サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

ここ数年の韓国アイドルの傾向とSMエンターテイメント

 

前述の最近のSMエンターテイメントに関する記事を読んでいて、ここ2、3年のSMの目指す方向はどこなんだろうとなんとなく思ってきた事が急にちょっとだけクリアになった気がしたので、脳内整理の代わりにブログに書いておこうと思います。すぐ忘れるので...ほとんど想像と妄想ですし長い。

(しかもSMメインになるかと思いきや1/3くらいYGが占めてしまった)

 

SMという芸能事務所は昔から「大衆音楽」を主にしてきた会社で、多少の浮き沈みはありながらもその都度大ヒットや国を代表する一般受けするメジャーアーティストを作ってきた、とにかく芸能界の王道を行く会社だったと思う。特に90年代末から今に続く「韓国のアイドル」「KPOP」というものを完成させて海外にも広めてきた最大の功労者のひとつではないかとも思う。しかしここ数年、他の会社や企画ものなどが伸びてきたのもあるとはいえ、それとは別に今までとは違う方向を目指しつつあるのではないかという気がしてきていた。

 

韓国のアイドル業界にはパフォーマーとしての才能や華がある子を事務所がオーガナイズしてトップに仕上げるSMという王道があり、そこにカウンター的に現れたのがYGだったのではなかろうか。元々YGはhiphopR&Bという、かつて韓国では超メジャーとは言い難かった「ジャンル音楽」をアンダーではなく一般のメジャーシーンで韓国人が韓国のスタイルを取り入れてやって売れるというのを目的としてずっとやってきた会社なのではないかと思う。楽曲スタイルとは別に世間のフォーマットの流行形態には割と敏感であるがゆえに本場(欧米)こそが至高というそれぞれのジャンルのマニアからは阻害されても、元々は「パーフォーマー兼クリエイター」の集まった会社というのもあり(もちろん会社が企画して世に出した作詞作曲をしないシンガーもいるけど)、一般層からは「音楽的な信頼」というものがある事務所なのだと思う。それ故に今でもYGのアイドルや練習生ですら、YGという冠がつくだけで売れる売れないに関係なく「アーティストや歌手としての実力はあるんだろう」というイメージが無条件に持たれているのではないだろうか。

KPOP前夜として当時大人気だったJYPのRainの流れで男性ソロアイドルとしてSE7ENをデビューさせたりヒップホップグループだった1TYMがアイドル的な人気を得ていた部分はあったものの、2004年に東方神起の登場で韓国の音楽業界が再び一気にボーイズグループアイドルブームに乗った時、流行のフォーマットには敏感なYGがアイドルとして真剣にデビューさせたグループが、自作やセルフプロデュースのできるメンバーを中心に据えたBIGBANGだったのだろう。本人の話によると当初はG-DRAGONとテヤンの2人でアイドルではなくヒップホップユニットとしてデビューすると思っていたそうで(それでサバイバル当時はアイドルグループとしてデビューする事に不満があったと言っていた)結果的にこれは当時はYGにしかできなかった事かもしれないし、10年後にKドル全体の流れを新しくさせる大きな決断だったのではないかと思う。そもそも考えてみれば三大事務所の社長でバリバリの「国民的アイドル」であるという事を自分が経験しているのはヤンヒョンソク会長だけで、しかもソテジワアイドゥルは自分たちで作詞作曲していたけど同時に国民アイドル的な人気もあったという、今でいうまさにBIGBANGみたいな存在だったようだ。

しかしBIGBANGというアイドルが登場して人気が出たといっても、それはあくまで王道であるSMの作り出していたアイドル像があったからこそ「アイドルだけど、自分たちで作詞作曲もするしダンスやプロデュースもできる」というスタイルが特別なものとして輝いた側面もあったのではないかと思うし、G-DRAGONという特例的な存在がいてこそのいい意味でのアイドル界の「邪道」だったのではないかと思う。少なくとも、2013年ごろまでは。

 

