サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

BLACKPINKのイメージする女性像?

 

nenuphar.hatenablog.com

 

 

前出の記事を読み、BLACKPINKの諸々を見て思った事など。
(だらだらと長くなってしまったので下の方にまとめてみましたけど、全然まとまらなかった)


個人的には「火遊び」を聴いて描きたい女性像について、2NE1との違いがよりはっきりわかってきたように思いました。TEDDYの女性の歌がとても好きなのですが、それは歌詞に込められた女性像が自分から見て絶妙にリアリティを感じるからです。2NE1は自立していて屈しない女性が思わず憧れてしまうような自我とカリスマ性をもっているけれど、それでも人間だから愛したり自分の姿を振り返った時に弱くなる部分もあるという、一般のアイドルファンの年齢層(中高生と想定しています)のリスナーにとっては力を与えてくれる憧れの少し年上のお姉さんというイメージでした。
一方のBLACKPINKはまだその域に達するほどの人生経験もなく、好きな相手に全てを投げ出してしまいそうな純粋で危うい面もあるけれども、一方で大人をも惑わせてしまうような大人の側面もあり、つまりまだ「少女」と「大人」の中間の曖昧な時期を感じます。最近の女性グループでこういう思春期と成人の狭間の一瞬をリアルに切り取って見せるようなグループは、振り返ってみると意外にないような気がします。最初から大人のセクシーさや特異なキャラクターが設定されてデビューする一部のグループを除けば、大抵の女子アイドルグループは「少女」としてデビューし、キャリアを重ねていき「大人の女性」へとコンセプトが変化する過程においては過渡期として扱われやすい時期のように思われるからです。

 

TWICEもヨジャチングもレッドベルベットもI.O.Iも、タイプは違えど基本的には「まだ少女」のイメージで、それこそがデビューしたての女性アイドルに求められるものではないのか?という考え方ももっともだと思います。しかし今の一番のYGらしさとは何か?と考えてみると、それはあくまでも「リアル」であり「等身大」という事なのではないかと思います。WIN組で言うなら10代のメンバーもいるiKONはまだ「少年」のイメージであり、主に曲を作っているB.I.とBobbyの感性がそのまま若さとして背伸びせずに等身大に歌詞に反映されている感じですが、少し年上のWINNERはデビュー時から既に「少年」から「青年」への移行期であり、特に歌詞に現れている自己肯定と自己否定を行き来する内面の揺らぎは、実年齢よりも多少背伸びしたがっている部分も含めてそれもまた等身大なのではないかと思います。WINNERは「新人なのにフレッシュな雰囲気がない」「年齢にしてはイメージが大人っぽすぎるのでは」という批判をされたりもしていますが、やはりメンバー当人が置かれている「狭間の時期」を幼ぶる事なく見せている事で、逆に大人からはそう見えるのかもしれません。BLACKPINKにしても彼女たちの実際の年齢はちょうど少女から女性への通過点で、そしてそれは女子アイドル業界ではマニア的ファンタジーの薄いリア充臭という点で、更に少しニッチなのかもしれません。
しかし、以前より韓国のアイドルファンも年齢層が年々上がってきている事を考えた時、本来ならアイドルを卒業するはずの大学生くらいの層にとってはいちばん身近でリアルに感じられる存在なのではないかと思いました。そういえば彼女たちのヘアスタイルやメイクはちょうど同じ年頃の女子もリアルに真似したくなりそうですし、とかくアイドルが醸しがちなやりすぎな部分は抑えがちで愛玩したくなるようなお約束のアピールもなく、しかしスタイリッシュではある。いわゆるあまり女子アイドルに興味がない「マグル」層にこそ男女問わずアピールするものなのかもしれません。そしてそれがやはりアイドルファンが「ハマる」にはちょっと物足りなく見えるとしても理解できます。


BIGBANGや2NE1は音楽とイメージの両面でYG=SWAGというイメージを作り上げてきましたが、今やYGはその時期を脱してネクストステージへと姿を変えつつあると思います。それはヒップホップの中でもポエティックでポップス寄りなEPIKHIGHの移籍やアコースティックポップスデュオであるAKMUのデビュー、そしてYGドルの定型イメージを覆したWINNERのデビューのさせ方にも現れているように思います。おそらくYGは「こういうのがYGっぽい」というラベルづけをされるのがめちゃくちゃ嫌いなんだろうなと。そもそもBBや2NE1のデビューも「アイドルグループとはこういうもの」という固定観念を打ち破るような出来事でしたし、二者の成功によって型破りの存在すら定型になった世界では、そこに安住するような事こそがYGとしては避けたい事なのではないでしょうか?
とはいえYGは全て社内制作ですし、同じ面子がプロデュースをしていれば曲の雰囲気が似てしまうのは避けがたい事で、しかもおそらくブルピンに関しては故意にディレクティング(声の出し方)を寄せてきたり、2NE1をイメージさせるワード(今回だとfireでしょう)を入れてきていると思われるのでその点は言われるだろうという事は想定済みでしょうし、あえて似たように聴こえる音を違う装飾と本質的には異なる中身=歌詞で提供して「YGらしさとはなんなのか?」と世間へも問いかけている気すらします。

