サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】インタビュー:EXO、REDVELVET、VIXXの作曲家アンドレアス・オベルグ/その①

インタビュー:EXO、REDVELVET、VIXXの作曲家アンドレアス・オベルグ/その①

 

byキムヨンデ on 2016/10/01

 

인터뷰: 작곡가 안드레아스 오버그 (Andreas Oberg) ① | Idology.kr

 

スウェーデンストックホルム出身の作曲家アンドレアス・オベルグは、EXO「Stronger」、REDVELVETの「7月7日」、SHINeeの「Romance」、f(x)の「Glitter」など、数多くの曲を作曲しており韓国アイドルの音楽ファンにはおなじみの名前である。現在ヨーロッパ、アメリカ、韓国と日本市場で同時に活動する彼を、大衆音楽評論家でありidologyライターであるキムヨンデがインタビューした。作曲家が直接打ち明ける音楽作業後期、そしてアイドル音楽とK-POPの様々な興味深い話を聞くことができた。

 

 

キム・ヨンデ:音楽作業に忙しいでしょうにインタビューに快く応じてくれてありがとうございます。本格的な話をお伺いする前に、まずあなたについてもう少し教えていただけますか。どのように音楽を始め、そしてどのような音楽を聴いて影響を受けたのか等。若いときからギターを弾き始めたとききました。

 

ベルグ:7歳の時初めてギターを贈られ、練習し始めました。 両親はミュージシャンではなかったけれど、祖父はギターやピアノをひいてハーモニーのようなものを作ることができるほど才能のある人だったので、多分一世代を渡って才能が伝わったんじゃないかと思う。 最初はクラシックギター曲で始めましたが、他の先生のおかげで当時にLAで流行したブルースやフュージョンのようなポピュラー音楽を学べて、それ以降はポップスの魅力にはまりました。 16歳で音楽学校に入学したけど、例えるなら高校と大学の中間くらいの感じです。

 

キムヨンデ:北欧は音楽教育システムが米国やアジアとはかなり違うそうですね。

 

ベルグ:そうですね。スウェーデンだけにある独特なシステムといえます。 とにかくそこで初めて、正統派のジャズを勉強するようになったんです。 ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)やジョージ・ベンスン(George Benson)はもちろん、パット・メセニー(Pat Metheny)やリー・リトナー(Lee Ritenour)のような現代的なフュージョンジャズミュージシャンたちも一緒に。 卒業後にはストックホルムにある王立音楽学校に進学してもっと専門的に音楽を学び、その時代から演奏者としてはかなり充足した10年間のキャリアを過ごせたと思います。 レス・ポール(Les Paul)、トゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)など、偉大なミュージシャンたちとの公演を行っており、イタリアの有名なポップ歌手のエロス・ラマチョッティ(Eros Ramazzotti)とも作業した事があります。

 

キム・ヨンデ:作曲家としてジャズではなくポップスに本格的に入門するようになったのはいつごろですか?

 

ベルグ:2010年ごろですが、そろそろ公演生活が退屈になった時期でした。全世界を回りながら毎日曲を演奏して生活するような生活に疲れ果てて、やめる考えをしていた時に一つの会社から提案を受け、TV広告のためのバックミュージックを作業することになったのが発端だった。 知人を通じてJPOP関係の方に紹介されましたが、ジャズミュージシャンとして私が駆使する音楽的なスタイル、例えばハーモニーとコードなどを複雑に扱う方式などを気に入っているようだった。 徐々に仕事量が増えて行ったし、日本国内で作った曲がヒット曲の仲間入りをし始めました。 

 

キム・ヨンデ:あなたのホームページを見てみると、英語のすぐ下に韓国語と日本語で名前を表記しているのが印象的でした。一見して、東アジアのポップ市場のへのあなたの関心を容易にのぞかせるように見えるK-POPには、いつ最初に足を踏み入れたんでしょうか。

 

ベルグ:2012年だと記憶してますが、VIXXという新人グループがアルバム制作をする時に「Starlight」という曲で参加することになりました。 もう一人の成功的な作曲家であるエリック・リボム(*Erik Lidbom:VIXX・SHINee東方神起などの曲を制作した事のあるスウェーデン人作曲家)と一緒に作業したが、VIXXのファンがこの曲をこよなく愛してくれたために彼らのファンクラブ名をこの曲から取ったと聞きました。

