サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】防弾少年団、ビルボード受賞の意味

【idology訳】防弾少年団ビルボード受賞の意味

 

byランディ on 2017/06/13

http://idology.kr/8911

 

現地時間で5月21日、防弾少年団が2017年ビルボードミュージック・アワードで「トップソーシャルアーティスト(Top Social Artist)」アワードを受賞した。 ビルボードミュージックアワード(以下ビルボード)は毎年5月に開かれる米国の音楽賞で、審査委員が積極的に介入するグラミーアワードやアメリカン・ミュージック・アワードとは違い、定量的数値だけで受賞者を決定する。 そのため、全体的な受賞者の明細や面々をみると、よくキュレーションされたリストという感じよりは市場の指標を見せてくれるという感じが大きな授賞式だ。

防弾少年団は今年の受賞者の中で、断然異質な存在だった。 受賞が式の最後の方に配置されたため、注目度も高かった。 米国市場をターゲットにした英語のコンテンツをオフィシャルで出したことがないにもかかわらず、彼らはSNS上の波及力と影響力を測定して授与する「トップソーシャルアーティスト」という種類の賞を受賞した。 ビルボードで毎週発表する「ソーシャル50」(フォロワーの増加量とストリーミングなどのソーシャル活動を基盤として全世界的な人気度を測定するチャート)とSNS投票を合算して受賞者を選定するこの賞は、どのようなアーティストがソーシャルメディアを利用する消費者層に最も愛されているのか、オンラインマーケットでの影響力はどの程度なのかどうかを示している。
この賞の意味をきちんと振り返って見るには、大きく下記の二つの質問に答えなければならない。

 

1. 防弾少年団はどうして米国をはじめとする海外で大きな人気を集めるようになったのか

 

2. 米国のメジャー音楽業界はどうして防弾少年団に注目するのか

 

該当の賞を受けるまでどのように人気を集めたのかも重要だが、今までアジアンアーティストの影響力にほとんど反応しなかった米国のメジャー音楽業界が、どうして今回は別の反応を見せたのかについて考えてみたい。

 

防弾少年団が米国を含む海外で人気を集めた理由

KPOPと呼ばれる共通点のためにPSYの成功や防弾少年団の成功が同一視される視線があるが、PSYと防弾少年団は類似点よりは相違点の方が多い。 したがって、PSYの足跡を辿ることで防弾少年団の成功を分析するとしたら、そこには問題点が多い。 これは「KPOP」という用語の定義が曖昧なために起きる不正確さで、本稿では「KPOP」を「韓国のアイドル」という意味で使うことにする。 防弾少年団というKPOPグループ、あるいは韓国アイドルグループは、米国をはじめ世界でなぜこのような大きな人気を得たのだろうか。


先にリードしてきたKPOPグループが全世界的に固めてきた「KPOPファンドム」の存在を無視できない。 自らをKPOPファンと呼ぶ人口は防弾少年団が大きな人気を得る前からかなり多く、これは世界各地で盛況裏に開かれている「K-CON」(KPOPポップファンドムが集まる大きなお祭り)やBIGBANG、SHINee、少女時代などのコンサートツアーを見ても知ることができる。 彼らのお陰で大人数のグループ、トレンドを積極的に反映するダンス音楽、アートの水準の緻密な振り付けなどKPOPの文法が世界各地に浸透していた。
防弾少年団は、このような土台にいくつかの要素を更に追加し、既存のKPOPファンドムからの愛を受けるだけでなく「防弾少年団によりKPOPに新しくオタク入門する人たち」という潮流を作り出した。 以前のKPOPファンたちは通常KPOPというジャンル自体を好きで、いくつかのグループを均等に追いかけていたが、防弾少年団のファンの中には防弾少年団だけが好きだという人口が多い。 これは海外でもKPOPというジャンルの歴史が長くなると、韓国の忠誠度の高いファンドムの性向に追従していくためかもしれない。 そしてそのような性向の模倣を起こす決定的な要因は、防弾少年団が海外ファンドムにまでのめりこんでいくような経験を効果的に伝えているからだろう。

 

防弾少年団はKPOPグループの形をしているが、AdeleやTroye Sivanのようにパーソナルな歌詞を書いているシンガーソングライターというイメージも持ち合わせている。 よくグルーミングされたルックス、有機的なストーリーを共有するサイドコンテンツ(ミュージックビデオなど)、一糸乱れぬパフォーマンス、共同生活をするメンバー間のケミストリーなど韓国アイドルの特徴を保ちつつ、自分たちの考えと世界観を作品に溶け込ませているという事実。そしてその作品の内容は、防弾少年団をもっと好きになる要素になる。 彼らはメンバー全員が作詞作曲に参加しており、SNSのアカウントを共有したりもする。 これは歌手が実装している考えとストーリー全般を追いかけながらも追従することを望むファンにとっては良い「ネタ」だ。


