ぶ事ですね。実際2015年までは音楽ジャンルにとらわれず、できるだけ多様な経験をしてみたかったんですよ。だから本当にいろいろなジャンルに挑戦していたと思います。実際に経験が積もっていくと、我々のスタイルといくつかの楽曲、いくつかのアーティストとの相性の良さをますます感じました。作業の過程で直接アーティストと疎通して共同作業の形で行くのが最も適していると思う。だから、今は最大限GDW、また僕自身とよく合う音楽、アーティストに集中しようとしている。しかし、現実的には互いにスケジュールが合うのかチェックすることも必要です。

 

#アイドルMV

 

「誰でもできる仕事ではないんだという事を感じたきっかけにはなりました」

 

バクヒア:テミンさんが持っているキャラクターもとても独特ですよね。SHINeeの中でも、また歌謡界全体の中でのイメージもユニークです。 GDWが製作した「怪盗(DANGER)」のミュージックビデオには、テミンさんがアイドルとして持ついくつかのイメージが限られた色彩やシンプルなカット構成などで表現されています。

 

キムソンウク:最初に思ったのは「テミンがこれまで見せなかった姿を描こう」というものでした。パフォーマンスやビジュアルも重要ですが、あの子を見ていると内面から漂うどこか風変わりな感じがあるんですよ。そのような部分を表現してみたかったんです。それでセクシーさと力強さという、二つのキーワードが共存できるようにフォーカスを合わせました。僕がアイドルを見てカッコいいと思ったのはあの時が最初だったと思います。あの子が本当に一生懸命でいい子だというのもありますが。 第一に実力がとてもあります。(中略)


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また驚いたのが、ミュージックビデオを撮るときにテイクを複数繰り返すじゃないですか。回が重なるほど疲れていくものですが、そうじゃなかったんです。本当に熱心でした。数日間昼夜を問わず練習をしてきたのに疲れを見せず踊ってくれたと思います。驚きました。とてもきついだろうと思いましたし、誰でもできる仕事ではないんだという事を感じたきっかけにはなりましたよ。

 

バクヒア:作業過程もタイトだったと聞きました。

 

キムソンウク:その作業をしながら編集の実力が本当に上がりました。ミュージックビデオ公開の前日まで、我々のチームとミンヒジン室長とビジュアルアートチームの方がフィードバックや修正を繰り返して完成した作品です。短い時間の中でどのように最高のものを示すことができるのか信じられないほど悩みました。パフォーマンスがとても力強い子ですから。

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バクヒア:ボーイズグループの中では防弾少年団と最も多く仕事されていますね。Lumpensのチェヨンソク監督と一緒に作業した作品もお馴染みです。それを聞いた時は「チームの色がかなり違うようだけど、一緒にやるんだ?」と思いました。

 

キムソンウク:「SAVE ME」は僕達が企画、撮影、演出の中盤まで仕上げて、後半はLumpensの監督がやってくれました。お互いとても親しいんです。子供が同い年というのもあって。

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バクヒア:現場で面白かったり戸惑ったようなエピソードはありますか?

 

キムソンウク:防弾少年団「SAVE ME」の撮影時で不思議なエピソードがあります。その撮影はワンテイクで行われたんですよ。撮影当日、ある程度曇りは予想して行ったんですが、雨が降り止まなくて丸々4時間ほど撮影をストップせざるを得ませんでした。そうするうちに直前にまるで映画のように、非常に短時間だけ雨が上がったんです。本物のワンテイクでOKサインが出ました。ああ、それと僕が防弾少年団の作品の中で一番好きなのは「DOPE」です。

 

バクヒア:初めて「DOPE」のミュージックビデオが出た時インターネットコミュニティとSNS上で素晴らしいと非常に話題になりましたよね。ファンドムの間ではもちろんですが。撮影方式が画期的だったのもですが、グラフィックも興味深かったです。

 

