サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【askまとめ】13/楽曲関連のご質問

使わなくなったaskのFAQまとめです。

長いものや繰り返しきかれがちなもの、資料的なもののみ抜粋しました。


◆楽曲関連のご質問


[作曲家と演者の相性・消化力について]

こんにちは。いつも楽しく拝見させていただいております。 この間ロンドンノイズとEXOは相性が悪い、演歌みたいになるとの呟きを偶然目にして多くの人はそのような見解なのかなと驚きました。私自身は知識のない中聞いていて好きだなと思うことが多いので…特にラッキーワンがとても好きです。泡沫さんが相性や消化力について思うことがあればぜひお聞かせ願いたいです。

(2017)


LDN NoiseとEXOが合わさると演歌みたいになるというのは面白い感想ですね。最近は特にSMの楽曲に関しては複数の作曲家が関わっていて単独で書いている方が珍しいですし、数人で作っているものの作風をそこに関わっているひと組だけが原因のように思うのはよくわかりませんが...MONSTERなんかは作曲と編曲にはロンドンノイズが関わっていますが、メイン作曲をしたのはKenzie氏のようで編曲も共同ですし。ロンドンノイズは色んなKドルに楽曲提供していますが、特にSMドルの曲では単独で編曲している事は多くても単独で作曲している事はないので、アレンジャーの側面の方が強いような気がしないでもないです。演歌の大きな特徴としてはマイナーコードで表拍が強調されて裏拍があまりないというのがあるみたいですが、ロンドンノイズの関わった曲でも表拍が強いものもあればほとんど裏拍の曲もありますし、単純にアレンジにディスコっぽい音とかブラスやホーンが入ってるだけで演歌っぽいと感じる人もいるかもしれません。単純に古臭く聴こえるのを演歌っぽいという言い方をする人もいるようで、LUCKY ONEなんかはあえて古めのファンクやアシッドハウスを取り入れているいわゆるニューレトロ色が濃いように思うので、リスニングキャリアの長い人の場合は逆に古臭く聴こえたりする可能性もあるのかな?とか。(ちなみに自分はMONSTERとLUCKY ONEだったらLUCKY ONE派です)ともかくその方が何をもって演歌っぽいと思ったのかはわかりませんが、演歌っぽく感じたとしてはたして演歌っぽい事はネガティヴな要素なのかな?とも正直思います。KPOPの特徴といえばポップスにどこかしら뽕기(ポンチャック味=韓国の演歌っぽさ)がある事という言説もありますし。個人的には元々EXOのメインボーカルにはユヨンジンテイストのこぶしのクセが強い歌い方をしがちなメンバーが複数いますし、コンセプト的に圧迫感の強い曲も多いので一歩間違えば日本の演歌っぽくなりそうというか、演歌を歌ったら上手そうだなって前からちょっと思ってました。

作曲家/編曲家とアイドルの相性や消化力ということに関しては、以前はこのアイドルにはこの作曲家の曲がいいとか相性がいいかもと思っていた事もあったんですが、今はあんまりそういう事は関係ないのかなと思っています。何故かというと、特にSMの場合はとあるグループのためという事で依頼されて書いた曲が最終的に他のグループの曲として世に出る事が珍しくないというのを色んな作曲家さんのインタビューや記事などで知ったからです。こういうイメージで曲を作ってもらったけどイマイチしっくりこないとか、他のグループの方がぴったりかもという事でグループ間で曲を取り替えられるという事は、特にSMのように「事務所がコンセプトを決めてそれにあう曲を沢山集め、その中からイメージにあうものを選んで行く」というスタイルの場合、しっくりこないように思うならそれは結局事務所のA&Rによるマッチング(A&Rだけで決めてはいないのかもしれませんが)センスによるものというのが一番大きいのではないでしょうか。作曲家はコンセプトや曲のジャンルを依頼されて作っていて、アイドルの方も事務所の注文に合わせてそれをパフォーマンスとして消化していくわけで...本当に全部アイドル自身がメインで曲作りやコンセプトに参加しているグループ(これは言っても実際は物凄く希少だと思います)じゃなければ、アイドル自身はいわば「事務所のセンス」をパフォーマンスという形で世に出しているという側面もあるわけで、それにOKを出すのも出さないのも最終的には結局事務所でしょうし。