しかしその後、YGのグループ以外でもZICOというGDとも比較されるクラスの実力と人気があると大衆から認められるような存在をリーダーとするBlock.Bが一般的に脚光を浴び(2016年に一番音源がDLされたボーイズグループはBlock.B、同じくソロアイドルはZICOだった)ZICOのようには大衆的ではないながらもSMのグループと比肩されるようなファンドム人気を経た防弾少年団のブレイク(2016年もっとも売れた音盤は防弾少年団の『WINGS』アルバムだった)、10代〜20代に絶大な人気を誇ったSHOW ME THE MONEY3から4にかけてのアイドルグループラッパーの活躍や優勝などが続けて起こり、「作詞作曲やセルフプロデュースができる男性アイドルは今や当たり前」というような方向に韓国内の雰囲気が傾いてきてしまったのではないだろうか。
クリエイティビティが重視されるヒップホップ系のアイドルグループだけではなく、近頃はB1A4のような一見アイドルの王道のようでも自作曲で活動をしてきたグループの地道な活動にもスポットが当たっているし(そういえば以前、B1A4自身がロールモデルはBIGBANGと言っていた)、それを売りにしているグループも新人ですら全く珍しくなくなってしまった。一見SMの作ってきたアイドル像に一番近く見えるようなSEVENTEENのようなグループまでもが、「自作ができる」事を特徴とする時代になってしまったようだ。

 

人気のある自作ドルがBIGBANGだけの時はお互い対極の存在としていわば「2大政党制」のようなスタンスでいればよかったわけで、所詮は「与党」であるSMの存在は揺るぎなかったのではないかと思う。2012にデビューして2013にブレイクしたEXOは世界的なブレイクは果たしたものの、ファンドム規模では1位のボーイズグループでも国内の大衆性という面ではSHINee以上の先輩グループ達程認知されていないのがどうやら2012年以降の流れの様で、その後の自社ボーイズグループのアイデンティティに関して、SMはまだしっかりとした指針を決めかねているようにも見える。女子グループに関してはまだ韓国の風潮的には自作やセルフプロデュースは求められていないしまた別種の要求があるので、曲やコンセプトが多少難解でも「可愛い」「かっこいい」に集約されて一般層に受け入れられやすい部分はありそうだが。
(特にSMの女性アイドル達はみんな素材の部分で大衆的にも受け入れられやすい美しさや愛らしさを持っていると思うし、そういうチョイスもされてきているのではないかと思う)


しかしボーイズグループに対する一般層からの要求が大きく変化しつつあるここ数年、あくまでも今までの「王道」アイドル路線を貫くのか?それともクリエイティビティや主体性を売りにする側面も出していくのか?もしくはどちらでもないまた新しいスタイルが出てくるのか?曲やコンセプトやパフォーマンスの精度とは関係なく、そのあたりにそこはかとないどっちつかずを感じなくもないここ数年だった。既存のベテラングループはある程度現状の認知度やファンドムをキープしていけば良いのかもしれないが。

 

SMが音楽的に妥協せずクオリティの高いものを生み出し続けていて、それはむしろ年々上がっている事はアイドルオタクやアイドルの歌も聴く音楽好きやマニアや評論家なら理解していることだと思うが、ぶっちゃけ一般層の間でSMが音楽的に真剣な評価をされる機会というのは、未だにあまりないのではないかと思う。SUPER JUNIORのキュヒョンが同級生にSMの練習生になると言った時、歌手になりたいのにSMに入るのかと若干馬鹿にされたそうで、その頃からのダンスやパフォーマンスのレベルは高いが歌や曲は所詮はアイドル、というイメージは今でも根強いのだろう。あくまで世間的には「煌びやかなイメージで人気アイドルを作るのがうまい事務所」であり、数々の訴訟うんぬんで「アイドルは操り人形」というイメージを世間に植えつけたのもある意味SMではあると思う。
(アイドルに限らず、事務所に全くコントロールされていない芸能人がいるのか?とも思うけど)

 

