サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】アイドルメーカー: ①ボーカルトレーナー/キムソンウン

【idology訳】アイドルメーカー: ①ボーカルトレーナー/キムソンウン

 

「パフォーマンスの一つや二つを消化するためだけにこれをするわけじゃない」

 

byバクヒアon 2016/12/08

 http://idology.kr/8088

(訳注:文中の太字部分はウェブ公開されてない部分から一部抜粋しています。部分抜粋ですので、全文が気になる方は「아이돌메이커」本誌をご参照ください)


《 華やかに輝くアイドル、その背後には自らの分野でこまめに働いてきたもう一人の主人公たちがいる。 彼らは、K-POPの熱風が吹いていた時期でもあった「韓流」という言葉が固有名詞として使われるずっと前から同じ場所にいた。 そして「アイドルメーカー」はもう少し詳しく違う見方や温度で、アイドル産業に入っている「人」の話を入れて見ようと企画された本だ。 7回にわたって本の内容の一部を抜粋して掲載する。 インタビューの全文は「アイドルメーカー」を通じて確認することができる。》

 

 

#歌の価値

 

『ダンスパフォーマンスの中に入る構造だけを見るから、曖昧な要素となってしまいました』

 

バクヒア:2000年代からはアイドルという集団を一つの重要な文化のカテゴリに分類できるようになったでしょう。 最初から歌手カテゴリーとは違うものとしてみなすべきだという見方もあります。

 

キムソンウン:そのようなやり方の区別はともかく、Mnet「プロデュース101」で子供たちが言っていたじゃないですか。 『これ以外には出来るものがありません』って。幼い頃から芸能事務所に入って来て、踊って歌の練習ばかりしてきたから本当にできるのはそれしかないのです。 そのままだったらその子の人生がここから脱して第2幕に移っていく時、とてつもない混乱を経験することになるでしょう。 私はその瞬間のために本当に多くの音楽を聞かせます。 『みなさん、あなたたちはパフォーマンスの一つや二つを消化するためだけにこれをするわけじゃないの。 音楽という大きな枠組みの中で職業の選択をしたんですよ。 他の人たちだって一曲や二曲は歌うことができるような「歌」といういうものを、あなた達は職業として選択したんですから』このように正確に話してあげなければ。 責任感と専門性に対する訓練を同時にするしかないということです。 だからこそ授業をする時は殺伐とするほど厳しくなるのです。 とても幼いときに芸能界に入ってしまうから、今からその後の2次的行動を共に心配しなければならないのです。 私たちの立場ではこの子たちが産業的な側面で産み出す経済的な効果を離れて、人間と個人の人生自体を見ることが優先されるんですよ。 この子達が歌手であれアイドルであれ、自分たちが欲しがっているアイデンティティをもてるように手伝うべきです。 年を取ってもしっかり自分のアイデンティティを持っていけるように助けなければならないということです。

 

#先生、先生!

 

『有名になってからも連絡が来る子供たちは思ったより多くありません』

 

バクヒア:I.O.Iだけでなく、以前に教えたグループも最近すごく勢いに乗っています。 防弾少年団が代表的ですね。

キムソンウン:防弾少年団ではジョングクとソクジン(ジンの本名)を教えました。 KNK(クナクン)というグループのインソンという子も研修生時代に一緒に学んでいました。 また、今は他のグループでラップをしている子も1人いました。 その子が辞めて、後にテヒョン(Vの本名)が会社に入ってから合流しました。 このように4人を教えているうちに、ジョングクがダンスが上手かったので米国に研修を受けに行きました。 テヒョンは実家が地方なので行ったり来たりしていました。 そういうわけで、一番レッスンを多くした子達がソクジンとインソンでした。 その中でもソクジンが防弾少年団を目標にして教えた子達の中では最も長く、ストレートに成功した子です。 インソンは終盤にグループのイメージとは合わないという理由で会社を辞めました。 お互い気まずい部分はなかったですよ。 その後もずっと連絡してきてくれて、KNKがデビューするとCDを持ってきてくれました。 デビューがちょっと遅れたんですけど、まだ若い友人達と防弾少年団がうまくいっているのを見て、喪失感がかなり大きかったかもしれません。 その時期をよく耐えてくれて嬉しいです。

 

…………………………

 

バクヒア:防弾少年団とはどんな風に仕事をする事になったんですか?

