サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】WINNERの曲のヒットと音楽性について

 

WINNERの新曲が解禁されましたが、泡沫さんはどのようにお聴きになりましたか?
個人的な感想ですが、前作MILLIONSからギターサウンドの割合が大きく、Really Really〜Everyday時期の楽曲よりはsentimental以前のWINNERサウンドに寄りつつある印象を受けました。こういったサウンドは今のK-POPシーンの流行りからは遠いイメージですが、チャートの成績を見ると世間的なウケは悪くないのでしょうか…?
泡沫さんの楽曲に対する率直な感想や、今回のWINNERのような「王道」を外れたジャンルへの(K-POPシーン上での)世間の反応に対して何かご意見あればお聞かせいただきたいです。

https://odaibako.net/detail/request/a0b96cb4c9e34a99be4e5ba4b87904d6

 

感想は前のツイートをご参照ください。

https://twitter.com/djutakata/status/1129390545560674305?s=21

WINNERの音楽について真面目に考えた事がなかったなと思いまして、この機会に思いついた事をつらつら書いてみたところかなり長くなってしまったので、こちらで回答させて頂きますね。

(ブログに書けばいいかと決めたので更に長くなりました)

 

KPOPという「アイドル音楽」の範囲だけでいえばEDMに限らず「ダンスミュージック」というのが常に王道トレンドとしてあるのは確かだと思うんですが、音源チャート上位に入るアイドル音楽ジャンル以外の音楽を見ると必ずしもダンスミュージックだけが優勢ではないと思います。例えば今1ヶ月以上チャート1〜3位にいるJannabiはバンドサウンドですし(韓国のバンド界隈だけを見ればそこはそこで流行りとかメジャー受けしやすそうなテイストというのもあるんですが)パクヒョシンもバラード系の歌手です。つまりKPOPのファンが好むような王道・トレンド=アイドルソングの王道や流行とはまた別に大衆が心地いいと感じる音楽というのは別にあるという事でしょう。「音源チャート」というのはアイドルファンがなんとか頑張って回数を回してチャートを荒らそうと頑張る(?)場所ではありますが、勿論それ以外のリスナーも多い場所でもあります。

 

WINNERの曲の特異的な所は、KPOP=アイドルソング界隈のトレンドジャンルをやるにしても、アプローチの仕方がいわゆる「KPOPアイドル」とは少し異なる点ではないかと思っています。どEDMだったREALLY REALLYやEVERYD4Yにしても、KPOP=アイドルソングの中でここまでミニマルなアプローチのEDMのタイトル曲を出したグループはここ数年ではほとんどいなかったんじゃないかと思います。それでいてデビュー曲から音源チャートの成績は良く、デビュー曲のEMPTYは下半期リリースされたにも関わらず男性アイドルグループでは2014の年間チャートで最も高い順位でしたし(作曲したのはikonのB.I.ですが、YG内制作ではあり)過去最も成績が良くなかったとされているSENTIMENTALでも年間トップ100には入っていました(2016年に音源年間トップ100に入った男性アイドルはBlock.b・EXO・防弾少年団・WINNERのみ)。

 

「KPOPのEDM」って基本的に「メンバーがダンスするためのダンスミュージック」というのが多いと思うんですが、WINNERのEDM的アプローチは「リスナーが踊るためのダンスミュージック」だと感じるんですよね。その為に諸々くどくなりすぎないようにギリギリ色々な音の装飾的な要素をそぎ落としているのではないかと感じます。パフォーマンス自体も歌詞やコンセプトの世界観を表現するとかダンスそのものを見せるというより、楽曲そのもののフィーリングやバイブスを表現して視覚的にも体感させるという事に重きが置かれているように感じます。WINNERに限らずこれはわりとYG全般に感じる哲学(?)じゃないかと思っていて、曲のジャンルやBPMに関係なく音楽に合わせて自然と体を動かしたくなる事が多いです。そこが他の事務所の音楽的なアプローチとちょっと違うところで、海外のKPOPファンがYGの音楽に対して本来の意味でのBOPと表現する事も多い理由かもしれません。お客さんが控えめで有名な日本ですら、ライブでお客さんがいちばん踊ってる事務所じゃないかと感じます。加えて、タイトル曲の製作にメインで参加しているスンユンがギターを弾く人というのも関係あるのではないかと思います。EDM要素の強いBOPソングでありながら同時にメロディーラインでは生楽器のような感性があるというのは、バンド系のKPOPアイドルに近い楽曲的アプローチかもしれません。防弾少年団のBOY WITH LOVEは楽曲のアレンジやサビ構成の点では2017以降のWINNERの路線と少し近いものを感じますが、こちらはやはりKPOPグループとしてダンスパフォーマンスをメインに考えた今のKPOPの王道的アプローチと言えるのではないかと思いますので、RRやLMLM辺りと比較して聴いてみると面白いかもしれないです。

 