作曲家とアーティストの「相性」という事になるのか微妙ですが、個人的に今気になっているのはTEDDYが女性アーティストに書く曲です。男性アーティストにも楽曲提供は多いんですが、女性アーティストに提供する曲に描かれている女性像が割とどのアーティストも微妙に違う雰囲気だけどありきたりな感じではないように思えて、作詞もTEDDYがしていることが多いのでどういう風に考えて曲を作って提供しているのか、とても気になっています。


[歌詞について]

こんにちは。歌詞に関する質問です。 J-POPやJ-ROCKの歌詞は、自分の感覚だと15年〜10年前あたりから変わったように思います。文字を詰め込んだり、具体的に描写する傾向が強まったな、と。 よく言えば身近で共感しやすかったり。悪く言えば余白がなくて想像の余地がなかったり。 同じようなことは、K-POPにもあるのでしょうか?歌詞の趨勢や傾向をぜひ知りたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

(2018)


JROCKに関しては演者が直接歌詞を書いてる事が多いので、そこの歴史をほぼアイドルポップスの事を指すKPOPと比べる事は難しいと思います。それはそれで日本の世相や文化を反映した歴史があるでしょうし、JPOPもまた然りでしょう。

KPOPに関しては作曲に比べると作詞で個性を出すのはまだ少ないような雰囲気で、キムイナ氏など有名な作詞家もいますが基本的には韓国の場合カムバックごとにコンセプトが変わる事が多いため、それに合わせて書くことが多いようです。以前訳したアイドルとhiphopに関しての記事でも「曲は海外ポップスをよくリファレンスするようになったが歌詞の内容自体は今でもH.O.TやSechskiesの時代と大して変わらない」というような話が出てきました。

自分が見てきた中でKPOPの歌詞の内容に大きな変化があると感じられたのは過去2回ほどあって、1回目はいわゆる最初の「KPOPブーム」が来た2007〜2011年くらいの事です。当時はフックソングと呼ばれた、サビで同じ単語を繰り返す曲(「Tell Me」「Gee」「Sorry Sorry」「Ring Ding Dong」「Roly -Poly」など)が流行っており、韓国の記事でも「最近の流行歌の歌詞はサビの耳障り重視で内容が薄い・よくわからないものが多い」というような事が言われていました。特に直接的なフックソングではないものの感覚的で意味のない単語が頻出したf(x)の歌詞は、当時いい意味でも悪い意味でも「新しい」と言われていたように思います。

2回目はhiphop系アイドル流行の流れで自作曲をウリにするグループが増えてきた2013年ごろからで、これは「アイドルが自らの心情を直接歌詞に載せていう機会が多くなった」という事であり、具体的に歌詞の表現自体に技術的や文学的な変化があったということではないとは思います。

また、ここ1、2年の韓国の社会的風潮としてフェミニズムやポリティカルコレクトネスのムーブメントがあり、特に異性についてや恋愛を歌う事が多いアイドルソングの歌詞がターゲットとして俎上にあげられる事が多くなったため、ジェンダー的表現に関してはこれからも変化があるかもしれません。外部からの意向を優先させざるを得ないアイドルポップスが韓国音楽の主流である限り、歌詞の内容が自己表現や表現芸術的なものよりは世間的要求や流行を反映する傾向にあるのは仕方ない面があるのかもしれないと思います。

完全な私感ですが、日本は昔から変わらずよくも悪くも歌詞の内容へのこだわりが強いリスナーが多いようにも感じており(ロックバンドなどでは逆にあえて歌詞から意味を排除している人気グループもいますが)その分逆に言えば歌詞の内容を文学の一種と捉えて歌詞の世界観を分析するようなカルチャーが育ちやすいのかな?とも思います。

韓国では物語よりも詩の方が重きを置かれてるのでは?というくらい詩が好まれる傾向は感じるんですが、アイドルソングの歌詞となるとまだ別なのかなと。シンガーソングライターの曲はそれぞれに個性がありますし、HyukohのWing -Wingみたいに歌詞が世相にはまって語られるような歌もありますが。

KPOPの作詞に関する記事を過去いくつか訳していますので、リンクを貼っておきます。

http://nenuphar.hatenablog.com/entry/2017/04/06/224133

http://nenuphar.hatenablog.com/entry/2015/07/09/170124