キムソンウク:あれは実はパン・シヒョクPDのアイデアなんです。MCC(Motion Capture Camera)で撮影してはどうかと言われました。自分はMCCを一度も撮影したことがなかったので少し心配でしたが、他の方々にとてもよくしていただいてその時は8テイクくらい撮影して合成する事になりまして、オフィスにいるCGチーム長がグラフィックスを見事に作ってくださったんです。それに「DOPE」のミュージックビデオは途中の合成がとても多かったんですね。その分ひとりひとりに物理的な時間がかかっただけでなく、これをアートディレクションとしてどのように表現するかも大きな悩みでした。とにかく不安要素が本当に多かったんですが、チーム長が数日間夜通し働いて、とてもたくさんのフレームを組んで完成したのがあの作品でした。


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バクヒア:防弾少年団の「DOPE」という作品は、メンバーひとりひとり全員が明確な衣装や空間コンセプトを持っていましたよね。それ故にワンテイクのように見えるようにする過程で考慮すべき点が一つ二つではなかったのではないかと思います。

 

キムソンウク:そうですね。あのMVの衣装はあちらの担当者の方が持っていたコンセプトがあり、我々が引き受けたのは指定された画像をどのように映像で実際に見せるかという部分でした。美術的な面をどのように表現するのか、そこにどのようなシンボル的な要素を入れるのか、どのタイミングでカットを切り替えるかなど... それに、実際にはほとんどの人がインパクトを感じる瞬間はカットが切り替わる瞬間ですよね?でも「DOPE」の場合はカットの概念がないでしょう。だからこのミュージックビデオでどうやったら目を楽しませられるかかなり頭を悩ませました。
(中略)
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カットがない時に感じることがあるような退屈さをなくそうとしました。それぞれのキャラクターを生かすことができる空間コンセプトは、その空間同士の移動で、防弾少年団のパフォーマンスを最大化することができるように後半のカメラワークにインパクトを持たせて。
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とにかく僕にとってはこれは挑戦でした。初めて防弾少年団を正式に引き受けて撮影したミュージックビデオでもあったんです。それにあの子達は本当に一生懸命踊ってくれました。
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バクヒア:防弾少年団とは7本程お仕事をされていますが、そのうちの3本がラップモンスターさんのmixtapeトラックのために作成された作品です。RM氏のmixtapeのMVは、これまでのアイドルシーンで見ることができなかったような独特のスタイルですよね。さらにMV3本が同時に発表されたので、明らかに近い時期に作業をこなされたのではないでしょうか。

 

キムソンウク:実際に3本すべてを2日間で撮りました。

 

バクヒア:ひとりのアーティストのために同時に3つのフィルムを作る時に考慮した点はあるんでしょうか?

 

キムソンウク:一度に見ても退屈しないかどうか。いろいろ考えたんです。時間的な問題やコンセプト的な部分まで考慮した選択をしました。1本だけの場合は最初から勢いのあるイメージだけで通せるのですが。後から起承転結がつくように順番にオープンしていく感じにしようとしました。 「농담(冗談)」が最後になったのは理由があります。パンシヒョクPDがそう希望されたんです。ラップする姿だけを撮影した「覚醒」は当日現場でどのように行くか本当にたくさん悩みました。後に続く二つのほうがメインフィルムではあったんですが、一応「覚醒」はこの3編の中で最初に公開されるミュージックビデオだったんです。だから自分の立場からすると、同じように心配するしかなかったんです。残りの2つの作品をひきたたせなければならないので、これは最もミニマルに行くべきだと思い、その後でそれにはどんな効果がふさわしいんだろうかと考えたんですよ。結局、最終的には音楽がよく聞こえてアーティストがよく撮れさえすればそれがいちばん良いだろうという考えに落ち着きました。

 

バクヒア:スタッフの方々の言葉を聞いていると、監督が防弾少年団と親密で、そのような関係に基づいて作品を作っているんだなと思いました。

 

キムソンウク:本当に防弾少年団の子たちは遊び心に溢れてるんですよ。ハハ、この子達は僕が見てきたアイドルの中でも、本当に礼儀正しいグループです。撮影チームもそうですし、一緒に呼吸を合わせたチーム全員が同じように言いますね。このチームは本当に礼儀正しく、初心を失わないように努力している子達です。おそらく彼らも理解しているんだと思いますが、いつも同じように謙虚でスタッフたちにも礼儀正しいです。
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バクヒア:一緒に仕事をしながらパンシヒョクPDとたくさん話されたかと思いますが、個人的にどのような印象を受けたのか気になります。

