読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

【idology訳】ラップモンスターのミックステープ vs SUGAのミックステープ

idology訳 防弾少年団

【idology訳】ラップモンスターのミックステープ vs SUGAのミックステープ


by 박희아 on 2016/12/04

 

http://idology.kr/8078

 

防弾少年団から3人のメンバーがミックステープを発表した。 そのうち2人のメンバーはなんと10トラックを出した。 いくら既存のビートを活用しているといっても、これは容易でないことだ。 通常空白期間がほとんどなく活動に邁進しなければならないアイドルグループの立場では、アルバム1枚分に匹敵するトラック数を満たすことが楽であるはずがない。 しかもそこにはアイドルなら「むやみに」口にしてはならないとされる下品な言葉もまた、ひっきりなしに登場する。 精製過程をほとんど通さないように見える歴史もそのまま盛り込まれている。 一例として、過去に犯した恥ずべき行動を反省し、これを「黒歴史」と称している姿(ラップモンスターの『RM』の中の『声』)、「お金が一番」と話す世俗的な態度(SUGAの『Agust D』の中の『チリサルサパル(724248)』)のようなものは確かに大衆が普遍的に認識する「アイドリッシュ」とは程遠い。 

 

アイドルの立場でミックステープというツール自体は商業性を裏切った選択だ。 ファンドムがある程度形成されているため、無料配布を前提とするミックステープよりはソロ音源やアルバムを発表する方が得だ。 非商業的という前提の下で許容される「表現の自由」もまた、万が一にもわきまえていないという話題を誘発しかねないという点でむしろ危険要素だ。 それにもかかわらずミックステープという形を取った理由、それも1曲や2曲ではなく10曲ずつ作った理由は何だろうか。 

 

新たな成長リファレンス

 

2つのミックステープの主人公、防弾少年団のラップモンスターとSUGA(ここでは防弾少年団内のふたりを比較しているため、Agust Dの代わりにSUGAという芸名を使用する)の間には共通点がある。 2人ともグループが結成される前からひとりで音楽を作って活動した経験があるメンバーたちということだ。だが、満足すべき成果を出す前にアイドルグループでデビューしたために、それ以来整理されていなかった過去の自我が残っていた。 結局、この2つのミックステープに盛り込まれているのは、アイドルとラッパーというふたつのアイデンティティを行き来する過程で始まった苦悩の跡だ。 デビュー前後に変わった自分の姿を歌うこともあるが、防弾少年団アイデンティティが「ヒップホップアイドル」でありトレンディーな「ポップスター」であり、「アイドルスター」に変わる過程の中で、2人のメンバーが感じた感情が赤裸々に描かれているというのも興味深いところだ。


事実上、これはアイドルというジャンルと正反対に置かれたヒップホップというキーワードが重要に結合され始めた2010年代を説明することでもある。 「ヒップホップ」というジャンルがアイドル市場に登場した新しいレベルの成長リファレンスであることを象徴している。 アイドルを見下していた自分と現在トップクラスのアイドルになっていく過程に置かれた自分を比べて絶えず悩んできたという歴史が、実力的にまた内面的に成長していくというリファレンスとして記録されているところだ。 細工された宝石のように扱われてきたアイドルキャリアが、逆に傷が多いほどプロフェッショナルだという逆説的特殊性を持ったジャンルであるヒップホップと出会って起こった面白い現象である。 

 

オリジナリティ vs リアリティ

 

ラップモンスターとSUGAはそれぞれミックステープ『RM』と『Agust D』を通じて、自分たちが数年間押さえつけてきた音楽的、多少狭く言えばジャンル的欲求を表出している。 そして、2人はこの過程でまったく違う志向を見せてくれる。 ひとりは自分のアイデアル・タイプ(理想の形)を形象化した。 もうひとりはこれまで背負っていた事をすべて掃除するという誓いが伺えるハードコア路線を選んだ。 アイドルという枠の外に出てくる2人のスタイルが全く違う。

 