ここにおいて、適切なSNS露出がこのような傾向を更に強化する。 彼らが運営しているツイッターアカウント(@BTS_twt)はメンバー7人が共有し、随時メンバーたちの安否や好きなものを知らせたりする窓口であり、内容を見るととても個人的であるが、同時に共有アカウントであるために合意の下に適切にコンテンツを制御しているというオフィシャルの印象も与える。 企画会社が放送社側とのネットワークがあまりなかったのか、デビュー当初の防弾少年団はその他の人気KPOPグループに比べて放送露出が少ない方だった。 これを打開するために会社で出したYouTubeチャンネルとさまざまな製作コンテンツは、むしろ韓国内のケーブル放送出演よりも世界のウェブで大きな人気を集めるようになった。 特に、これらの簡単な日常映像は、6秒の映像プラットフォームVineなどのサービスにとってぴったりのコンテンツだった。 2010年代に入りYouTubeなどを通じたSNSスターがすぐにポップスターになる世の中で、防弾少年団はこの流れをうまく利用して恩恵を享受しているKPOPグループの第1世代と言えるだろう。

 

なぜ、米国のメジャー音楽業界は防弾少年団に注目するのか

 

それなら、このように得た人気をもとにしたとしても、どのようにして防弾少年団ビルボードの授賞式にまで参加することができたのか、という問いが残る。 多くの人気を享受したKPOPグループがあったにもかかわらず、なぜ防弾少年団が一番最初になったのかという言葉だ。
一つの答えは、先ほどすでに言及した内容から見ることができる。 防弾少年団のファンドムはインターネット上での結束力と行動力、別名「インターネット火力」が強い。 適切なSNS活用やコミュニケーションを通じて生まれたファンドムなのだから、考えてみれば当然のことだ。 SNSが、まさに彼らの「オタク活動のホームグラウンド」だからだ。 このようにSNS親和的で強力な火力を持つファンドムを基盤に、防弾少年団ビルボードの「ソーシャル50」順位内に32週間上がり、そのうち26週間で1位をした。 授賞式の前に開かれたSNS投票でも圧倒的な得票数をあげ、Justin Bieberを2位で引き離した。 制定されて以来、この賞を6年連続受賞していたのはJustin Bieberで、防弾少年団の受賞は波乱と言えるほどだった。

 

実際、KPOPは完全に米音楽界でメジャーであるとは言い難い。 米国でのKPOPファンダムは確かに日本のアニメやJPOP文化のようにサブカルチャー的な位置として始まり、現在もそれに似た位置を維持している。 しかし「トップソーシャルアーティスト」上の指標が示すように、防弾少年団をめぐる火力があまりにも強大なために、メインストリームでもこのサブカルチャーを無視することができなくなったのだ。 SNSでの影響力というのは、ウェブ上の広告市場、さらに実際のマーケットと連結される。 多くの業界関係者や企業がデータに基づいた「トップソーシャルアーティスト」に関心を傾ける理由だ。


また、防弾少年団は今回の授賞式で唯一のアジア人受賞アーティストでもあった。 この点は人種多様性の面でかなり鼓舞的であり、それはアジア人が米国内の様々な有色人種の中でも人口や影響力比、可視性が低い人種だからだ。 多くのアジア人ファンたちが彼らの受賞を祝い、地上波TVでアジア人にスポットライトが当たって栄誉の受賞をしたという事実を喜んだ。
アジア人は米国内では他の有色人種とはまた別の位置を持つ、独特なマイノリティのグループだ。 高い教育熱のおかげで20世紀から移民2世、3世の多数が専門職になって経済的な階層移動を成し遂げたが、このような社会的地位の獲得はアジア人を米国社会の主流にはさせなかった。 むしろ、他の有色人種に比べて体制へ順応的だったために「見えないマイノリティ(Invisible minority)」と呼ばれる存在になった。 アジア人に対する偏見は存在するが、いざ人種問題を論じる時にも十分に取り上げられないことが多い。 最近話題になったユナイテッド航空のオーバーブッキング事件を見ても、被害者がアジア人であるこのケースについて、米国ではこれが人種問題だったということを十分に認識していないような見解が多い様子だった。

 