 

キムソンウン:MBC「スターオーディションー偉大な誕生」でパン・シヒョクさんとお仕事をさせていただいたんです。その時に「私たちの会社に来てレッスンしてくれないか」とおっしゃられたのでBig Hitエンターテイメントと仕事する事になりました。しかし、通常はトレーナーが会社に出向し授業するのが一般的ですよね。この子達はむしろ私たちの練習室に来ていたんです。特異な事例ですね。そうしたら、会社の内部にいる方は私を知らないんですよ。後で外で会った会社の方が「ああ、子供たちが外で授業を受けたときに教えてくださった先生ですか? 」なんていう場合も往々にしてありました。利点もありました。会社内ではなかったので、1時間のレッスンのつもりで2時間もできたんですよ。出来ない場合出来るまで捕まえておくことができました。

 

バクヒア:お金を受け取った分だけを働くというのが出来ないようですね、ハハ。

 

キムソンウン:絶対そういう事だけは出来ないんです。企画会社の中で授業する子供たちは、その次に授業を受ける子供たちが待っているから時間が決まっていますが、この子達はそうではなかったので。最初からこの子たちのために夜遅くまでスケジュールを組んでいました。

 

バクヒア:ジンさんを長い間指導されていたとのことですが、実際防弾少年団内ではボーカルの実力で注目されるメンバーではないですよね。むしろ個性のある声で曲にポイントを与える役割ですね。


キムソンウン:最初は演技を勉強していた子ですからね。ところが教える立場からすると、とても教え甲斐のある子でしたよ。最初は演技しかしたことがないので声が出なかったんです。メロディ自体を要するというか。地声程度の低いトーンしか出すことができなかった。おかげで発声練習をものすごくたくさんしましたよ。ところでソクジニの性格が好きです。ハハ。 「ああ先生、なんでそうなるんですか?」表面上は気さくで気にしない性格のように見えますが、練習中はふざけてふるまっていても裏ではとてもしっかりしている子なんです。一度ソクジニが会社で好評を受けた歌があるんですが、ある日、その曲を録音して送ってくれたんです。もともとMRがない曲だったんですよ。演奏をさせたのか、とにかく元々なかったMRを作成して専門スタジオに行って録音までしてくれて。「先生、僕すごく上達したでしょ?」と練習で歌った歌をきちんと記録して送ってくれたのがとても印象的でした。他にも「先生、これも覚えていないですか?これは?」とあれこれ録音してまた送ってきました。最近もカムバックするたびに「今日も頑張れって応援して下さい! 」と連絡が来ます。毎回コンサートごとにチケットを送ってくれたり、全く有難いです。

…………………………

 

バクヒア:防弾少年団の場合はコンサートも数回見に行かれていますね。

 

キムソンウン:はい、時間があれば見に行きました。 あ、海外公演をした時の事ですが、ソクジン本人はその瞬間がとても感動的だったようです。 ステージを歩き回って見ると、観客が目の前いっぱいに広がって見える瞬間があるじゃないですか。 自分の視線から見えるファンの姿を写真に撮って私に送ってきたんです。 ある日は「先生、今日はアメリカのどこで公演しました」そして、その翌日には「今日はまたどこどこで公演しました」というメッセージと一緒に。 その思いが本当に美しいです。

 

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バクヒア:ジンさんは情が深い方なんですね。

 

キムソンウン:はい、本当にね。一度ソクジニが 「僕たちタイで公演するんですが、いらっしゃいますか?」というんです。日程がきつすぎて行けなかったんですが、その一か月後、香港で公演がありますがいらっしゃれますかと再び連絡がありました。それは本当に行くべきでした。用意してくれる心もとてもありがたいし、私たち同士守ってきた義理もあるでしょう。そこで今回は行って来ました。

 

バクヒア:SNSで香港に行って来られた写真を拝見しましたが、それは防弾少年団のライブを見にいらしてたんですね。

 

キムソンウン:はい。あの子としては外国で公演をするのだから、「外国だからいらっしゃれないだろうな? 」と思いつつ招待をしたのではないかと思いますが、私は行ってしまいましたね。ハハ。

 

バクヒア:始まりを共にした先生に、海外で公演する場面を必ずお見せしたいと思う気持ちからでしょうか?