差異を最も明確に説明できる単語は「オリジナリティ(originality)」と「リアリティ(reality)」だ。 この違いはトラック構成で優先的に明らかになる。 ラップモンスターは計11個のトラックのうち8個のトラックにおいてすでに知られた海外有名ラッパー、DJのビートを活用した。 J.Cole、Drake、J. Dilla、Big K.R.I.T.、Major Lazerなど、お馴染みのミュージシャンたちが彼のミックステープを埋め尽くしている。 これに先立ってラップモンスターは自ら欧米のヒップホップに対する渇望が強いという事実を数回示してきたところである。 したがってこれはある程度予測可能な選択だった。 彼が防弾少年団のアルバムでフロウタイプやディクションを通じて具現しようと努力した本土(アメリカ)趣向が、ミックステープに明確に盛り込まれている。 自ら長い間オリジナリティを踏襲するため地道に練習してきたという点がここから分かるが、まずは韓国語と英語が混用されることから来るぎこちなさが全く感じられない。 トラックとラッピングがばらばらになるような異質感もほとんどない。 『声』のように彼は見慣れた情緒を自分のものにして再生産することができる。 おかげで、単純なラッピングを施されているだけで洗練されたムードが形成される。 『God Rap』ではラッピングにいくつかのサウンド・エフェクトを追加してトラックの空間感を拡張するのに、細心を払った演出が魅力的だ。 


一方、SUGAは自分の活動半径を反映して最大の臨場感を実現しようと努力する。 一種の「リアリティ」を追求しているのだろう。 ラップモンスターが選んだトラックが韓国的な情緒でややぼんやりしているという印象を漂わせているとしたら、SUGAのトラックがグイグイ引きつけるようなスタイルであるのはそのためだ。 防弾少年団のアルバムでも彼は自分が大邱で生まれ、そこで音楽を始めたという点などを何度も歌詞に表している。 生活基盤を自分のアイデンティティと同一視する態度を示して、このようなマインドを立証するようにすべてのトラックで自身を含め韓国内の作曲家やDJなどが作ったソースを使用した。 (例外としてジェームズ・ブラウンの『It's Man's Man's Man's World』をサンプリングした『Intro:DT sugA』があるが、これはいわゆる「ウェヒプ(欧米のヒップホップ)」のオリジナリティを増すために入れたものというよりは、激しい情緒を沸き立たせるためのサウンドソースに近い)過去韓国のラッパーたちが駆使していた粗悪なサウンドと類似した雰囲気を感じるのも、このような特徴と無縁ではないとみられる。 特に最後のトラック『so far away』後半部分を掌握するギター演奏はかなり韓国的なメロディーラインだが、最近のラッパーたちはあまり使用しない方式であり、妙に「泥臭い」ながらも、彼が望んでいる情緒的な終着点が何なのかはっきり描き出す効果を持つという長所がある。
ここにSUGAはゲストミュージシャンとして国内アーティストのYankeeとSuranを選んだ。 一方、ラップモンスターは、米国のラッパー兼シンガーソングライターKrizz Kalikoを連れてきた。 多分正規アルバムであれば「コンセプトの違い」として説明したが、自分の意見が絶対的に反映されたミックステープという点を考慮すれば、これは「志向の違い」と理解できるだろう。 

 

細密なディレクティング vs 爆発的打撃感

 