ゆえにSMがいくら頑張ってクオリティの高い楽曲を各方面から集めて良い仕事をしても、決して本当の意味では「楽曲」に対する正当な評価はされにくかったのではないかと思う。「王道のアイドル」を手堅く作ってきたがゆえに世間的なアイドルへの偏見も同様にそのまま受けていて、一部のソロシンガーの仕事を除いては一般層からの「音楽的な信頼」があまり高くないのではないかとも。いわゆる「自作ドル」達が大衆的に支持を受ける理由のひとつとして、「アイドル本人が制作に関わっているのだから音楽的にも『ホンモノ』に近いのだろう」と思われやすいというのがありそうだが、どんなにクオリティの高い楽曲を持ってしても音楽的なレベルを測る物差しとしては「一般人から見た音楽的な本物っぽさ」という一点のせいで越えられない壁のようになってしまっている部分もあるのではないのだろうか。そしてSMがここ数年EDMレーベルを立ち上げたりSM STATIONを立ち上げたりしたのは、今まで世間的なイメージからは足りていなかった「音楽的信頼」を得ようとしているからなのかな...と個人的には思えて仕方がない。昨年はSM STATIONで音源での人気が高い=一般人気の高い歌手やグループとコラボレーションした曲をたくさん出していたし、アルバム活動させるまではいかずともグループメンバーの自作曲やTV番組との企画曲、チャリティ的な曲を出したりはたまた突然ジャズやインディーズバンドや海外ミュージシャンの曲をリリースしたりの脈絡のなさも、音楽的な幅を見せたいのだと考えるとなんとなく納得というか。シンガーソングライターであるCEOがバラエティでおなじみの顔であるが故に、大衆的ながらも実力派歌手やシンガーソングライターが多く所属しているイメージのMYSTICと提携を結んだのもその一環じゃないだろうか。他にもEDMのレーベルを作ったりEDMのフェスを主催したり、世界的なDJとコラボしたりもしていたし。しかし最近一般的な人気のあるEDMが年々ヒップホップよりになってきてる感じはするのが、SMが本来得意とするEDMのジャンルとも少しズレている気も...そこでラップの上手いマークを高等ラッパーに出したり、Cherry Bombという曲が誕生したのかなとも思う。

 

実はプデュやWANNA ONE人気とここ数年のSMや人気グループの動向が鏡のように背中合わせで関係してるのではという内容の文章を書いていたのだけど、まだまとまりきらないうちにizeの文章が出たのでこっちの文を先に書き終わってしまった。今のSMはNCTで同時に色々な試みをしている時期なのかもしれないけど、個人的にはNCT DREAMのようなシンプルなアイドルの喜びは忘れないで欲しいとも思う。対極の存在にあったYGは自社アーティストをCMですら選んで出していたというイキリ時期(swagと言おう...)は過ぎてキャラクター的にはかなり大衆的な親しみやすさを出すことに躊躇しなくなり、しかし音楽的には根本のアイデンティティは捨てないできていると思う。SMがYGのような「アーティストっぽさ」に寄ってきているのと反対に、YGはSMの持っている「アイドルっぽさ」に寄ってきているとも言える。しかし一方で、アイドル的にはそんなに興味がないという「アイドルファン層」にも一般層にも、曲は良いよねと聴いてもらえるというのがYGのアイドルの傾向にもなりつつあるような気がする。次にデビューさせる予定らしいU20のボーイズグループも、作詞作曲プロデュースが出来る中心メンバーが候補に当然含まれているようだ。こうしてかつては邪道だったはずのYGのアイドル音楽があわや王道になりそうな2017、世間の荒波に流されないためにはどこか根本でブレないことが大事なのかも...と月並みすぎる事を思う今日この頃だったりした。

 

SMが守るべきコアとはなんなのか?何を目指していくのか?この先どうなっていくのか?なんていうことは自分は会社の人ではないからわからないし考えたりもしないけど、やはりこの先の展開がずっと気になり続ける事は間違いないと思う。自分にこんなにも飽きない、アイドルの楽しみというものを教えてくれたのは、何と言ってもSMエンターテイメントなので。