 

キムソンウン:そうだったんです。人の心がわかる子なんですよ。実際、歌手になった後にそのように連絡が来るのが当然ではないんですよ。有名になっても連絡が来る子供たちは思ったより多くありません。ところがソクジニはいつもそうでした。そのような性格を知っているからこそ、そこに招待してくれた意味も分かったんですよ。自分がこんなに大きな舞台で公演をすることになったという事実を写真だけで見せて済ませたくないという。

 

バクヒア:実際驚くべき不思議な事例ですね。

 

キムソンウン:非常にありがたい事ですし、その心を失望させたくなかったんです。招待されるたびに防弾少年団の曲を聴いてますから、聞いたことのない歌はないと思います。ARMY(防弾少年団公式ファンクラブ名)たちは決まった音に合わせて一つになって応援棒を振るでしょう。実は前回のコンサートの時、私は体調がよくなかったんです。それでも行きました。ソクジンが思ってくれる心がとても素敵でしょう。どこ行っても私が防弾少年団やTWICEについて話をするのは、あの子たちが成功しているからではないんです。そうしてくれる子たちなので、話すんです。毎公演ごとにいちいち気を使って連絡してくれるのは本当に難しいことですよね。

 

バクヒア:ところでジンさんは最近の歌ではパートがとてもたくさん増えましたね。

 

キムソンウン:いつもそうでした。今を自分で作っていくんです。音楽も聴いて、練習もたくさんして、また公演もたくさんやったから。更にソクジニを先生が非常によく導いてくださったようです。スタイルもよく作ってくださって。私はちょうど人だけ作って送りだしたという感じ?歌手ではなくただ、人だけ。ハハ。正直私のクラスは楽しくはないんです。音楽ではなく、ほぼ体育の授業だから。

 

バクヒア:TWICEの話といえば、ジョンヨンさんの姉の俳優スンヨン氏のインタビューをしたことがあります。その時妹さんがとても気の毒だという話をしていましたよ。評価が良くない日は家に来てわんわん泣くそうです。そして翌日はまた明るく練習しに行くと言いながら舌を巻いてましたよ。

 

キムソンウン:そういうところなんです。ジョンヨンはまだ若いのにプロ根性があります。そうだからこそ上に行くんです。しばらく前にTWICEが1位になりましたが、受賞後すぐに私の話をしたそうです。仕事中で本放送は見られませんでしたが、他の弟子が持ってきて見せてくれました。その後会社で会った時はすぐに子供たちがわっと抱きついてきましたよ。このようなささやかな経験が、トレーナーの立場としてはあまりにも貴重で、本当に意味のある部分であると思います。

 

バクヒア:過去の活動時には防弾少年団とTWICEが同時に1位候補に上がった事もありますが、妙な気持ちになりませんでしたか。

 

キムソンウン:はい。 「ああ、なぜ2組とも?」そんな感じでした。ハハ。私は誰が勝っても構わないのに、君たちときたら、という....幸せな悩みですね。

 

…………………………


#キングメーカー

 

『リスペクトしてくれるのはありがたく思っています。 私たちがする仕事がどれほど重要な作業なのかを知っているという事なので』

 

バクヒア:ボーカルトレーナーを集めて会社を作られてから、10年近くよく運営されていますよね。 それほど長い間やってきたという話です。 それだけにトレーナー達に対する処遇と関連して、もうちょっと改善されたらいいという部分もあるようですね。

 

キムソンウン:そうですね。 もちろん、ほとんどの会社はとても丁重に待遇してくださいます。 リスペクトがあります。 ところが、そうではないところも多いんです。 いわゆる「パワハラ」的と言うんでしょうか。「お前たちはサービス提供者にすぎないよ」と思う方たちがいます。

 

バクヒア:完全に外部者だという扱いなんでしょうか?

 

キムソンウン:はい。 子供達への授業を予算の中の授業料の金額でしか考えていないんです。

 

バクヒア:さっきちょっと出た話ですが、トレーナーの方たちは望もうが望むまいが幼い練習生たちの人生にとても大きな部分で介入せざる得ませんよね。 ここに会社と先生たちが同時に悩まなければならない部分があるとおもいます。 練習生たちを含めて「アイドル」という立場に置かれている子達が経験する特殊な状況について一緒に考える必要があるんじゃないでしょうか。 だから会社の立場としても、同様の責任を持ったパートナーとして考える必要があるのではないかと…

 

