サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】コンチュルモク(芸能人目撃談・写真)」を止揚しますか?

【idology訳】コンチュルモク(芸能人目撃談・写真)」を止揚しますか?

 

byシムデャン 2018/04/06
http://idology.kr/10217

[この文は、2018年3月23日から25日まで西橋芸術実験センターで行われた〈一行も書いていません〉(企画パクジュンウ・チョンデハン)にて展示されました。]

 

この頃ファンドムを分かつ新たな単語がある。 「コンチュルモク」がまさにそれだ。 コンチュルモクというのは、空港写真、出勤写真、目撃談を表す単語として、韓国の芸能人好きであれば自然に接する代表的な情報のこという。 ファンドム内で芸能人のプライバシー保護を目的にこれを止揚(一旦立ち止まって考える事)する人が生じ、これを超えてDispatchを含めたマスコミの過度なパパラッチ行為や卒業写真、過去写真など、より幅広い方向で芸能人のプライバシーを消費しないようにするというケースもたびたび見られる。 コンチュルモクの中で、空港写真に限定してこれと関連した話をひもといてみたい。

 

2017年からSNS上で新しいファン文化としてに浮上した「コンチュルモク止揚」は、特にアイドルファンドムの間で起きた。 コンチュルモクの中で、空港写真は別名「空港ファッション」という名で消費されてきたコンテンツであり、情報と言える。 空港写真の前提条件はアイドルに向けられた関心、つまりは熱い需要だ。 アイドルが出国もしくは入国をする度に、空港で写真を撮るホムマ(ホームマスター)と、芸能人を見るために集まったファンで陣取られている。空港はステージ以外で芸能人を近くで見られる場所だ。 空港で捕捉した彼らの自然な姿とこまごまとした日常などを理由に、空港写真はファンドム内において最もホットなコンテンツの一つと言える。 彼らが何を食べているのか、何を着るのか、どんなことがあったのかなど、持続的な関心に対してアーティストはメイクをはじめ、服を選んで着始め、更に服の協賛を受けて記者に写真を撮られ、「空港ファッション」という新たなコンテンツが生産され始めた。

 

しかし、空港写真を撮影していると空港内の混雑を避けられない。 実際にアーティストが出入国現場でセクハラを受けたり、怪我をしたケースもしばしば見ることができる。 ファンドムが最も簡単に共感するのはアーティストの負傷だけではない。 ファンたちは空港写真のすっぴんを通じて、プライバシー侵害という弊害を直視した。 多数のカメラが空港内で休息を取っているアイドルを撮影している様子が公開された。 この理解できない風景の結果物が私が好きな空港写真だなんて、とファンドムは当惑した。 その結果、アイドルのプライバシー侵害と関連された談論が登場しており、これにプライベート消費の代表格である「コンチュルモク」という単語を作ってこれを止揚するという流れにつながった。


コンチュルモク止揚というタイトルを掲げた結果、ファンドムは従来のファン文化とKPOPシーンの悪習についてもう一度考えてみるようになる。 容易に過熱される投票狂風とストリーミング戦争に疑問を提起し、徹夜文化から始まったファンドムに向けられる関係者の冷遇についても見直すようになった。 また、ファンドム内のサイバーブルリン(ネットいじめ)はもちろん、2016年からファンドムが敏感に反応しているアーティストの女性嫌悪表現とコンテンツ内に存在する嫌悪を敏感に捉えて積極的に釈明を要求しているなど、多方面で談論を形成した。

 

もちろん新たなこの流れは、「コンチュルモク止揚」という名称であまりにも多くの談論を抱いているという指摘を避けられない。 コンチュルモクを止揚しておいて、コンサート写真や動画撮影で侵害される著作権についてはまだ大きく公論化されないのが実情だ。 アーティストとファンドムの人権には敏感だが、その他のKPOPシーンを健全に形成するいくつかの部分には鈍感だ。一方、KPOPがブームを引き起こす可能性のある要素の一つであるファンメイド(fan made)をどこまで否定するべきか、これに対する代替品が存在するのかに関するジレンマも存在する。

 

継続されているファンドムのコンチュルモク消費を巡る議論に影響を受け、製作者からも変化が起きた。 アーティストの卒業式や空港写真撮影を禁止したり、ガイドラインを設定するなど、アーティストの人権に配慮する案をまとめ始めたのだ。JYPの場合、空港や宿所の近くなど非公式の日程を追いかけたり、録音、撮影する行為全般をする場合にスケジュール関連で不利益を与える「ブラックリスト」制度を施行している。 逆に、製作者は未だにコンチュルモクを消費するファンドムを人気の指標としている節もある。SMの場合、一部のVAppコンテンツやYouTubeコンテンツにおいて、空港で待っているファンドムを映像で見せ、「デビュー前なのに膨大なファンがいる」と言うように肯定的に評価する。


従来のファン文化とKPOPシーンを構築する消費行動と反する「コンチュルモク止揚」は確かに大変な運動だ。 ただ、ファンドム自らがアーティストのプライバシーの侵害に共感し消費を止め、ファンドムと制作者に対して特定の要求をするのも、また違う意味でのファンメイドと見ることができるだろう。 ファンドムの新しい声コンチュルモク、あなたはどう思いますか? コンチュルモクを止揚しますか。

 

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コンチュルモク「공출목」とは空港(공항)+ 出勤路(출근길)+目撃談(목격담)の略語でアイドルファン用語です。
韓国でもスケジュール以外のプライベートで写真を撮ることは禁止されていますが、海外スケジュール移動のための空港での写真撮影やスケジュール出退勤時の写真(音楽番組出勤時やいわゆる出待ちなど)の写真はグレーゾーンとして長年幅広く消費されてきました。芸能人のプライバシーを割と尊重する傾向のある(守れてない人もいるけど、一般的に守る事が良識とはされている)日本のファンが最初に戸惑う部分のひとつではあるかも。
韓国のアイドルファンは非公式でアイドルの写真を撮ったりそれを見たりして消費する事に慣れすぎていて、それをファンとしての当然の権利であると思っていたりむしろ広報になってやってると思ってる節もあるかも。ファンとしての欲望>アイドルに対する人権意識という矛盾があるわけです。


アイドル側もいわゆる「空港ファッション」や音楽番組出勤時コスチューム等という形で要求に応えてきてしまったという事実もありますが、数が多すぎて現実的に警備員やSPやスタッフでは制御しきれないという現実があり、どうせ撮られるならアピールの場として使おうという一種の防御策とも言えるかもしれません。

 

止揚小池百合子知事で有名になった「アウフヘーベン」の事。
矛盾をはらむ出来事について一旦立ち止まって考え、よりよい状態に導いて行くこと、との事です。この表現韓国語の記事では割と見るんですけど、日本語ではあまり使わないですよね。「再考」と大体同じ使われ方だと思うんですが、完全に同じ意味ではないので難しいです。