 

キム・ヨンデ:VIXXのデビューシングルに収録されている曲ですね。 典型的ではなく非常にウェルメイドなトラックだなと印象深かったです。

 

ベルグ:一聴しても分からないかも知れないが、非常に「音楽的な」完成度のある音楽だと思う。 複雑なコードチェンジも多く、進行もありきたりではない。 こんな風にちょっと難しいスタイルの曲がいい反応を得るのを見て「おっ、自分のスタイルをポップスで十分に発揮することができるんじゃないか」という考えを持つようになった。 これは余談ですが、毎回似たようなの数個のコードだけを使って反復的なイメージの音楽を作る、最近のアメリカ大衆音楽の市場とは異なる点だと思います。

 

キム・ヨンデ:KPOPには米国の大衆音楽よりももっと多様な音楽に対する要求があると思われますか?

 

ベルグ:私の個人的な考えですが、韓国と日本の音楽ファンの耳の方がより洗練された音楽によく反応するといわれている。 そしてこうしたリスナーの厳しいテイストと要求は私たちのような作曲家が韓国の作曲能力と編曲を整えて発展させるのに刺激になることもある。 特にKPOPの多様さと高い完成度は非常に印象的だ。 彼らがボーカル練習を含めて最後の完成品を作るまでかける努力は並大抵ではない。 音楽産業に注いでいる彼らの金と時間を考えると、現在のKPOPの高い完成度は決して不思議ではない。 同時に、これは音楽に対して多くの資金を投資するファンがいるから可能なのだとも思う。 良い方向に行っているのではないかと感じている。

 

キム・ヨンデ:日本と韓国で活動を試みている、また現在進行形で活動しているあなたとってはその両市場、あるいは文化の違いが格別に感じられるでしょうね。 作曲家であり、プロデューサーであるあなたにとってJPOPとKPOPの最も大きな違いは何だと思いますか?

 

ベルグ:フレージング(歌ったり演奏をするときに楽譜上の音が、特定の長さやリズムで構成されて意味のあるメロディーにとして伝達される方式のこと)の差が決定的である。 KPOPの場合には、若干よりもっとリズミカルな音楽、より多くの16分音符が使われてシンコペーションが強く感じられる、つまり「ファンキーな」音楽をより好まれる傾向がある。周辺にKPOPの作曲をする新人作曲家たちがいるときは、彼らに90年代のR&B音楽を聴いて参照するように助言したりする。フレージングの側面から見たときに、現在のKPOPに最もよく似合う音楽だからである。 JPOPを聞いてみると、彼らはより平易で直線的なフレージングを好むことがわかる。ほとんどの伝統的なボーイバンドやアイドルの音楽がすべてそうだ。

 

キム・ヨンデ:フレージングは特に言語に応じて他の感覚を与えるはずですが、韓国語と日本語の違いがそのような音楽の違いや好みを作っていると思いますか。

 

ベルグ:もちろんだ。韓国語の発音はシンコペイションが強い音楽、ファンクやヒップホップなどのブラックミュージックに更に自然に合うと思う。

 

キム・ヨンデ:本格的にあなたが作ったアイドル音楽を話してみましょう。 一番最近に作業した曲から始めましょうか。 まずEXO「Stronger」。私の初印象を言えば、特にジャズ的なあるいはソウルフルな色彩が強いということでした。 各種のジャズ的なコード進行と和声、とてもリラックスしたテンポにのせた12ビートパターンなどがとても洗練されてますが、同時に一見するとKPOPにしてはとてもジャズっぽすぎるのではないだろうかという気もして(笑)。どんな経緯でこのようなスタイルの音楽をEXOにあげようと構想することになったんでしょう?