ラップモンスターのラッピングは感情を細密にディレクティングしているという感じを与えるが、特に目立つ長所は、彼が呼吸やフローを調節する過程でセクシャルな雰囲気を出す必要がある瞬間を直感的に(あるいは意図的であれ)よくキャッチするということだ。 また、ラップモンスターは言語遊戯的要素のある歌詞を楽しみながら、「果てしない冷笑 but imランボオ 地獄ですごすお前の季節」(『覚醒』)のように文学的要素を集めてきたり(アルチュール・ランボオ『地獄の季節』より)「頭をまっすぐに上げて/仏像の笑み/イエスの足/アラーの神の祈り」とかなり感覚的な表現を活用する。 しかし、これによってかえって短所が浮き彫りにされたりもする。 ミックステープ全体にわたってきれいに整頓された感じが強いために、小さな乱れが散見する惜しさがとりわけ大きい。 ミックステープの中盤部で早くなるほど感情が最高潮に高まってゆくが、その際にフロウと発音が同時に動揺する瞬間がしばしばある。 例えば6番トラック『冗談』でラップモンスターの感情はトラックが持つ本来のエネルギーを過度に超過してしまう。 ベースのリズムとビート、発音が一度に葬られる事態が起き、「クイックラッピング(高速ラップ)」だけが浮き彫りにされてメッセージ伝達力は半減する逆効果が発生するのだ。 上記のような短所はトレンディな作品が得られる満足をやや惜しくもさせている。


一方、SUGAは打率に全く気を使わずに気ままに球を打つ打者を連想させる。 トラック自体がすでにあふれるような打撃感を保有しており、ラッピングもまた彼にふさわしいエネルギーを持っている。不安定な心理的スタンスをそのまま表現してもありあまるほどの神経質的なオーラを発散しているが、様々な種類のワーディングと合致して快感を醸し出している。 しかし、スキットを除外すると、最初からから8番トラックまで一貫して逆流して放出するような伝達スタイルをしているという点がやや負担になっている。 強-強-最強というラッピングがトラックの流れによって徐々に深淵に接近するストーリー要素と結合されるが、このような方法では聴覚的、心理的に視聴者をすぐに飽きさせる可能性が高い。 特に7番トラック『最後の(The Last)』が誘発する疲労感はかなりのものだ。 神経外科医との面会の場面を回想するくだり「お医者様が俺に尋ねた/躊躇なく俺は言っていたそんなことがあると」で「そんなこと」を具体的に指摘しない態度が暗示するのは、極度の憂鬱感や神経症だ。 このようにSUGAのミックステープでは既存のアイドルたちが絶対にすることが出来ないレベルの自己告白とともに、自分を酷く暗くさせた周辺部をターゲットにしたハードな表現がかなり頻繁に登場する。 こうしたポイントはヒップホップシーンでは「ミックステープにふさわしいレベル」のラフで魅力的なワーディング程度とみなされかねないものの、ファン達の立場からするとメンバー個人に対する愛情と結合されてその理想の率直なストーリーテリングとして受け入れられる可能性が高いという点が非常に興味深い。 また、身勝手な打者に見られる自信は時によって過度に感じられても、深い内面的な響きを醸し出している。 SUGAのミックステープが備えている最高の長所はこれだ。 

 

やりたいこと vs 言いたいこと

 

2人の温度差が最も克明に現われたトラックとしては、ラップモンスターのミックステープ1番トラック『声』とSUGAのミックステープ5番トラック『チリサルサパル(724148)』を推薦する。 同様に過去を回想しているが、これを表現する方法やムードは全く違う。 自分が持っているラッパーとしての優れた長所とオリジナリティに対する渇望をミックスして出したラップモンスター、そして自分がしたかった話を存分にするために、極強のエネルギーを盛り込んだトラックを自ら作って出したSUGA。 つまり、ラップモンスターがミックステープで「やりたいこと」をしたのならば、シュガーはミックステープを通じて「言いたいこと」を言ったというのに近い。

もしかしたらボーダレスのイメージを浮かべる「非商業的」という用語を、むしろファンドムのためのツールに活用したという点で非常に賢い選択と言えるかもしれない。 ミックステープを通じて見せてくれた「真正性」という領域はお金に換算されることがないような魅力ポイントだが、かえってこれがファンドムを団結させる効果を発生させ、堅固な商業的ツールとして活用できるという話だ。 それにもかかわらず、実質的には商業的利益を発生させることができる他の様々なアイテムが無限な状況で、アイドルとしてのイメージメイキングにマイナスになり得る要素を選んだという点、そしてこれを通じて実際にファンドムの結束を強める効果が発生したということは、ユニークな試みとそれによるプラスの結果と解釈することができる。


