サンダーエイジ

韓国のアイドルとか音楽についての自分が後で読み返ししたい記事のふんわり訳と覚書。

アイドル×ヒップホップ[記事感想]

WINNERと2NE1の件がショックすぎてしばらく何もやる気がおきねーという気分で間が結構空いてしまいましたが、裁判のようにダラダラ続く問題でもなくスパッと決まってしまった上に時の流れは止めようもないしBIGBANGもアルバムを出すということで(もう出てしまいましたが)以前訳した「アイドル×ヒップホップ」シリーズの記事のうちで最後まで訳していなかった対談をリハビリがわりに仕上げてみました。

 

この対談、口語や崩した言い方や固有名詞が多く結構長いので訳すのが大変そうだと感じてすこしづつ訳していたのですが(3年も...)意訳が多めになってると思います。読みにくかったら申し訳ないです。

 

何故ヒップホップアイドルをやるのかに始まり三大事務所におけるラッパーの位置づけや韓国内のヒップホップの歴史とアイドルの歴史を一緒にひもといていったりと、個人的にはかなり面白い内容でした。特にファンブログなどではあまり言及されないJYPやYGのアイドル作りのスタンスを解読してみせてくれたのは新鮮でした。JYPやYGはそういうタイプのファンが少ないのか、それともSMを分析するよりもアイドルに関する知識以上にテクニカルだったり韓国の大衆音楽史全体など広範囲な知識が必要だからなのか、今まで個人的にはほとんど見た事がありませんでした。


ヒップホップ以外でも自作ドルやアイドル音楽のリアリティがファンにもたらす効果、ヒップホップドルが国内ヒップホップミュージシャンを聴く入口になってるという指摘(これは実際日本でもおそらくほぼ同じで、Kヒップホップファンの多くはBIGBANGやブロビ等のKドルやSMTM入りのようですが)など、3年前の対談でありながら今に通じる韓国のアイドルの作られ方について全般的に語られているように思いました。

 

ーーーここから下は対談記事の感想ですーーー

 

「説明できないけどJYP全体にほのかに漂うあの感じ」を「社長しかわからない謎の物質X」と例えたり、「ヒップホップに限らず自作曲はファンに『オッパたちの言葉だ』と思わせるリアリティを強化できる」「GOT7はワンガ中期の感じ」「防弾少年団のリファレンスはHOTやSECHSKIES」「アイドルというのは他の人がしたがるような憧れを体現して見せるものだから、音楽的リソースになる欧米っぽさが強調されるのは仕方がない」などなど膝をうつ至言がいっぱいありました。
特にBIGBANGに関して、「最初からヒップホップのグループを作ろうとした訳ではなく差別化されたグループを作ろうとして、音楽にリアリティを持たせる為に中心メンバーが元々やっていた音楽をやらせたのでは」という指摘はなるほど!!という感じでした。
実は個人的にはBIGBANGのアルバムを聴く程に、確かにラップはアイドルの中では突出しているけど音楽自体はヒップホップでもないよなあとずっと思っていて、それは近年のYGのアルバム全般的にそう思っていたので...部分的に使われているヒップホップテイストの「本物っぽさ」は間違いないと思いますが、実はGDの作る音楽自体にはいろんなジャンルがあるんじゃないかと。でもアーティストとしてベースのジャンルがある人がアイドルをやっているので、どういう曲をやってもヒップホップドルと呼ばれるのかもしれないなと思いました。アイドルだからこそいろんな変身が許されるし要求もされるというか。
(ソロになるともう少しアーティストとしてのエゴが出せるのでしょうが)


まさにWINNERとiKONではこれが顕著に現れていて、iKONは中心メンバーであるB.I.は子供の時からラップをやっていて(インディアンボーイだったあの頃...)Bobbyは意外とギターも弾けたりボーカルも出来つつもやはりベースはヒップホップだし(アメリカ育ちというのもポイントが高い?)メインボーカルがR&B的な歌い方というメンバーのベースにあるヒップホップ+R&BがBIGBANGと同じだからイメージの相似が言われるのでしょう(個人的にはBIGBANGよりもずっとR&B色が強くエレクトロ感はないのでアナログで素朴なイメージですが)一方のWINNERはミノ以外はロックやアコースティックという既存のYGアーティストにはいなかったベースを持ったメンバーでそれが現れている曲が多く、逆に「WINNERは曲がYGっぽくないから(浮いているのでは)」という指摘をされたり。しかしそもそも今のYGぽさ=ヒップホップという訳ではないという基本を考え直すといずれも「YGらしさ」というのに曲のジャンルを引き合いに出すのは的外れな指摘のように感じます。「メンバーのベースにある音楽をやらせる」というのが基本方針だとすると、WINNERに関してもその点ではブレていませんから。
(よく「お前たちの音楽をやりなさい」といわれるというのもそういう事なんだと思います)

 

また、BIGBANGやGDはアイドルなのにアーティストっぽいというイメージを持たれてる方が特にSMオタには多いように感じていましたが、個人的にはGDは自分がアイドルであるという自覚がとても強い人だというイメージがあったので(私もSMオタなのですが)本国のドルオタ以外の人たちが考えているイメージが知られてスッキリしました。
(YGはオタク層以外にもファンが多いので、普通のファンとVIPだとまたイメージが違うかもですが)

 

この記事は2014ですが、その後iKONがデビューし、女性ヒップホップは「UNPRETTY RAPSTAR」という新たなフォーマットを経て女性ラッパーのある意味ではアイドル化が進み、YGはヒップホップではない女性グループを誕生させ、ZICOはメジャーシーンでのトップラッパーの仲間入りを果たし、防弾少年団はまさにアイドルらしい変容を遂げてトップグループのひとつになった代わりに昔からヒップホップをやっていたメンバーはミックステープを出した今こそ、もう一度こういう対談が読んでみたい気もします。今度はやや短めでお願いしたいですが...