キムソンウン:私はトレーナーたちがアイドルたちにとっていろいろな面で重要な基盤を固めてくれる存在なのではないかと思っています。 新人開発部署にいらっしゃる方たちの役割が重要なのもそのためです。 部署の立場から見ても、そこには歌の上手な子供たちだけが集まっているわけではない。 できる子がいる一方で、歌の実力が当たりではない子供たちがいるとしても私たちが力を合わせて歌手にしてあげなければならないんです。 だから初めにアイドルグループを企画する場にはボーカルの先生とダンスの先生がいるべきです。 ところがもしもその部署にいらっしゃる方たちが先生たちの重要性や意味を全く考慮せず、一つのサービス程度の扱いしかしないのは悲しいことです。 ボーカルトレーニングであれダンストレーニングであれ、これは売買するものではないでしょう。 だから「どうやったらなるべく安くあげることができるか」と考える雰囲気がちょっとでも消えたらいいですね。
(中略)

…………………………

 

バクヒア:単純に安いからという理由でトレーナーを雇う場合もあるんでしょうか?

 

キムソンウン:2013年頃、仕事がかなり減ってきてトレーナーが他にもたくさん増えてきたという事実が身を以て感じられた時期でした。実用音楽というものができたので、ボーカルトレーナーが雨後の竹の子のようにあふれ出てきたんですよ。人数的に多いので、企画会社の立場としてはどこの会社でも手頃な価格で採用することができたと思います。だから、元々仕事をしていた人が立つ場所がなくなりましたね。沸騰から1年程度を過ぎた時期に再び呼び出されて行ったら、音程がかなり壊れてしまった子達が多くてびっくりしましたよ。「これは完全にリハビリレベルじゃない? 」と思いました。以前仕事をしていた先生が再び入って収拾をつけようとトレーニングを開始しましたが、一度音が壊れると戻すのが非常に難しいんです。苦労をたくさんしましたよ。トレーナーになるために、特別な資格試験を作って欲しいです。

 

バクヒア:資格がないでしょう。それで簡単に量産されたんでしょうね。

 

キムソンウン:はい、私は個人的にはトレーナーの実力を検証することができる資格基準やテストのようなものができたらいいと思っています。一度そう肌で感じたので、トレーナーの実力を検証することができるシステムが必要ではないかと思います。しかし、言葉で言うのは簡単ですけど歌の実力を検証するというのは実際には難しいんですよ。一人一人に喉頭の大きさがある上に、歌のジャンルごとに喉を完全に開いて声を出して開閉できなければいけません。事実発声学は博士号があまり出ない学問ですし、もちろん実際にテストを導入するのは当然のことながら難しいでしょう。それでも試みなければならないと思う。そうでなければ本当に実力が検証されていない方がトレーナーになってしまいます。申し訳ない話ですが、大学を卒業したばかりの人達がトレーナーになる場合があります。その中にはもちろん良い方もおられるでしょう。でもそうでない事例が多いんですよ。練習生を幼い時に始めた子供たちが音を誤って学び、音楽を誤って学べば後で修正する事が本当に大変です。私は教えている子達に「左利きが右利きになって、右利きが左利きになる過程みたいなもの」と話しています。頭では理解しても、体は言うことをきかないのが発声というものです。したがって一貫した方法で、時間を十分に有して着実に練習するんです。忍耐も多く必要だし、その過程で常に感覚を鋭敏に鍛えていく必要もあります。ところが何人かの先生は「これはこういう感じだけど、わかるだろう? 」と、とてもぼんやりとした教え方なんですよ。同じ内容を教えても、何人かの子達は不思議と何倍も学習しているのです。十分な資質を持っていた練習生の子供たちが教えを受けた結果、むしろあまり良くなくなってしまうなんてもったいないじゃないですか。誰かは運が良くていい先生に当たったり、誰かは運が悪くて台無しになるなんて、先生によって結果が変わるというのは本当に残念なことだと思う。

 

バクヒア:単にレッスン料の金額でそんなことが起きてしまうというのが残念ですね。

 