最近数年の間、米国のメディアではアジア人の可視性を増やすための様々な努力が目撃されている。 2015年から開始されたシットコム「Fresh Off the Boat」(ABC、2015〜)は中国系移民家庭の話を扱っており、ジョン・チョウ(John Cho)などの芸能人は以前から言及してきた自分のアジアンヘリテージ(heritage=血筋)を意識的に強調している。 トランプ政権が設けられてから、米国の人種問題はどの時代よりも対立する事案になっており、このような時ほど機会的にも政治的な正しさを追求しようとする動きも増えている。 ビルボードアワードが2011年以降中止していた「トップソーシャルアーティスト」アワードの直接的授賞を復活させたこと(訳注:過去6年間、この賞のみの候補者はアワード会場には招待されていない)防弾少年団の為にリムジンや特別インタビューなどを用意したのはこのようなアクションの影響もあったと推定できる。 ビルボードアワードがアジアの可視性を意識する正しい授賞式であり、さらにはアジア人消費者を尊重していることをアピールする機会として活用したのだ。

 

これから先の防弾少年団は?

 

授賞式でも防弾少年団を応援する熱気は断然目立った。 レッドカーペットの間カメラはあちこちに立っている防弾少年団のファンを映し、「トップソーシャルアーティスト」受賞者として防弾少年団が呼ばれた瞬間、客席ではこの日の行事の中で最も大きな歓声が上がった。 5月29日に開かれたBigHitエンターテインメント(防弾少年団の所属会社)主管の記者会見のブリーフィングによると、ビルボードアワードの主催側では防弾少年団の人気を60年代のブリティッシュ・インベイション(British Invasion)と比較したという。


このような人気を踏み台にして今後どのような活動を続けていけるかどうかに対するヒントは、先述の記者会見で得られた。 彼らはこれまでの人気は特に米国市場を狙ったり特に力を注いだりしなかった結果である事を認識しており、これからも今までのように韓国語で音楽を作るという計画を明らかにした。 防弾少年団の海外ファンドムはこのような発表をむしろ歓迎している反応だ。 メンバーたちが直接歌詞を書いて音楽を作るという事実が重要な歌手なので、無理に外国語作詞を試みたり翻案を任せるよりは、本人たちが納得できる作品活動をすることを望むという意味なのだ。 防弾少年団が今に至るまで自分たちの作品とストーリーを描いていき徐々に上昇してきたように、大きな変動がない限りこれからもそうできるのではないかという期待をさせる。 急激に無理しないという方法論はロングランとグループの持続に対する意志と読まれ、世界各国のファンとしては非常に安心するような答えだったようだ。


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British Invation=アメリカ音楽業界において60年代に起こったThe BeatlesThe Rolling StonesThe Kinksなどのブリティッシュロックバンドブームの事。

アイドル専門メディアだけあって見てるポイントが的確だなあと思った記事でした。日本だと2次元コンテンツがファンの勢いによって一般社会にも食い込んできたみたいな感じと似てるのかな..(?)
人種的な話とか、今回の受賞のことで個人的に少し考えた事と近いような内容でした。
海外ファンによるペンドム性向の模倣っていう考え方は面白いですね。ARMY=強火という世界共通認識...。

「これは海外でもKPOPというジャンルの歴史が長くなると、韓国の忠誠度の高いファンドムの性向に追従していくためかもしれない。」の部分は日本のKドルオタにはあまり当てはまってないようですね。確かに本国追従タイプもいますけど、「イル活」が他の国での活動に比べて特殊だからかもしれませんが。

 

欧米圏でのKPOPファンも単独コンサートやKCONを見る限りではやはりアジア系や有色人種が多いようなので、今回のことで欧米圏におけるマイノリティにとってのアイドルとか特に若年層のマイノリティの消費力や購買力...はわからないけどとにかくマーケットへの展望的なものを見出されたりがあるのかなと。アーティストやアイドルと近いアジア圏に住んでいるアジア人同士だと正直そこまでピンとはこない事気がしますが、今までアメリカではあまり注目されづらかった市場のようなので、注目されたのはそういう部分も関係あるのかもしれないともちょっと思いました。
逆に言えば事務所と防弾少年団自身も、アメリカでの人気と一口に言っても、自分たちのファン層がどういう種類属性の人たちが多いのかと言うことをある程度リアルに理解しているからこそ(日本語バージョンは作っても)英語バージョンには欲がないとあえて言った部分もあるのかなあと思いました。実際、大手レベルの財源がないと本格的に欧米圏参入を継続する事は中々難しいようなので(ファンの要望とは関係なく)そこまでするメリットも今はまだないと思ったのかもしれないし。堅実な感じがします。