そういう意味ではBLACKPINKの見かけがいくらアイドルらしいとは言っても、その売り方が他事務所が行なっている「普通の」アイドルの売り出し方に完全に迎合する事はないでしょうし、その必要性もまだ感じていない気がします。TVバラエティの露出などはこれから徐々にあるかもしれませんが、YGドルの本質がリアルさとライブステージにあるとするならば、目立つステージングの派手な振付やあえてキャッチーなポイントダンスを入れる事はなさそうです。ステージングや振付の構成の運動量が多くなるほどライブコンサートの場では生歌の割合は減らざるを得ないし(ウェブ上で一瞬で興味を惹きつける必要のあるMVや数曲しか歌わないTV番組やイベントではもっとも効果的な手法でしょうが)若いうちから全て生歌でコンサートの出来ないアイドルというのは、YGがいちばん望まない姿であるような気がします。
これは良し悪しではなく、アイドルという仕事の多様性においてどこの部分を最も重要視するのかというポリシーの違いに過ぎないと思いますが、アイドル業界においてはYGの方がむしろ異質ではないかと思います。

 

YGはここ数年特に独自のリリース方式(これは安易に曲数を増やせない事をカバーするためもあるかもしれませんが、Kドルでは特殊でも割と日本に近い形式な気がしてます)やプロモーション方式が目立ちますが、果たしてこれが吉と出るのかどうか、BIGBANGが完全体で活動できなくなるであろうこの先数年間で結果が出てくるのでしょうか。

 

 


<まとめ>(られてない)と蛇足

・ブルピンのイメージは少女と大人の中間期だと思う。

・TWICEの曲に出てくる彼氏は同級生かせいぜい2・3個上の先輩っぽいけど、ブルピンの場合は10歳くらい上の大人の男が浮かぶ

・カリスマ性がありしっかり者のどこか生真面目な姉である2NE1と、そんな姉を尻目に愛され女街道をゆく妹のブルピン(しかしやはりどこか強かさもある)?

・ステージングについて言えばYGがTTみたいなポイントダンスやヨチンみたいな振付をするわけないだろうという。恐らくダンスの能力で言えば今まででデビューした全組がいわゆるカル群舞をこなせる力は十分にはあると思うが、デビュー以降のプロになってからの仕事においてはあえそういう要素を排除しているのがはっきり傾向として感じられる。恐らくライブでああいう定型のパフォーマンスをしながら生歌で2時間歌い続けるのは現実的に無理だからではないかと思う。
(実際ゴリゴリのフォーメーションダンスを踊るグループのライブはいわゆる口パクの曲も多い。2時間以上の長尺になればそれは当然の事)

・TEDDYはそもそも韓国内の曲の流行は見ていないと思う。元々海外にファンが多い事務所でありデビューの瞬間から欧米圏のオーディエンスの注目を集めるのは間違いないわけで、最初から世界的な音楽の流行ジャンルを意識するのは当然ではないか。

・ブルピンの売り方は今のところ神秘性をキープしているが、これって元々はSMのお得意の方式なわけでレッドベルベットなどもこっちの方に近いはず。最近リアリティサバイバル出身のグループや親しみやすさがウリのグループが人気ゆえに、あえての逆行という気もする。アイドル歴が長くなるほど素の部分と言うのは嫌でも見えてくる時代なのだし、最初からモロ見せばかりというのも消費されるスピードが早くなるだけなのではないか。バラエティで素を見せて人気を取る方法は事務所自体がマイナーだったり注目度が低い新人には有効ではあるが、事務所自体にファンがついていて先輩グループのファンからの恩恵がある程度望めるグループにとっては、必須ではないのだと思う。

・シングルを刻んで出してアルバムにまとめるというここ最近のYGの方式は韓国では珍しいけど、どっちかというと日本に近い気がする。YGはアルバムを埋めるためだけに曲を外注しないので捨て曲と言えるようなものはほぼないが、曲数が少ないのでこの方式をする事で活動回数を増やせたり期間を延ばせるというのはありそう。

・デビューして即いくつかのメジャーブランドの広告の仕事が入っているあたり、恐らくYGという事務所そのものに対するファッションアイコンとしての信用度が高いんだと思われる。中小事務所であれば全員がメジャーブランドの広告に採用されるというのはデビュー後しばらくして1位をとってある程度のファンドムができなければ来ない仕事だと思うし、実際特に一番欲しい仕事のジャンルのひとつではないかと思う。シーズン単位で契約できれば安定した収入源だろうし、一般への露出も多い仕事だから。