キムソンウン:はい、実際にそのようにして音を捨てる事例が本当に多いです。だから悔しい事例が生じないように、教える立場としては言葉通り責任感がなければいけません。ちゃんと教えるために勉強もすごくしなければ。子供によって傾向があるので、内容を詰め込んでも受け入れる態度が違いますし。そのような部分の研究も行う必要があります。私たちがTWICEを指導したときは先生3人がかりでした。各先生たちが持っている本来の気質と、チームの子達がそれぞれお互いに合う部分があります。私は両方をまとめる役割です。無条件にマッチングするわけではなく、トレーナーと練習生の相性のバランスを見ることが大事です。音楽と言いながらただいくつかの曲のコピーをする手助けだけをするなら、それはただの趣味の歌の教室です。歌手としてデビューする子供のためのボーカルトレーニングとしてではなく、アイドルボーカルトレーニングを簡単にお考えの方が少なくないのです。録音の過程で音を機械で制御することができる部分も増えたこともあって、簡単に考えている方が多いんです。「どうせ歌なんかできないんだから、まあこの程度でいいだろう」という風に。しかし、これはあまりにも無責任な話です。歌自体はさておき、個人としてその子の人間性が形成される過程と今後の可能性をすべて見守るのですから、それがどのように成長につながるかわからないんですよ。ソクジンが良い例です。ソクジンがあんなに深く音楽を聞いて開花していくとは私も知りませんでした。テヒョン(V)もそうです。ある瞬間から音楽を素晴らしい知識と捉えて非常に真剣に考えるようになり、たくさん色々な曲を聞いて...そんなに風に変わっていく様子を見ると、私は私が知らない時代のその子たちの事も一方の思い出に残るんです。ひとりの大人として接するようになるんです。リスペクトというのはそういう事ではないでしょうか?この子たちは今は練習生ではなく、フィールドに出て社会経験をしながら多くのことを築いているプロになったということなんですから。このように立派に生きている姿を見たときに、会社の方々と私たちが少しずつ努力した部分がすべて合わさってあの子たちを成長させたんだろうなという気持ちになりました。私たちが基礎の部分をよく作ってあげれば、それを受け継いで本人が歌手としての自覚を持って勉強をするでしょう。
(中略)

 

バクヒア:大きなビジョンを描きながら接近しなければいけないし、その子の5年後、10年後を考えながらトレーナー自らも必死に責任を持たなければならないと思います。

 

キムソンウン:はい、しかしそのように夢中になるほど、逆に私自身の人生はなくなってしまうというのが虚しいというのも、またあります。

 

バクヒア:ボーカルスキルと関連する部分を除いて、授業するときに重く見て考慮される部分は何ですか?

 

キムソンウン:子供が学習する態度がそれぞれ違います。スポンジのようにぱっと吸収する子供もいますが、マニュアルに執着をして応用を知らない子供たちもいるのです。どこかで聞いた内容と今私が教えている授業を組み合わせる子供もいて。性格的にもそうで、両親との関係のために愛情の欠乏を感じる子もいれば、自尊心が強すぎる子供たちもいます。だから同じ内容を教える時も表現をそれぞれ変えていかないと、全員が成果をあげる事が出来ずに誰かは落ちてしまいます。一人一人をよく観察するのです。

 

バクヒア:2010年代にアイドルグループの数がものすごく増えましたが、それ以降多くのグループが解体されたり活動休止になりました。実際にそのような失敗やプロセスを経験すると、その子たちは10代半ば〜後半から20代前半の時点ですでに人生の第2幕を開く必要がありますよね。自己の周辺は今まさに社会生活を始めますよという時期なのに、もう終わりを味わう事になってしまうという。

 

キムソンウン:そうなんです。だから少しでもより神経を使ってエネルギーを注ぎ、私ができることは全部やってあげたいんです。それによってもっとずっと努力してくれるのはわかっているからです。私は全部教えたと思って立ち去りますが、再び何かが起こったらまたそこ行かなくては。「輝やかないアイドル」のくくりに入る前に全力を尽くしてあなたの限界を乗り越えられるような、入る価値のある会社を選択しなさいと言っています。

 

バクヒア:最近はアイドルたちの人間性や物語を強調しがちじゃないですか。これを点数化することについて問題も多いです。

 

キムソンウン:人間性に点数をつける方式の問題は二の次として、ここ最近こういう話が度々出てくる理由は何なんでしょうか。まだ幼い時に会社に入るじゃないですか。社会性というのがまともに形成できていないんです。基本的な礼儀作法や、人間関係を結ぶ方法まで教えてあげなければいけません。当然わかっているに決まってると考えていいほどの年齢ではないですし、そこが辛い点です。

 

バクヒア:歌を教えることよりもっと大変なことでしょうね。

 

キムソンウン:はい。はるかに大変です。こんなにいろいろと気を使ってグループを作ったとしても、その子達たちが順調に行くかどうかというのはまた私の能力外の領域ですし。

 

バクヒア:熱心に教えたグループがうまく行かなかった時のお気持ちはどうだったんでしょう。

 

