サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【質問箱】韓国の音楽シーンその他について

またもや1000文字の限界ギリギリのご質問が来たので回答が長くなってしまいました。

【質問箱への投稿より】

こんにちは、この1年ほどで韓国アイドルや韓国の音楽に興味のどんと出てきた者です ブログを少しずつ楽しく読ませて頂いています メジャーなシーンではMAMAMOOにとても興味があり、彼女たちのことというか彼女たちを取り巻く韓国や海外ファンの環境や反応をすごく知りたいです 最近メンバーのファサが「シングル男のハッピーライフ」という番組に出ているのをたまたま見ましたが、ああいったドキュメンタリー風のバラエティにアーティストやアイドルが出演するのは韓国ではわりとよくあることなのでしょうか?お部屋なんかも普通に出てきたりするので、どこまで本当かはわからないけれど相当公開するプライバシーの範囲が広いのかなあと思って驚きました すっぴんも公開していて驚いたのですが、これはMAMAMOOが他のガールズグループと少し立ち位置が違うからできることなのでしょうか、それとも他のグループでもできることなのでしょうか すごく気になりました また韓国ではアイドルのシーン以外にも様々なジャンルのシーンがあると思うのですが、そういった音楽のファンとアイドルやK-POPファンの間の距離感なんかも知りたいです イ・ランさんやドゥリンジ・オーさんなど弘大(で合っているでしょうか)のフォークやインディーシーンがアツいと聞いており、私も大好きですが、彼らの韓国内での認知度や扱われ方なども興味があります HYUKOHというバンドの事も最近恥ずかしながら初めて知って、こんなすごいバンドがいてしかもとても韓国内で人気があって受け入れられているということがほんとにすばらしいなあと思ったのですが、韓国の方は音楽に対して柔軟度が高いというか、色々なものを聴きなれている感じを勝手に受けます トロットやポンチャックなどは日本と近い部分もある気がしますが、現代風の音楽ではグルーヴ感や音感が日本人とちょっと違う感じがして面白いです SsingSsingのようなバンドもいてすごく面白いと思うのですが、例えば彼らのようなタイプのミュージシャンは韓国のテレビ等には出演したりするんでしょうか?韓国のシーン全体がとにかく気になりすぎます たくさんの質問をいっぺんにしてしまい申し訳ありませんでした、全てにお答え頂けなくても全く構いませんので一読頂ければと存じます ほとんど1000字いっぱいになってしまいすみませんでした、今後も応援しております。

 

https://odaibako.net/detail/request/e1fc0de1646c4279b8443e1dfdff28db

 

まず、アイドルが私生活を見せる系のバラエティは数年前から流行しており、多分「わたしは1人で暮らす」あたりをきっかけに類似番組が沢山出たので今ではあまり珍しくないと思います。流行はあると思いますが。すっぴんを見せるか否かはグループというより本人のキャラクターに左右される部分も大きいんじゃないでしょうか。最近はVliveみたいな生放送系アイドルコンテンツが出てきたので、MAMAMOOもですがそういうコンテンツにおいてホテルや寮・自宅などからの放送で男女ドルのすっぴんにお目にかかる機会は増えたと思います。そもそもデビュー直後に寮生活などを含めたリアリティ番組をやる新人アイドルは多く、韓国のアイドルは日本のアイドル以上に世の中に晒さなければいけないプライベートの部分はかなり多いと思います。仕事から仕事への移動時間や空港ですら、写真を撮影するファンはついてきますし。

(本当は仕事の移動中の撮影は一般への迷惑にもなるし事務所的にもよしとはしていない事が多いですが、完全なプライベートじゃないからいいでしょう的な扱いに現状ではなってしまっています)

 

MAMAMOOに関しては「不朽の名曲」という番組で一般層に名前が知られた印象ですが、コアのファン層としては女性の熱心なファンが多くついているイメージです。日本でのショーケースでも女性客の比率が多く、韓国語や中国語などの言語も聞こえていました。年末にコンサートをやる予定でしたが、その前にカムバックもあり年末までの仕事のスケジュールがハードすぎるとファンから猛反発があり、事務所が年末のコンサートを開催するか否か投票を募るという事態になっています。

(開催延期が多数だったので延期になるのかもしれませんが、年明けは日本でもコンサートの予定がすでに決まっておりこちらに影響がないのかという)

 