 

ベルグ:SMとの作業は通常ソングキャンプ(song camp、あるいはwriter's camp)というシステムを通じて行われます。 韓国側のチームの作曲家数人が1-2週間の間、一緒に集まってSMエンターテインメントの要請によって特定のスタイルの曲を一緒に作ったりする作業ですが、しばしば韓国の作曲家たちと同席したりもする。 今回はEXOのためにバラード系の曲を一つ書くように頼まれた。 それでグスタフ・カルストゥロムと作曲家イジュヒョンと一緒にピアノとギターで即席演奏をしながら曲を書き始めた。 私たちが意図したのはとても音楽的でありながらも難解ではない、そんな曲を作ることだった。

 

キム・ヨンデ:言葉のように簡単なことではないですよね。 特にインパクトが強い音楽が主となっているアイドル音楽では。

 

ベルグ:例えば、とても多くの作曲的な技巧や厳しいコード進行といったものを活用する際には、その代わりにできるだけシンプルで聞きやすいとか、あるいは記憶したり真似しやすいメロディーを乗せてバランスを取るといいです。 例えば、(直接歌を歌いながら)"feeling stronger"と繰り返される部分のようにインパクトがあって容易な部分を繰り返すんです。 "Everytime I fail、Everytime I fall"のように'fail'と'fall'の単語を頭韻にマッチングして作詞をしたのも同じ理由です。 リスナーにタイステ難しい構成をもう少し聴きやすくするためです。 70年代のスティービー・ワンダーの音楽を思い出してみると、音楽的にはそれなりに難解だが、単に難しいようにするためにその曲を作ったのではなく、いいメロディと非常に自然なコード進行を持っていた。

 

キム・ヨンデ:この曲は何よりもボーカル的な側面が強調されかねない歌だ。 技巧とか感情とか、歌手の立場からは色々な面で歌うことが簡単でなかったようです。

 

ベルグ:先日、あるTVショーにEXOが出てこの曲をライブで歌った動画を見た。 アドリブやR&B的な技巧等といった部分で非常に印象的だった。 今まで彼らが見せてくれた最も立派なボーカル・パフォーマンスの一つではないかと思っている。 私自らもこの曲についてやりがいを感じ、特に100万枚以上販売されたアルバムの収録曲という事実もまた誇らしい。

 

キム・ヨンデ:後ほどまた似たような言及をする予定だが、たびたびあなたの曲にうかがえるアコースティックな面、こじんまりとしていながらも叙情的な展開が印象的だ。

 

ベルグ:韓国の作曲家三人で本当に小さな部屋に集まり、簡単ながらも平凡な構成で作った曲だ。 ピアノ、シンセベース少し、そして多様なボーカルハーモニーで構成されている。 華やかな編曲とかエッジのある伴奏のようなものを全く考慮せず、ただ平凡ながらも美しいメロディーを作ろうと努力した。

 

キム・ヨンデ:このようなジャズ的な雰囲気とボーカルが強調された音楽を思い浮かべてみると、やはりあなたが作った「夜と星の歌(Starry Night)」についてうかがわざるを得ないでしょう。 オニュとイ・ジンアがデュエットで歌った歌ですね。 非常に美しく、また一方では回顧的であり、編曲においてはジャズ的な感じが調和しています。 例えば正統派のジャズというよりは、アコースティックな感じにGRPレーベルのフュージョンジャズのような感じを切り継ぎしてまるでデイブ・グルシン(Dave Grusin)やデビッド・フォスター(David Foster)がしばしばそうだったのと同様のポップな雰囲気を出したんだなと思いました。

 

ベルグ:偶然ですが「Stronger」と同じくソングキャンプを通じて作った歌でした(笑) 今年4月に作業しました。 オニュについてはすでによく知っていたが、イ・ジンアについては何の情報もない状況だった。 SMの方でイ・ジンアと韓国側のヨーロッパ系作曲家達とで一緒に曲を作るという計画が先に提案された。 初日はイ・ジンアが「KPOPスター」という番組に出演して演奏する姿だけを見ましたが、自作曲を歌いながらピアノを弾く姿が非常に印象深く、非常に才能のあるミュージシャンだと思った。 数日後、彼女が私たちのスタジオを訪れて共同作曲家であるサイモン・ペトゥレン(Simon Petren)、そしてイ・ジンアの三人で一緒に曲を書き始めた。 ジンアは英語を全く話せなかったが、私たちにも特に通訳もいなかったため、ただいくつかの単語と音楽だけで対話を続けなければならなかった。 たまに、グーグル翻訳機の力を借りたりもしたが (笑)

 

キム・ヨンデ:音楽を深く理解している人たちの間でなら演奏だけでも十分に対話が可能でしょう。

 