キムソンウン:Baby V.O.X Re.Vもそうだし、その他にも何グループもうまくいかなかったことはあります。グループを任された会社の中で本当に嫌いな事務所もあります。私以外にもとても多くの方たちが嫌っていますし、その会社と一緒に仕事したという事実をどこにも話さないくらいです。傷になると考えて言及しない時もあり、働いてお金を頂いたので被害者というわけではないというのもあり。私は当時その会社に所属している子達と実際ほぼ合宿状態で、私がそうしないとその会社と仕事できなかったというのもあるんですが....その子達に「絶対にここの事務所じゃないと駄目なの?ここ以外の会社に行けるならそうした方がいい」と言っていました。あなたたちなりに全力を尽くして自分の限界を乗り越えなければ入ることができないような会社を選べと言いました。入りやすい会社は出るのが難しいというのがぴったりな言葉でしたね。しかしながら若い時はそのような話は耳に入りませんし、早くデビューしたいですからね。最終的にデビューしたけれど結局うまくいかなかったし、私はその子達があまりにも惜しいんです。ポジションを決めたのも私でしたし、私費をかけてレッスンを受けることにしたメンバーもいました。実際にもっとよくすることができる子供たちでした。しかし事務所が業界で信用をあまりにも失っていて、誰も助けてくれる人がいませんでした。一度助けてくれる誰かが現れたなら、それに続いてしっかりとした人間関係の輪を構築することが必要なんですが、その会社はそうはしなかったんです。すべての関係が使い捨てでした。
(中略)

最近はA&R(訳注:アーティスト&レパートリーのこと。アーティストと外部作曲者などのマッチングなどをする)も戦いですよね。より良いコンセプト、もっといい歌を、とこのように戦うのに肝心のその重要な人材がいないんです。A&Rの方たちが来て実力のあるパフォーマンス・ディレクターの方を選択し、それほど能力のある方たちが参加したらどういうコンセプトでも一応はいいものを選んで出すつもりです。そうした用兵術をよく使うことのできる社長の存在が必須なんですよ。制作者の方がそれをうまくできなければ、子供たちが事務所にいても可哀想なだけです。君は1年間でいくら稼いでるのって聞くと、涙が出ますよ。これは私が言及したグループだけに該当する話じゃないです。他の子達の話も聞いてみると同じです。1年に100万ウォンも稼げないです。男の子のグループで5年間一銭もお金をもらえなかった子たちもいます。会社から出られないのかと尋ねると、契約に縛られていてできないと言うんです。残念な事例が本当に多いです。でもこういう問題は、私ひとりが無料で何回か仕事を受けたからといって解決する問題ではないじゃないですか 。無力さを感じます。子供たちの大きな助けにはなれないことを知っているから。

…………………………

 

#アイドルの寿命

 

『アイドルの寿命で歌手の寿命が終わってはいけない』

 

バクヒア:少女時代やワンダーガールズがロングランできたのも、彼女たちが積み重ねた年輪を大衆が支持していたからだと思います。

 

キムソンウン:10年目になった少女時代に年齢の話をしながら、「今は新しいアイドルが見たい」と言う事はないと思います。 少女時代はもともと持っていたアイドルとしての顔を引き続き追求するのもいいし、それ以上に彼女たちが持つ音楽的な能力、または様々な才能を実現させることができたらいいということです。 そうしているグループなので地道に愛されているのです。ワンダーガールズも同じです。 このグループがバンドとして出た時、私はすごく支持しました。 その時ちょうどソンミを手伝っていたんですがこう言いました。 多分ワンダーガールズがアイドルたちにとって新しいスタートを可能にしてくれるんじゃないかと。 多分本人たちはとても大変だったと思います。 歌うのと踊るのでも忙しいのに楽器まで扱わなければならないから。 ですが私はずっと「あなたたちは本当に良い仕事をしている」と強調しました。 彼女たちがアイドルというアイデンティティを超えて音楽家として新たな岐路に立ったからこそ、新たな時流を作る門を開いたんですから。 とても良い結果が出そうだと話しましたっけね。

 

(〈아이돌메이커〉, 박희아, 안녕출판사より)

 

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「プロデュース101」や「神の声」での姿が印象的だったキムソンウンさんですが、生徒思いというのが伝わるしインタビューの中で色々業界では言いにくそうな事もガンガン言っていて、読んでいてキム先生ー!みたいな気持ちになりました。
本インタビューでは他にもプデュの事やアイドル業界の事について言及されています。業界人みんなに嫌われてるという事務所というのがどこなのか、気になりすぎる。