 

キムソンウク:パンシヒョクPDは自分が会った中でもアーティストや監督を心からリスペクトしてくださる方の一人です。防弾少年団の子供たちもそういう点が似ていると思います。

 

#強者になる方法

 

「静かに強くなればなりません。そうすれば理解して変わります」

 

バクフイア:GDWチームメンバーたちのために自分なりに努力されている部分はありますか。

 

キムソンウク:個人的に徹夜で撮影するのが嫌いなんですよ。僕自身は実際には大丈夫なんです。監督ですし、一旦完成してしまえば誰が作ったのかという時にキムソンウクという名前が出ますので。ところが、僕たちのチームは背後に隠されているでしょう。実際の現場でも僕たちは雰囲気が最高のチームの一つだと思います。大変な時もみんな笑ってやり遂げようとして。ダメっぽい時や、これはないと思うときは果敢にやめる事もあります。あれ、なんでこういう話になったんでしょう。ハハ。

 

バクヒア:とにかく、その部分は非常に重要ですよね。監督もさっきおっしゃっているように、後ろで作業するスタッフを尊重できないとうまくいきませんよね。

 

キムソンウク:この言葉を使っていいのかわかりませんが。たまに文明的じゃないなと思う時があります。マナーがなく、尊重という言葉を知らない人があまりにも多いです。さらにこんな人もいます。我々の会社の末っ子プロデューサーに対して車駐めておいてくれよって車のキーを投げていくような人がいました。そんな姿を見ると本当にとても歯痒かった。でも、そのような状況だったら自分で自分の能力を証明して見せればいいんです。我々のチームが強くなるほど、その人も態度が変わっていきました。相手が強くなれば態度が変わる人をしばしば見ましたよ。強くなるぞと意図的に声に出しながら働くという意味ではないんです。静かに強くなればなりません。そうすれば理解して変わります。それが一番強いパフォーマンスだと思います。決して悲しんだり、自尊心を挫かれる必要はないと思います。後々理解してあなたに頭を下げると思います。

 

バクヒア:本当にオールナイト撮影は全くないんですか?長い間の慣行のように続いてきた事でしょうし、正直信じられないです。

 

キムソンウク:今は本当に、一切やってないんですよ。人としてやるべきじゃないと思ってます、本当に。昔の自分だったらどうかはわからないですが。でも今は家庭があり、子供がいて、家族を世話する時間が必要なのにそれではね... 繰り返され続けるべきことじゃないと思ってます。だからひとまず、僕たちから少しずつ努力しています。

 

バクヒア:10年のキャリアのあるディレクターの重みが感じられる言葉ですね。

 

キムソンウク:ようやく10年も越えれば、自分の力でできることが多くなるんですよね。

 

(〈아이돌메이커〉, 박희아, 안녕출판사より)

 

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確かにGDWの「Happiness」は本当に良い意味でも悪い意味でも話題になった一本でした。このインタビュー内でもCG部分は下請けに出してるとは言ってましたが、テミンのDangerのMVは公開当日の午前ギリギリまでミンヒジン氏&ビジュアルアートチームと一緒に調整したとのことなので、Happinessの例の画像の件はSMのデザイン部署もチェックしただろうし、その時に気づかないのかな...? みたいな疑惑がわいてきましたが... :)

 

徹夜撮影しないというのは演者のためにも良いことだと思うので、全体の慣例になったらいいなと思いました。KドルMVメイキングといえば「今は朝の4時です」みたいなのがおなじみなので。製作チームは徹夜作業なくならないかもしれませんけど...(あるある)

 

GDWはむしろアイドル以外のMV(DOK2、CRUSH、Primary、Beenzinoからイハイやチャンギハなどまで)の方がキャリアがあるんですが、本文ではそちらの方の話もされていました。