韓国のエンタメ関係の方々が良く言うのが、「日本の音楽シーンは色々なジャンルの人たちがそれぞれビジネスとして両立しているのが良い」という事じゃないかと思います。現在韓国のメジャー音楽シーンはほぼアイドル、一部ソロシンガー(若手はアイドル出身・バラード系・R&B系がほとんど)やヒップホップ系アーティスト、時々インディーズ系のアーティストが出てくるくらいという印象です。きちんとビジネスとして成立しているジャンル的にはそんなに広くはないのではないかと思います。Hyukohはインディーズでありながら例外的にメジャーで売れているバンドだからこそ有名なのですが、彼らが有名になったきっかけも最初は口コミから曲が話題になりIUが紹介したこと、そのタイミングで人気バラエティ番組に出演した事など様々な要因があると思います。今韓国でメジャー級に人気のあるMeromanceや赤い頬の思春期、10cmなどもいわゆるインディーズです。日本の音楽市場はメジャーだけでもとにかく広くそれぞれ細分化されているため、各分野それぞれ好きな人でなければとても追いきれませんが、韓国の音楽業界はある意味コンパクトで全体の数は少ないけど、平均的にクオリティが高いアーティストが多いため、初めて入る方にとってはdigりやすく当たりの確率も高いんじゃないかと思います。特にアコースティック系やR&B系、クラブミュージック系は多いので、その辺りのジャンルが好きな方には特に聴きやすいのではないでしょうか。
しかし特にバンドでチャートインするレベルで売れるグループは、アイドル系以外は非常に少ない印象です。一度gaonチャートの1〜100位を見てもらえればわかるのではないかと思います。
(こういうバンドがいるということと、音楽だけで食べていけているのかという事はまた別でしょう)
韓国でのバンドミュージック=アーティストの少なさについては以前お答えしているのでそちらをご参照ください。
http://nenuphar.hatenablog.com/entry/2018/09/09/184816


アイドル音楽とほかのジャンルの音楽ファンの距離は、ごく一部を除けば日本以上に遠い部分もあると思います。どのような音楽をやっていてもどれだけ技能が高くても「所詮アイドル」と見なす視線は日本よりも強いし、そこの部分ジャンル的な割り切りができていないところもあるかもしれません。韓国の音楽市場では現在音楽パフォーマンスで生きていきたい若者が志せる現実的な職業がほぼ「アイドル」という選択肢のみになっている(最近は若手ラッパーも道も広く拓けて来てはいますが)ため、日本だったらアイドルという扱いではなさそうだったり、そもそも最初からアイドルを目指してなかったのではないかという人たちも「アイドル」として多く活動している・活動せざるを得ないという状況なのではないかと思います。
逆に言えば「アイドル音楽」がメジャー音楽シーンの先頭になっているという状況だからこそ、韓国ではアイドル音楽のジャンルの偏りはあっても「クオリティが高い」と言われる部分があるんじゃないかと思います。インディーズの人気アーティストや実力派と言われるアーティストがアイドルの楽曲制作に関わる機会も多いですしね。韓国の音楽業界では現状一番お金が集まってくるところなので、自然とそうなる部分があるんじゃないでしょうか。

 

そういうわけでチャート上位に入る歌手やアイドルグループ以外が出る音楽番組は現在ではとても少ないのですが(ゼロではなく、ランキング番組にもたまに出る事はあります)日本でもKBS WORLDで見ることができる「ユヒョルのスケッチブック」という音楽番組は、地上波で色々な種類のアーティストが出演する数少ない長寿音楽番組だと思います。MCのユヒョル氏自体がアーティストであり、アンテナミュージックという芸能事務所の社長でもあります。

 

弘大のミュージックシーンについてはもともとクラブやライブハウスが多い土地柄もあり、数年前までは一般人オーディション番組の流行とともにインディーズアーティストが集まり活動する場所としてかなりホットだったようですが、逆に弘大自体がメジャーになった事で再開発が進んで地価が上がり、カルチャー発信地となっていた老舗のライブハウスやカフェが移転・閉店するケースが2015年あたりからかなり増えたようです。ご質問で名前が挙がっていたイ・ラン氏についても2017年に韓国大衆音楽賞というアワードでフォークソング部門賞を受賞しましたが、その受賞スピーチでトロフィーを競売にかけたことがとても有名です。「受賞できるかはわからなかったが、預金通帳を見てもらったその場ですぐに競売にかけようと思っていた」とご本人が言っていました。イ・ラン氏の場合は音楽に留まらず日本でもエッセイ集が発売されたり、ミュージシャンというよりはマルチアーティストという感じなのかもしれませんが。

 

というわけで韓国にも色々なミュージシャンはいるのですが、「音楽で食べていく」と言う面ではなかなか厳しい現実があるようです。アイドルは集客や海外活動もそうなのですが、広告やマーチャンダイズだったりバラエティや演技など仕事の幅が広いところがビジネスとして収入源が色々広がりやすいんじゃないかと思うんですよね。個人的には興味がある韓国のアーティストにはチャンスがあればより積極的にお金を落とす方向にした方が良いのではないかと思っています。

私も業界関係者ではないですし内情が分かるわけではないですが、各種のドキュメンタリーや過去の事件、チャートの状況や音楽媒体の記事等などからだけでも韓国では特に音楽のクオリティとは関係なく、「アイドル業界」と「そのほかの音楽業界」については完全に分けて考えた方が良いように思います。日本とも業界を取り巻く環境は相当違いますので、ライブや音楽にお金を払ってくれるお客さんに対する切実度がかなり違うんじゃないでしょうか。公演できる会場も日本より少ないというか、日本はハコの大小のバリエーションも広いし数も多いし、首都以外の土地にもある程度の会場がちゃんとあって、音楽にお金を払う人も多いので、音楽をやる環境としては恵まれているという事かもしれませんが。