ベルグ:才能のあるミュージシャンでコード進行とかそのような音楽的なディテールをよく理解していたので、困難なく作業することができた。 三人が座って自然に演奏したり、歌いながらメロディーの一つ一つを完成させ、二日めにはいくつかの修正を経ながら我々が完璧だと思った最後のバージョンが完成した。

 

キム・ヨンデ:メロディーが本当に美しい。 「みんな眠る沈黙の夜を超えて」という部分ではおぼろげさも感じられる。 イ・ジンアはもちろん、オニュの声も軟らかくて純粋な感じをよく生かしている。

 

ベルグ:曲を完成してから、スタジオに遊びにきた全員がその曲のリフレインにハマってずっとその部分を歌っていた。 (歌を歌いながら)「私が暗い夜になると…」(笑)全体的にややノラ・ジョーンズの音楽のような雰囲気を出したかった。 曲を完成してから私のギターソロとジナのピアノソロを加えました。

 

キム・ヨンデ:ボーカル中心の音楽は何よりボーカルディレクションが重要です。 直接ボーカルディレクティングをしたりするんでしょうか?言語の違いで難しいこともあると思いますが。

 

ベルグ:ボーカルディレクションにはとても関心があるし、また重要だと思います。私はアーティストに直接会って録音するケースがほとんどないため、ボーカルディレクティングを直接してませんが、スタジオでデモバージョンのボーカリストと作業する際に詳しいガイドを作成して送っており、大半の場合は韓国でも私の編曲がそのまま採用されます。 主に様々なメロディーでハーモニーを積み重ねることができる編曲が好きだが、アイドル音楽の場合は大抵は様々なメンバーが一緒に歌うタイプなのでそのような方式が役立つことがあります。 「Stronger」のように原曲はほとんど英語歌詞で作業されるので、いったん曲を送った後は韓国でハングル歌詞に合ったやり方でボーカル編曲を調整して変えることもある。 多くの場合、デモの英語歌詞をそのまま使ったりいくつかの部分だけを生かしたり、翻訳して載せたりもしている。 「夜と星の歌」はそもそも最初から英語の歌詞はなく、イ・ジンアがスタジオで直接ハングル歌詞を付けたケースです。 

 

(2へ続く)

 


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Overg氏は日本ではジャズギタリストとしての方が有名かもしれませんが、作曲家としては日本のsoundgraphicsに所属しており、日本と韓国両方のKPOP楽曲に参加されています。
特にSMやJerryfish(主にVIXX)とのお仕事が多いようです。
(個人的にはStarry Nightがとても好きな曲です。イジンアはKPOPスター4に出ていたシンガーソングライターで、今はユヒョルのアンテナミュージックに所属している方です)

 

https://soundgraphics.net/creators/andreas-oberg/
http://soundgraphics.net/interview/andreas-oberg-interview.html

本インタビューでも触れていますが、上記リンク先の日本でのインタビューではJPOPを作曲する時の言語的に気をつけている事などを語られています。Kドルの日韓楽曲の雰囲気の違いについてはよく話題に出るところですが、好みやセンスといった漠然としたものではなくテクニカル面で語られていますので、両方あわせて読むとなるほどと思う部分が多かったです。
例えばSHINeeだと同じ作曲家が参加していても、言葉の音節などの違いからRomanceとSING YOUR SONGになるわけですね。EXO日本盤LMRのDROP THATにも参加されています。

 

ちなみにsoundgraphicsは海外の作曲家の日本も含めたアジアでの楽曲提供をプロモートしており、所属作曲家(スウェーデンの方が多いかな?)の名前を見るとKPOP界でも非常によく名前を見かける方がズラリと並んでいます。韓国アーティストの日本版楽曲への曲提供と同じくらい韓国盤アルバムへの曲提供も多く、近年のKPOP楽曲への欧米作曲家参加の増加には日本のプロモーション会社が支えている面もあったのか!と思いました。

 

注:原文でミュージシャンの名前が間違っている箇所がありましたので、訂正して翻訳しています。各ミュージシャンのカタカナ表記に関してはいちばん一般的と思われるもにで記載しました(シールマンスなどは実際の発音はティルマンスの方が近いと思うんですが、日本では前者の書き方が一般的なので…)

 

 

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