欠点はあるものの、汚点はないようだ。ふたつのミックステープについて要約するとこんな感じだ。 2010年代に入り、演技や芸能出演に向かっていたメンバー別ブランディングの方式を音楽的な領域に集約したという点が何よりも印象深い。 これによって2つのミックステープ、合計21曲のトラックが持っている優先的価値がここで訪れる。 パラグラフごとに「VS」という表現を使ったが、事実上これは「+」に近い二つの結果物だ。 

 

※アイドリッシュ→アイドルらしいスタイルという意味かと思います。語源は多分日本のゲーム「アイドリッシュ7」(アイナナ)?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

日本ではオリジナリティ=そのもの自身がオリジナル(起源)で独自性のあるもの・個性という意味に解釈されることが多いですが、文中では元々の英語のoriginalの意味である「根源性」、つまりラップモンスターの曲はヒップホップの起源である欧米のヒップホップにより近づけようとしているという意味でのoriginalityが使われているのではないかと思います。文脈上、日本語で言うところの「オリジナリティ」に近いのはむしろSUGAの方と言うことになるかも。それをヒップホップ的に言うと「リアリティ」ということになるかと。
(韓国語でも外来語としてオリジナリティはそのまま使いますが)
また、「ラップすること」という意味の「ラッピング」は日本語では「ライミング」ということが多くそちらのが分かりやすいかもしれませんが、基本的にはどちらもほぼ同じ意味ですので原文そのままにしました。「包装」という意味での「ラッピング」と紛らわしかったらすみません...

 

個人的にはこのミックステープ、ある種の「事務所からのご褒美」的な側面もあるのかなと思いました。グループがある程度成功し、ペンドムも固まった今だからこそ「やりたい事やってみてもいいよ」という。アイドルとしては過激な歌詞といい、韓国内で既存曲をこれだけサンプリングできるのも基本フリー配布なミックステープならではでしょう。

韓国で音楽で食べていきたい若者たちにとっての「固い」ルートが未だほぼアイドル(オーディション番組やホンデブームも下火になりつつあり...SMTMもやはり3・4がピークだった感が)である現状、特にヒップホップをやりたい子たちはとりあえず1回は事務所に入っとくのがほとんどだと思います。ReddyやIronなど、そこで振るい落とされたり辞めたりしてアンダーのルートに戻るパターンもありますが、そこである程度成功した子たちだけがぶつからざるを得ない壁のひとつが、本来の自分がやりたかった事と実際に自分がやっている事との乖離なのではないでしょうか。特にヒップホップにルーツがある場合はグループが売れていても常に「リアリティ」があるのかどうかを問われる場面には遭遇するでしょうし。ペンドムにとってはどうでもいい事でも、このジャンルに片足が入った活動をする以上は常に国内ヒップホップ界あるいはリスナーからの一種の外圧はあるでしょう。そのプレッシャーに対して個人のミックステープをそれぞれリリースさせるというのは良いガス抜きになる面もあるのかなと思います。ペンドムにとってもより率直な打ち明け話がきけるという点で「うちの子こういうのもできるんですよ(誇らしい)」「ランボオとか読むんだ(わたしもよんでみよう)」「こんな事を考えていたなんて...」等とより一層愛が深まるツールなのではないでしょうか?

(個人的にはアイドルは別に自作なんかできなくても良いと思っていますが、特にファンにとってはアイドル本人が書いた曲や歌詞には特別な力があるとも思っているので、その能力があるならそれもアイドルとして多角的にファンを惹きつける強力なスキルになると思います)

 

 これは単なる感想ですが、SUGAはGloss時代から日付や土地の郵便番号など、数字にこだわったリリックが散見されるあたりがなんというか「リアルな」ラッパーっぽいな〜って思ってました。

 


[Pre-Debut] ZICO & Rap Monster

 

 


518 062 - 낙션 Produced by Gloss(SUGA)