こういうアプローチは、メンバーそのものを最もアピールしなければいけないKPOP=アイドル業界においては下手すると楽曲にメンバーが埋没してしまう可能性もあるかなり難しいやり方のようにも思います。しかしWINNERはメンバーの声質にそれぞれかなり個性があって、その声質自体が装飾の役割も果たせるからこそ「アイドルソング」としても成立しているんじゃないかと思います。「EVERYD4Y」なんかは歌のうまさとかではなく、まずかなり独特な個性がないとカバーするのは難しそうです。もともと少人数というのもあるでしょうが、どのような曲でも誰がどこのパートを歌っているのかはっきりとわかるくらい声の個性が際立っているグループだからこそ、各メンバーの存在を際立たせるためのアレンジやダンスブレイクのためのドラマティックな転調、サビやイントロで派手なフックをつけるというような「お約束」からはある意味自由なのではないでしょうか。先程「バンド系に近いアプローチなのでは」と言いましたが、WINNERの場合はそれぞれの声が担当楽器の役割を果たしているという事かもしれません。だから元々デビューアルバムのような楽器を使うロックテイストだったりアコースティックな楽曲とは相性がいいと思いますが、その長所をトレンディなダンスミュージックジャンルでも発揮できるような曲作りが出来るという事を見せたのがREALLY REALLY以降からEVERYD4YまでのWINNERで、ヒットしたトレンドのジャンルに本来の自分たちが得意なジャンルを上手く混ぜる事で、アーティストとして整合性がとれた新しいジャンルの楽曲も出出来るという事を見せたのがMILLIONS以降のWINNERという事なんだと思います。MILLIONSやAH YEAHのような曲が受け入れられているという事は、逆に言えば流行りのジャンルだからというだけでウケているわけではないという事でもあるのでしょう。

 

ルックスや体型に関係なくただプレーンな服を着ているだけで本人の良さが際立っておしゃれに見える人というのがいると思うのですが、よく見ると着てる服は全く飾りがないけどサイジングや裾の長さなどはその人に合うように細かいディテールこだわって調整していたり、シルエットは今風にパターンが研究されていて、袖や裾のまくり方ボタンの留め方などにはこだわっていたりしますよね。結果的に本人のキャラクターが一番のアクセサリーとして全体で見ると好感度が高く親しみやすいという、プレーンな白いシャツとデニムみたいなものなのかも。一般的な人気KPOPアイドルの楽曲やパフォーマンスがハレの日の特別なご馳走だったりとっておきの素敵なデザート、SNS映えする非日常な楽しいスイーツだとするなら、WINNERの音楽や存在は「丁寧なくらしのおいしい毎日のごはん」の方が近いのかもしれません。

 

しかしそれも、EP全体の曲や過去楽曲を見ると「自分たちが世間から何を求められているのか」という事をよく考えた上で作っているものなのではないかとも思います。韓国でもアイドル評論家やアイドルファン以外の音楽愛好家から高い評価を受けやすい楽曲やコンセプトというのはあるんですが、そういう場所で高く評価されるようなポイントをあえて入れるというようなやり方とはほとんど正反対で、特定のメンバーが歌のうまさやラップの技巧を誇示するような場面もなく(ファンの中にはファンであるがゆえにそれを惜しむ人もいるかもしれませんが)、通が好みそうな楽曲ジャンルを無理に取り入れたりする事もなく、他ジャンルのトレンドを入れる事にも躊躇がない。リスナーである一般層が聴いて心地良いであろうメロディや、メッセージというほどでもないし理想的すぎたりドラマティックではないけど、ちょうど大学生くらいの「普通の若者」の日常に沿った大袈裟すぎない等身大の歌詞という、あくまでも生活に寄り添う存在を目指しているように思います。そこの部分はアーティスト的であると同時にアイドル的なスタンスでもあり、ちょっと特殊な立ち位置かもしれません。彼らのイメージ自体はYGはもちろんKPOP業界のなかでもかなりクリーンな方ではないかと思いますが、同時に昔からTVでの露出も多い親しみやすさもあるようで、そのグループ自体のイメージと発表する楽曲の間にギャップがないからこそヒットしているという部分もあると思います。ちょうど今5月でシーズンですが、最近の韓国の大学祭は人気アイドルやアーティストをライブゲストに呼ぶ事が多く、WINNERは去年今年と男性アイドルの中ではかなりの多くの学園祭に呼ばれていました。

 

要するに「曲のトレンドやジャンルとは関係なく、今のWINNERがやるからこそヒットする曲もある」という事だと思いますが、これは韓国でアイドルグループがよく言われる「(ファンドムが大きいのだから)○○がやれば童謡でもヒットする」という言葉とも全く異なる意味です。MILLIONSの歌詞を色々な他のアイドルのオタクが引用して自分たちの推しへの愛情を表現するのがインターネットミーム化した時期がありましたが、これはファンドム闘争が日常的な男子アイドル界隈ではレアな事だろうと思いますし、WINNERのコアファンドムは音盤売上などから見ると中堅クラスだと思いますが、それを上回る一般層と彼らのファン以外のアイドルファン層からの大きな音楽的な信頼があるという事だと思います。要はファンが期待する事と同時に自分たちの世間的なイメージや所属事務所が持たれている音楽面での信頼性もよく理解していて、そこから逸脱しない創作活動が出来ているという事なのではないでしょうか。現在のWINNERのように自分たちの音楽的なスタイルを確立できて、なおかつそれがある程度世間的に認知され求められているグループであれば、コアファンドムの規模が強大でなくてもトレンドには関係なく楽曲のヒットは可能という事なんじゃないかと思います。